NHKは、5月30日から開催予定の先端技術公開イベント「技研公開2024」の実施に先立ち、グラスなしで3次元映像を楽しめるホログラフィー撮影技術において、高い画質が得られるインコヒーレントデジタルホログラフィー撮影装置の開発に成功したことを発表した。

デジタルホログラフィーは、光の干渉を利用して被写体の3次元情報を忠実に撮影・表示できる技術。その撮影においては、照明光としてレーザーを用いることが一般的とされており、撮影場所や被写体に制限があると説明する。

対するインコヒーレントデジタルホログラフィーは、光の波長、進む方向やタイミングがまばらで、波どうしの干渉性が低い自然光やLED照明光などを用いて、場所の制約と被写体を選ばずに撮影が可能で、目に損傷を与えるおそれがあるレーザーを用いずに人物の撮影にも対応するとのことだ。

技研の従来のインコヒーレントデジタルホログラフィー撮影装置は、反射型と呼ばれる光学素子を利用し、光の干渉縞を生成した上で撮影を実施。なお、この装置では強い照明光を当てないと明瞭な干渉縞が得られず、画質の向上を見込めないといった課題を抱えていた。

今回新たに液晶分子の向きを制御し、レンズのように光を集めることができる透過型の光学素子「液晶レンズ」を採用した撮影装置を開発。これにより、従来比でカメラに届く光量を4倍に増やすことに成功し、明瞭な干渉縞を得ることで、画質の改善とより大きな被写体の撮影を実現したという。

さらに、新たな撮影装置により、撮影後であっても手前と奥に設置したそれぞれの被写体に自由に焦点を合わせた画像を出力でき、高画質な3次元情報の取得を実現。研究の一部はシチズン時計株式会社と共同で進められており、「技研公開2024」では技術展示も行われる。

本件についてNHKは「今後も、高精細な3次元情報を取得できる撮影技術の早期実用化に向け、研究開発を加速していきます」とはコメントしている。