今すぐ私たちができるサステナブルな行動って?
2015年に国連で持続可能な開発目標(SDGs)が採択されてから、昨今ますます注目を浴びているサステナブル(持続可能)への取り組み。企業はもちろん個人レベルでも、環境へ配慮した暮らしなど意識が高まっている人が多いですよね。
でも実は、環境への取り組み以外にもまだまだできることがあるんです!
そこで本シリーズでは、SDGsの大原則である「誰一人取り残さない」サステナブルな暮らしを作る一歩として、誰でもできる簡単なアクションをご紹介していきます。

街中で盲導犬を連れている人や、白い杖を使って歩く人を見たことはありますか? あの杖は『白杖(はくじょう)』と言い、視覚に障がいのある人が周囲の情報を把握するために使用するものです。盲導犬と白杖、どちらも視覚をサポートするものですが、街中では、私たちのサポートや気づかいが必要なシーンがあります。

そこで今回は、今日からできる「サステナビリティアクション」として、パラサポの「あすチャレ!Academy」講師としても活躍し、ご自身も視覚に障がいのある原口淳さんに「視覚障がいの方にとって嬉しいスマートな対応」について伺います。

▼今回の『サステナビリティアクション』
【導入編】視覚障がいの基礎知識を知っておこう!
1.実は見え方は人によって全然違う
2.○○のときの盲導犬は、お仕事モード!
3.声をかけてもらった時の気持ちは…

視覚障がいと言っても、人によって見え方はバラバラ!

視覚障がいにもいろいろな種類があるんです
 ①実は『全盲』の人は少ない
 ②視覚障がいの大半は『弱視』
 ③白杖を使わない人もいる

ライター 原口さんも白杖を使っていらっしゃいますが、白杖ユーザーの方は全盲のイメージだったのですが、実はそんなに多くないって本当ですか?

原口さん 白杖を持っている人の中でも、僕のように光さえ感じない『全盲』の人に出会う確率は結構レアだと思いますね。全盲とされる人は視覚障がいの中でもごく一部。白杖ユーザーの大半は、少し見えているロービジョン、いわゆる『弱視』だと思います。

ライター だから時々、時計やスマホを使っている方もいらっしゃるんですね。

原口さん ひとことで弱視と言っても、まあまあ見える人からほとんど見えない人、光だけは分かる人、視野障がいと視力障がいを重複している人などさまざまです。また、薄暗いと見えない人や光に弱い人は、場所や陽の光が影響する時間によって突然動けなくなったり文字が見えなくなったりすることもあるんですよ。

ライター さっきまで普通に活動していたのに、突然動けなくなったりすると、周囲の人は気づかないこともありそうですね。

原口さん 特に白杖を持っていない場合は、そうかもしれません。

ライター 白杖を使わない方も多いということですか?

原口さん 白杖は誰でも購入することができますし、白杖を持つか持たないかは個人の自由なんですよ。白杖を持っているからといって全盲とは限らないし、持っていない人が全員晴眼者(視覚に障がいがない人)というわけでもありません。

ライター 私たちが気づかないだけで、街中で視覚障がいのある方と意外と多くすれ違っているのかもしれませんね。

原口さん その可能性は高いと思います。見た目だけで視覚障がいの種類や度合いを判断することは難しいですが、まずは、色々な視覚障がいがあるということをわかってもらえるとすごく嬉しいです。

ハーネスをつけているときの盲導犬は、お仕事モード

街中で盲導犬を見かけたら…
 ①犬に触ったり声をかけたりしない
 ②犬に食べものを与えない
 ③盲導犬は「仕事中」ということを理解する

ライター まだまだ数は少ないと思いますが、盲導犬ユーザーの方を時々見かけます。盲導犬と白杖では、視覚障がいのある方にとって、行動にどんな差が出るものでしょうか。

原口さん 白杖で把握できるのは白杖が触れる範囲だけですが、盲導犬はもう少し広い範囲で情報を伝えてくれます。例えば、行く先に障がい物があるとします。白杖ユーザーの場合、白杖が障がい物に触れてはじめて避けるという行動を取るのに対し、盲導犬の場合はもっと前に危険を察知して避けることができる。そういった意味でも、盲導犬がいるだけで動きに無駄がなくなるので、白杖を使っているときとはスピード感がまるで違います。僕も、これまで諦めるしかなかった電車のタイミングにも余裕で間に合うようになりましたし(笑)。

ライター 原口さんも盲導犬と一緒に生活したことがあるんですか?

原口さん 僕も以前2年間ほど盲導犬と一緒に生活していたのですが、仕事であちこち移動することが多かったので協会へ返しました。犬にとっては、決まったルーティンの生活がベターなので、毎日行く場所が変わるとなると、それがどんなに犬にとってストレスか、動物が好きだからこそ無理をさせたくないと思ったので。

ライター 原口さん、講演やセミナーでいろいろな場所に行きますからね。盲導犬と一緒にいた2年間で何か困ったことはありましたか?

原口さん 動物はダメだと入店を拒否されることはありましたね。誰かと一緒に出かけた先で断られたらいやなので、事前に店へ盲導犬を連れていくことを連絡したりして、すごく気を使いました。

ライター 盲導犬なのに入店できないんですか?

