健康のために運動を習慣づけたいのだけど続かない……。三日坊主に終わってしまう……。そんな人は少なくない。さらに、決めたことを続けられない自分は、だめな人間なのではないかと考えるようになったら、それは人生の大きな問題になってしまう。しかし、習慣化コンサルタントの古川武士氏は、続かないのは「自分に合った習慣化のやりかたを追求していないから」だと語る。どうしたら自分に合った習慣づけの方法を知ることができるのか、古川氏にうかがった。

夏休みの宿題への取り組み方で分かる性格パターン

習慣化コンサルタントの古川武士氏

オリジナルの習慣化メソッドを開発して、12年間で5万人のビジネスパーソン、個別のコーチングでは1000人以上の人の習慣化にかかわってきた古川武士氏自身、最初からきちんとものごとを習慣づけることが得意とは言えなかったという。

「習慣化というと、朝4時ぐらいに起きて水浴びをして、瞑想して、片付けて、日の入りとともに寝て……と、それをやれてなきゃいけないんじゃないかと考えていた時期もありました。たしかに毎日そのように過ごせる人はすごいんですが、でも、果たしてそれが正解と言えるのでしょうか? 僕は何よりもまず自分の生活や人生の質、クオリティー・オブ・ライフを高めることが習慣化の一番の目的だと思うので、人によって正解は違うなと考えたんです」(古川氏。以下同)

熱しやすく冷めやすいところのある古川氏は、同じことを続けるのはマンネリに感じて苦手だったが、企画を立てて爆発的に力を発揮したり、〆切直前で鬼のように頑張れるという自分のタイプは自覚していたのだそうだ。

「人の行動というのは、パターンなんです。たとえば、熱しやすい人は新しいことをやっていくのが得意なパターンで生きている。つまり、習慣化は、まず自分はどんなパターンで生きるのかを考えることが大事になります。何ごとも長続きしないという人は、自分の行動や動機のメカニズム、パターンを知らないで闇雲に習慣化を試しては挫折して…の繰り返しになってしまっていると言えます」

このように「習慣化を成功させるためには、性格タイプを前提にする必要がある」という気づきのきっかけは、社内での何気ない雑談。「夏休みの宿題はどのように終わらせていたか」が話題になった時だという。

【Aさんの場合】
・最初の1週間で終わらせて、残りの期間は気持ちよく遊ぶ
・早く終わらせて楽になりたい、やるべきことを片づけないと楽しく遊べない

【Bさんの場合】
・ギリギリ最後の1週間で追いつめられて、一気に終わらせる
・ゲームや友だちとの遊びなどを先に楽しんで、後半に追い込まれながら物事を進める

【Cさんの場合】
・最初に計画を立て、1日の勉強量を決めて、計画通りにコツコツ進める
・とくに苦もなく、やるべきことを淡々とこなせる

【Dさんの場合】
・一応計画をしてコツコツ始めようとするが、気分にムラがあり「やりたくない!」「気分が乗らない」と計画がズルズルと遅れて、先延ばしが増えていく
・最後の最後で、想定以上に積み上がった宿題を終わらせる為にバタバタする

この4人のパターンを見て、自分はこのタイプだ! とピンとくる方は多いのではないだろうか。これが今回ご紹介する習慣化を成功させるために知っておきたい4つの性格タイプだ。

性格タイプを知ることで長所を活かし、課題を克服できる

古川氏は、4つの性格タイプを知るにあたって、有名なイソップ寓話「うさぎとかめ」「アリとキリギリス」に登場するうさぎ、かめ、アリ、キリギリスの4つのキャラクターに結びつけた。行動傾向を「うさぎとかめ」、動機を「アリとキリギリス」で分けたのだ。

うさぎ:「一気に短期集中」行動
かめ:「コツコツ分散」行動
アリ:「大変なことを優先」思考
キリギリス:「楽しみ優先」思考

この4つのキャラクターを組み合わせると、宿題を前にしたときの以下の4つのパターンが浮かび上がる。

うさアリ:最初の1週間で終わらせて心配事をなくす
うさギリス:最後の1週間で追い詰められて一気に終わらせる
かめアリ:序盤に前倒しで計画しつつも、コツコツ分散してこなす
かめギリス:計画を立てても思い通りに進まず後半に追い込まれながらこなす

これが古川氏が開発した自分の性格を知る「童話マトリックス」だ(氏の著書『性格4タイプ別習慣術』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)には、自分はどのタイプかを診断できる20の質問が記されているので興味のある方は読んでみてほしい)。古川氏が主宰する習慣化のコミュニティで1200名を対象にこのマトリックスの検証を行ったところ、

・自分の性格タイプを理解して、ようやく習慣化ができるようになった
・他人と比較せず、自分らしく続ける方法が見つかった
・無意識に抱いていた劣等感が和らぎ、自分らしく生きられるようになった

など、多くの好意的な感想が寄せられたのだそう。

たとえば、冒頭にも述べたように、熱しやすく冷めやすい人、なにごとも三日坊主になりがちな人も、自分が悪いと責める必要はない。性格タイプの特性だと思えば「自分の長所を活かして、課題を克服すれば良いだけ」だと考えられるようになる。自分にあった形で運動を習慣づけることによって、健康が促進され、自己肯定感も向上しクオリティー・オブ・ライフも高くなる。いいことずくめではないだろうか。

タイプ別 運動の挫折パターンと習慣化のコツを伝授!

