楽天モバイルが新料金プラン「Rakuten最強プラン」を発表したことで、他社の料金プランにも動きが出てきたようだ。早速動きを見せたのが、その楽天モバイルにネットワークを貸しているKDDIのサブブランド「UQ mobile」である。

■UQ mobileが料金プランをリニューアル

UQ mobileは、先日5月22日に料金プランのリニューアルを発表、従来提供してきた「くりこしプラン+5G」に代わる新たなプランとして、「コミコミプラン」「トクトクプラン」「ミニミニプラン」の3つを、6月1日より提供することを明らかにしているのだが、その内容は従来のUQ mobileの料金プランのあり方を大きく変えたものとなっている。

くりこしプラン+5Gなど、従来のUQ mobileの料金プランは、仕組みは同じでデータ通信量に応じて「S」「M」「L」という3つのプランに分かれていた。だが今回の新プランは、3つのプランが独立した特徴を持っており、容量以外にも多くの違いが備わっているのだ。

具体的に説明すると、コミコミプランは従来プランの「L」に相当するプランといえ、月額3,278円で20GBのデータ通信量と、10分間の音声通話定額がセットになっている。余ったデータ通信量を、翌月に繰り越せる仕組みなどは従来プランと共通しているが、指定の電力サービスや固定ブロードバンドサービスを契約すると適用される「自宅セット割」などの割引は一切存在せず、誰がどのようなかたちで契約しても、月額料金は3,278円となる。

一方のトクトクプランは、従来プランの「M」に相当するもので、月額3,465円でデータ通信量は15GB、通話は従量制となる。ただし、auの「使い放題MAX」のように、データ通信をあまり使わなかった時に割り引く仕組みが備わっており、月当たりの通信量が1GB以下であれば月額2,277円で済むという。

そしてミニミニプランは、従来プランの「S」に相当し、月額2,365円でデータ通信量は4GB。通話は従量制だが、「くりこしプランS+5G」と比べると通信量が1GB増量されているのがポイントとなる。ただしトクトクプランのように通信量が少ない時に料金を割り引く仕組みは存在しない。

容量が大きいコミコミプランよりも、トクトクプランの方が月額料金が高く、ミニミニプランもくりこしプランS+5Gより高くなっているのは気になるが、トクトクプラン・ミニミニプランは共に各種割引サービスの適用が可能。その割引も、「自宅セット割」(月額1,100円引き)に加え、新たに「au PAYカード」で料金を支払うと適用される「au PAYカードお支払い割」(月額187円引き)、そして「家族セット割」(月額550円引き)が追加されている。

これらすべてを適用した場合、トクトクプランは月額2,178円(通信量1GB以下の場合月額990円)、ミニミニプランの場合月額1,078円となる。そうしたことから、トクトクプラン・ミニミニプラン、割引の適用をある程度前提に料金設計がなされているようだが、やはりプランによって割引があったりなかったりするなど、従来のプランと比べると複雑さが増している印象は否めない。

その理由について、KDDIのパーソナル事業本部 パーソナル企画統括本部 副統括本部長の長谷川渡氏は、データ通信の利用が増えていることが背景にあると説明している。5Gのネットワークが広まったのに加え、コロナ禍明けが見え外出の機会が増えていること、そして動画など大容量通信を必要とするサービスの利用が増えており、携帯各社も最近はより大容量プランへの乗り換えが進む傾向にある。

長谷川氏によると、UQ mobileでもデータ通信量が3年間で1.8倍に増加している一方、通信量が少なくていいという人は逆に減少傾向にあるとのこと。それゆえ、今後データ通信量が多いサービスの利用が増えることが考えられ、UQ mobileがカバーしている小・中容量の領域でいうならば、データ通信が使い放題で安価な楽天モバイルのRakuten最強プランや、月額2,970円で20GBの通信量が利用できるNTTドコモの「ahamo」などが存在感を高めてくると、長谷川氏は見ているようだ。

それゆえ、従来のUQ mobileの強みである店舗でのサポートなどはそのままに、Rakuten最強プランやahamoに対抗できるプランとして、コミコミプランを投入するに至ったと長谷川氏は話している。コミコミプランだけあえて音声通話定額を取り入れたり、割引の仕組みをなくしたりしているというのも、ahamoなどを強く意識したものといえるだろう。

UQ mobileはこれまで、同じサブブランドであるソフトバンクの「ワイモバイル」に対抗することに重点を置いてきた経緯があり、従来のS・M・Lの3プラン仕様もワイモバイルを強く意識したものであった。それを今回の新プランで大きく変え、コミコミプランによって楽天モバイルやahamoなどにも対抗軸を広げるというのが、新料金プランに込められた狙いと見ることができそうだ。

もっともKDDIは、オンライン専用プラン「povo」を「2.0」でプリペイド方式に近い内容へと大幅にリニューアルしており、こちらはこちらで他にない唯一無二のサービスとして好評を得てしまっている。それゆえ、ソフトバンクの「LINEMO」のように、povoをahamoなどに対抗するブランドにはできず中容量帯をカバーするプランが不足していたことから、UQ mobileを活用してそれを埋めるに至ったというのが正直なところではないだろうか。

それだけに、スマートフォンの料金に詳しくない人からしてみれば、新料金プランが全体的に複雑で分かりづらい内容となってしまっており、ワイモバイル対抗という視点で見ればマイナスに見えてしまう印象を受ける。とりわけUQ mobileは、実店舗があることを武器として、スマートフォンに詳しくないユーザーを多く獲得しているだけに、分かりづらさが仇となる可能性があることがやや気がかりだ。