原口さん はい。公共の施設や乗り物では盲導犬や介助犬など補助犬の同伴を拒否してはいけないと「身体障害者補助犬法」で定められているのですが、その法律の存在を知らないお店の方が意外と多くて……。

ライター まだまだ、盲導犬について理解が広がっていないのかもしれませんね。街中でも盲導犬に触ったり声をかけたりする人がいるようですし。

原口さん 盲導犬がハーネスをつけているときは仕事をしているときなので、たとえ休んでいるように見えても、それは「待つ」という仕事の最中です。人間でも、仕事に集中しているときに声をかけられたり触られたりするのはいやですよね。多分、犬も同じだと思うんですよ。

ライター 可愛がっているつもりで盲導犬に触ったりしても、結局は仕事の邪魔になってしまうということですね。

原口さん 最も避けたいのは、食べものを与えられることです。ユーザーは犬の負担にならないよう、食事の時間や量だけでなくトイレの時間も細かく管理しています。でも、変なタイミングで食べてしまうとトイレを我慢させることになりますし、最悪の場合、お腹を壊したり体調を崩したりすることも考えられます。なので、許可なく食べものを与えることだけは絶対にやめてください。

ライター 盲導犬はトイレに行きたいとアピールしないんですか?

原口さん 基本的に、オーナーから指示があるまで我慢します。だからこそ僕らは、我慢せずちょうどいいタイミングで用を足せるように、犬の動きを把握して管理しないといけないんですよ。

ライター トイレの細かいタイミングまで管理されているとは知りませんでした。盲導犬とユーザーはお互いの安全を守りながら暮らしているということが、もっともっと理解されるといいですね。

声かけはかしこまらず、カジュアルでOK

声をかけられたときの気持ち(原口さんの場合)・・・
 ①素直に嬉しい!
 ②慣れている場所では断ることもあるけど、感謝している
 ③次もまた声をかけてほしい

ライター 先ほど、視覚障がいの程度は見た目で判断できないとおっしゃっていましたが、街中で見かけたときに困っているのかどうかわからず、声をかけるか迷うことがあります。そんなときはどうしたらいいでしょうか。

原口さん 難しく考えずに「何かお手伝いできることはありますか?」と声をかけてみるといいと思います。いきなり手を引っ張ったりするとびっくりするので、まずは声をかけてください。もちろん、赤信号に気づかずに道を渡ろうとしているとか本当に危険な状況のときは、命が優先なのですぐに手を引っ張っていただきたいですが。

ライター 声をかけたらありがた迷惑になるんじゃないか、と躊躇してしまうことがあるのですが、原口さんは実際のところ、声をかけられたときにどう感じていますか?

原口さん 僕は慣れている場所も多いので、断ることが多いんですけど、気にかけてもらえることは素直に嬉しいですね。見ず知らずの人に声をかけるのって、すごく勇気がいることじゃないですか。ましてや、手を貸すなんて簡単にできることではないですよね。だから、声をかけてくれたことに対して、感謝とリスペクトは忘れちゃいけないといつも思っています。

ライター あ、確かに知らない人に声をかけるのって普通に勇気がいりますね。

原口さん そうなんですよ。本当は、障がいがあるから声をかけにくいんじゃなくて、知らない人なら誰でも声をかけにくいんですよ。かしこまった感じじゃなくて「迷っているんだったら一緒に行きましょうか」という具合に、カジュアルに話しかけていただいて構わないですよ。

ライター もしサポートを断られても、気にすることはないんですよね。

原口さん 全然気にしなくて大丈夫です。むしろ、断られたことで『困っている人がいたら力になりたい』という気持ちを失って欲しくない、というのが本心。次に困っている人を見かけたときもぜひ声をかけてもらいたいので、僕はただ「大丈夫です」と断るのではなく、「慣れている場所なのでひとりでも大丈夫です」と理由を伝えた上でしっかりとお礼を言うようにしています。

ライター 原口さんは、街でどれくらい声をかけられますか?

原口さん これまでは大阪と東京なら、声をかけてくれるのは圧倒的に大阪が多かったんですよ。大阪の人って人懐っこくて世話焼きだから、ちょっと咳をしただけでおばちゃんが飴をくれたりするような文化じゃないですか。僕はそんな環境で育ったから、東京は誰も声をかけくれなくて最初は「おっそろしいとこやな」と思ったんです(笑)。でも、ここ数年は大阪に負けないくらい東京でも声をかけられるようになりましたね。1時間、東京駅をうろうろしていたら10人とか。

ライター それは結構な頻度ですね。でも、なぜ急に声をかけられるようになったんだろう。

原口さん 東京オリンピック・パラリンピックの開催決定後、多くのイベントが開催されたりメディアで取り上げられたりして、ダイバーシティやインクルージョンについて学ぶ機会が増えたことも影響しているような気がします。こうして、みなさんの意識が変わってきている時こそ、僕たち自身も何ができるのかを考えていかないといけないなぁ、と。東京オリンピック・パラリンピックは、健常者と障がい者の意識を変える、本当にいいきっかけになると思いますね。

視覚障がいの程度や見え方はさまざま。環境によって見えづらくなる人や白杖などの補助具を使わずに生活している人がいることは、あまり知られていないのかもしれません。今回、原口さんにお話を伺って、見た目だけでは判断しづらい障がいだからこそ、周囲の理解と協力が必要だと感じました。

次回は【実践編】として、より具体的なサポート方法を原口さんにお伺いしていきます。

※この記事の続編は近日公開予定です。

text by Uiko Kurihara(Parasapo Lab)
illustration by KOH BODY

<アクションシリーズ>記事はこちら↓
■車いすユーザー編
【導入編】
https://www.parasapo.tokyo/topics/28798
【実践編】
https://www.parasapo.tokyo/topics/28895
【心がけ編】
https://www.parasapo.tokyo/topics/28916