ここからは、簡単に4タイプの挫折パターンと、運動を習慣化するためのコツについて見てみよう。

【うさアリタイプの挫折パターン】
・コツコツ行動で低空飛行だと、達成感・手応えがなく、やる気が上がらない
・完璧主義(0か100か)で考えると「ちゃんとできないから」とやめてしまう

【うさアリタイプの習慣化のコツ】
運動に明確な目的が必要。集中して限られた時間で行われるモノだとメリハリがついていい。「マラソン大会」などの予定を入れて、中期ゴールや目標タイムなどを明確にすると良い刺激になる。

【うさギリスタイプの挫折パターン】
・勢いに任せてロケットスタートするが、すぐに失速して行動が続かない
・ガチガチに計画したり、ルーティン・ルール化しすぎたりすると不自由で嫌になる

【うさギリスタイプの習慣化のコツ】
「アメとムチ」、つまり初期は強制力というムチを発動させ、終わった後の爽快感というアメで継続する。大会に出てみるとか、体型の変化を数値化するなどやる気が出るよう成果が見えるようにする。ながら運動や、ウェアをおしゃれにするなど、楽しくする工夫を。

【かめアリタイプの挫折パターン】
・十分な準備がないと始められない
・突発的なことに振り回されて、やろうとしたことができなくなる

【かめアリタイプの習慣化のコツ】
週に1回から始めて、半年後に週2回とするなど、「ベビーステップ」で始める。マメにコツコツやるのが得意なので、記録をつけるなど習慣の見える化をする。

【かめギリスタイプの挫折パターン】
・意気揚々と計画を立てるものの、気分にムラがあって計画通りに進められない
・楽しさが感じられないと、つらさ、めんどうさのほうが勝る

【かめギリスタイプの習慣化のコツ】
あまり激しすぎるものではなく、「好き」「楽しい」と思える軽めの運動から始めて、徐々に習慣として育て、ハードルを少しずつ上げていくといい。

ここでは、主に運動の習慣化について、性格別にどのようにアプローチしたらいいかを紹介したが、実は自分を磨く「自己実現の習慣」にも役立てることができる。

「たとえば、うさギリスタイプには、思いついてやってはみるけれどすぐに止めて、また新しいことを始めては止めて……というパターンを変え、安定性が欲しいと思う人がいます。うさアリタイプは、自分を追い込んでバタバタと取り組みがちでさすがにキツイので、そのしんどさを何とかしたいと。かめギリスタイプは後半に追い込まれがちなパターンを変えたいというのが人生のテーマであるケースが多いですね。そしてかめアリタイプは、余計なことをたくさん抱え込みがちなので、必要のないものは捨てるという課題があります。このように俯瞰して見ると、タイプによって始めることが重要な人もいれば、止めることが大事な人もいる。自分のパターンを知ることは、強みを伸ばして弱みを克服することに繋がります。ただ運動の習慣化だけではなく、クオリティー・オブ・ライフの向上に是非参考にしてもらいたいと思います」

よりよい人間関係の構築は自分、そして相手を知ることから

ちなみに、古川氏はうさアリタイプ。息子さんを見ていると、アリにも見えるし、キリギリスにも見えることがあるのだそう。そのように、親としては観察することが重要で、自分とは違うタイプなのだという前提のもと接するように心掛けているのだという。これはすべての人間関係に通じる。スポーツに関して言えば、指導者が選手に向き合う際、その選手はどのタイプであるかを知ることによって、より効果的な指導ができるだろう。そのほかにも親子の関係、また職場での上司や同僚との関係など、よりよい関係の構築のために応用できそうだ。4つの性格パターンの間にあるのは「差」ではなく「違い」だ。どのタイプが優れているという話ではない。ただ「習慣化」のためのマトリックスととらえるのではなく、その下にある深い意味を読み取りたいと思う。

習慣化に関する著書を最初に上梓したのは11年前だったそうだ。1冊出せば終わりと思っていたところ、突き詰めれば突き詰めるほどテーマは広がっていったという。「習慣化」には、自分の人生をどうしたいのかという人の思い、感情、本質などさまざまなテーマが横たわっている。次は、その人を作り出す環境について、学校教育なども含めて考えていきたいと語ってくれた。古川氏の探求はまだまだ続きそうだ。

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PROFILE 古川武士
習慣化コンサルティング株式会社代表取締役。
関西大学卒業後、日立製作所などを経て2006年に独立。5万人のビジネスパーソンの育成と1000人以上の個人コンサルティングの現場から「習慣化」が最も重要なテーマと考え、日本で唯一の習慣化をテーマにしたコンサルティング会社を設立。オリジナルの習慣化理論・技術をもとに、個人向けの習慣化講座、企業向けの行動変容・習慣化研修を行っている。著書は22冊100万部を超え、中国・韓国・台湾・ベトナム・タイでも広く翻訳されている。主な著書に、『30日で人生を変える「続ける」習慣』『新しい自分に生まれ変わる「やめる」習慣』(以上、日本実業出版社)、『性格4タイプ別習慣術』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)などがある。

text by Sadaie Reiko(Parasapo Lab)
photo by Shutterstock