「たとえ認知症になっても」みやぎ認知症応援大使 遠藤実さんが語る前向きな日々〈宮城〉
仙台放送NEWS6/16(月)18:13

「たとえ認知症になっても」みやぎ認知症応援大使 遠藤実さんが語る前向きな日々〈宮城〉
宮城県は去年から「みやぎ認知症応援大使」という取り組みを始めました。大使は認知症当事者の4人。その一人は「認知症になっても人生には希望があふれている」と語り、自らの経験をもとに理解を広げる活動に取り組んでいます。
「♪出会いは、億千万の胸騒ぎ〜」
200人ほどの前で、得意のカラオケを披露するのは、栗原市に住む遠藤実さん(64)。認知症当事者の思いや、普段の生活を知ってもらう講習会の一幕です。
遠藤実さん
「校長として随分やってきた中で、もっとやっていこうと思った矢先に、うまく歯車が回らなくなってきた」
長年、小学校の教員を務め、60歳で校長を退職して2カ月後。時計の数字が分からなくなるなどの異変を感じて病院に行ったところ、若年性アルツハイマーと診断されました。遠藤さん自身はもちろん、妻・麻由美さんも大きく戸惑いました。
妻・麻由美さん
「何か言葉をかけると『俺の気持ちなんか分からないクセに!』とか。2人で殻に閉じこもって、どよーんとする日々がだいぶ続いた」
閉塞感のある日々は、認知症をオープンにし地域に出ていくことで打開できたといいます。
妻・麻由美さん
「考えてみたら認知症の診断を受けても受けなくても、夫婦というのは変わらない。できないことも増えていくけど、できなくなったことは話し合いながら、どうしたらいいかなと工夫したり。前向きに進んでいこうかと」
遠藤さんの住む地区で、区長を務める川村幸雄さん。地域包括支援センターなどと連携し「オレンジカフェ」という集まりを開催しています。当事者やその家族などが認知症をオープンにして集まれる場所を作るもので、遠藤さんを招きました。
川村幸雄さん
「私の妻の母が103歳で亡くなったが認知症がすごかった。その時、無知だったので、認知症について理解していれば、介護も違ったかなという思いがあって」
大好きな歌で、盛り上げ役となっている遠藤さん。今年から、ひとりの参加者としてだけでなく、運営側にも回っています。
川村幸雄さん
「認知症の話を私たちがするより、当事者の話はまた違う。今まで通りでいいので、何をするわけでもなく活動してもらえれば」
こうしたオレンジカフェは、全国で地域の実情に合わせた形で開かれています。厚生労働省の推計では、認知症とその「予備軍」は2022年の時点で1000万人を超え、高齢者の約3.6人に1人となっていて、今後も増え続ける見込みです。
誰もが認知症になり得る時代と言えますが、そうした中で政府は「新しい認知症観」というものを提唱しています。認知症になっても「何も分からなくなる、できなくなる」のではなく「分かることやできることがあり、自分らしく暮らしていける」という考え方です。
こうした理解を広げていくため、県は去年から新たな取り組みを始めました。「認知症応援大使」。当事者4人を大使に任命し、認知症を知ってもらう活動に取り組んでもらいます。
遠藤実さん
「たとえ認知症になったとしても、人生には希望が溢れている。その力をくれるのは家族、友達、地域の人々と考えています。大使として多くの人たちに伝え、勇気づけていきたい」
遠藤さんは、体に障がいのある人や認知症の人が通う施設を週に4回、利用しています。配膳作業などはスタッフだけでなく、利用者が協力して行っています。
ころんぶす介護主任 曽根千恵子さん
「皆さんができることを昔と変わらずやっていただいて、自分ができることを見つけて行ってもらっている」
症状が早く進むことも多いとされる、若年性アルツハイマー。遠藤さんは、会話の中で言葉が出づらくなるなどの症状はあるものの、比較的進行はゆるやかだといいます。
ころんぶす介護主任 曽根千恵子さん
「自筆の文章に漢字も入っている。入らなくなるときもあるけど、実さんも自分で考えて実行するというところが、脳の機能の活性化になっているのでは」
この施設で、遠藤さんが自分にできる役割を考え、始めたのが絵本の読み聞かせです。視覚に障がいを持つ人もいる中で、みんなで楽しい時間を共有しようと始めました。
施設利用者
「遠藤さんは、みんなを包んでくれるような優しさがある。この本(読み聞かせ)も好きですけど、遠藤さんそのものがとても大好きです」
遠藤実さん
「もう涙出そうですね」
大使就任から半年。当事者である遠藤さんの活動が、認知症への認識を変える力になっています。
名取市からの参加者
「何かやれること、目標があれば生き生きとできることを痛切に感じた」
登米市からの参加者
「当事者の声が一番生きてくると思う。発信していただいたことを受けて、どう地域に還元するかが大事」
妻・麻由美さん
「家族もつらいこともいっぱいあると思うが、家族がまず前向きになること。そして認知症当事者も診断を受けたから、すべてができなくなるわけではなくて、できることたくさんあるので、できることをいっぱい見つけて、そして一緒にできることをやってほしい」
遠藤さんはこれからも、前向きに生きられることを伝えていきます。
遠藤実さん
「苦しい時も、頑張りましょう!」




