11月26日、27日の2日間、日本ゴールボール選手権大会が3年ぶりに開催された。会場の新宿スポーツセンターには、選手のサポーターやスポンサー企業などが訪れ、ようやく戻ってきた有観客の大会を楽しもうと交流する姿もあった。

【女子】「古巣に成長した姿を」移籍組が躍動

そんな中で注目を集めたのは優勝候補<チーム附属>の萩原紀佳。東京2020パラリンピックにチーム最年少20歳で出場した、身長168㎝の大型ウイングプレーヤーだ。2018年、2019年大会で優勝している<国リハLadiesチームむさしずく>を離れ、筑波大学附属視覚特別支援学校の卒業生を中心に構成する<チーム附属>に移籍した。

「自分の役割であるオフェンス面で、チームの優勝に貢献したかった」と話す萩原は、大会を通して得点を重ね、チームの決勝進出に貢献。決勝でも、スピードのあるグラウンダーと威力のあるバウンドボールを使い分けて攻撃の柱になり<チーム附属>を5年ぶりの優勝に導いた。

ウイングとしての自分の力を確認したくて移籍したという萩原。大会MVPの活躍を見せた

決勝の相手<みなでしこ>は、日本代表キャプテンの天摩由貴らベテランの多いチーム。その<みなでしこ>に対し、決勝のスコア7対0で快勝した<チーム附属>も、負けず劣らず選手層が厚い。12月に行われる世界選手権代表のウイング安室早姫に加え、東京パラリンピックにボートで出場し、1年前に競技転向した木村由も加わり、コロナ禍で中止となった昨年から優勝を見据えていたという。

ボートから転向した新戦力の木村はバウンドボールが得意。「パワーは活かせると思うが、まずは守備をがんばりたい」

初戦で勝利するも3失点したところから「音を聞くタイミング」を修正した、センターの神谷歩未も、準決勝、決勝と無失点に抑え、自身初の優勝を喜び、とびきりの笑顔を見せていた。

チーム附属の守りの要、神谷。全勝優勝の影の立役者になった

優勝は逃したが、九州と東京のメンバーで構成される<みなでしこ>も存在感を示した。決勝は、アクシデントで控えに回ったベテラン小宮正江を欠いた状態で戦ったが、シフトチェンジやタイムアウトを効果的に使い、終盤は得点を許さなかった。

今年<チーム附属>から移籍した天摩も、準決勝のエクストラスローで値千金のゴールを決めるなど、大会を通してチームに貢献。「このチームは、『今のよかったよ』とお互いのいいところを口にし、それによって士気が高まる」と話しており、環境を変えることで「行き詰っている」という自身の攻撃面の現状を打開したい考えだ。

「自分たちのできることを、楽しくやり切る」という<みなでしこ>のコンセプト通り、すがすがしい戦いぶりだった。

前日本代表キャプテン浦田理恵(左)と同じチームで戦い「成長した私を見せたい」と意気込んでいた現日本代表キャプテンの天摩(右)

女子は予選大会に出場した全5チームが参戦。うち4チームに日本代表選手が分かれており、リンク戦方式でそれぞれのプライドをかけた熱い戦いが繰り広げられた。最終順位は日本代表センターの高橋利恵子がいる<Merveilles>が3位に入った。初出場の選手が多くいる「Flower」は最下位になるも、はつらつとしたプレーを見せた。

【男子】攻撃力を誇る、新チームが席巻

男子は全国11チームの中から7月の予選会(日本代表の遠征と日程が重なったため、代表選手は不在)を勝ち抜いた6チームが出場。6チームを2プールに分けて行われた本大会の初日は、各プール上位2チームが翌日の準決勝、決勝進出をかけて戦った。本戦初出場の<博多MEN隊>は「緊張感のある中、初出場の喜びを感じながら戦った」。

男子MVPを獲得した辻村は、回転投げで得点を量産した

女子決勝の30分後に始まった男子決勝。<チーム附属B>が女子とのアベック優勝を目指したが、そこには髄一の攻撃力を誇る<Spread Wings>が立ちはだかった。

予選大会プールA・1位の<チーム附属B>(=写真)とプールB・1位の<Spread Wings>が順当に勝ち上がり、決勝で激突した

男子は、2019年の前回大会まで、元日本代表の辻村真貴、日本代表ウイングの金子和也を擁す<Amaryllis>が3連覇していた。だが、<Amaryllis>は今年、解散。辻村は、今大会通算22得点と活躍した攻撃型の伊藤雅敏らとともに、新たなチーム<Spread Wings>で今大会を戦い、決勝まで勝ち上がった。

初日の対戦では7-6で<Spread Wings>が僅差の勝利。<チーム附属B>の守備の要、川嶋悠太は「途中いい流れだったが、ここぞというところで失点した。(次戦に向けて)自分たちのミスを修正したい」と誓っていた。

今大会の得点王、伊藤は課題だった守備面も強化。「落ち着いてカバーリングできた」

しかし、決勝は、伊藤と辻村の得点力が爆発。前半で<Spread Wings>が7対0とリードする一方的な展開になった。<チーム附属B>は伸び盛りのレフト、行弘敬祐のクロスで3点を返したものの、時すでに遅しだった。4対11でタイムアップのブザーが鳴り、<Spread Wings>のセンター、曽我晋平が人差し指を突き上げて優勝の喜びを表現すると、その隣で辻村が泣き崩れた。

辻村は理由を語る。

「勝つことが目標だったし、チームのことで迷惑をかけてきたいろんな人に、素晴らしい舞台でいい姿を見せられてよかったという思いでした」

攻撃中心のスタイルを貫くSpread Wings>。彼らを止める難しさを相手チームの川嶋はこう説明する。

「グラウンダーのスピード、バウンドの高さなど、一球一球、微妙に異なるボールを投げてくる。うまくタイミングを外して投げてくるので、守っていても難しいんです」

声でもチームを盛り上げたセンターの曽我

彼らとの対戦は一番楽しくて、成長できると川嶋。次回の日本選手権で、<Spread Wings>を越えるチームは現れるのか。今から楽しみだ。

男子日本代表キャプテンでもある川嶋。予選会は不在だったため「今年は今回が最初で最後」と気合いを入れて臨んでいた

text by Asuka Senaga
photo by X-1