アップルの世界開発者会議WWDCでは、Mac用「デス・ストランディング ディレクターズカット」が発表されるなど、Mac向けゲームの充実に注力する方針が打ち出されていた。その一環として提供される開発者向けツール「Game Porting Toolkit」を使うことで、すぐに最先端のWindowsゲームがMac上で動かせたとの報告が相次いでいる。

このGame Porting ToolKitは、AppleシリコンMacへのWindowsゲーム移植を支援するツールだ。アップルの説明によれば「既存の、修正されていないWindowsゲームを実行するためのエミュレーション環境」を提供するとのこと。

要はWindowsアプリの実行ファイルを移植作業なしに、すぐさまAppleシリコンMac上で実行できるというわけだ。ちょうどLinux OSベースのSteam Deck上でWindows用ゲームを実行可能にする互換レイヤーProtonに似た位置づけである。

これにより開発者は、直ちにWindows用ゲームをMac上で動かして評価でき、移植する上での問題点を洗い出せる。AppleのテクニカルプロジェクトマネージャーAiswariya Sreenivassan氏は「ゲームのルックやサウンド、プレイを評価するのに何か月もかかることはない」「ゲームのポテンシャルがすぐに分かる」と述べている。

そしてGame Porting ToolKitの中核をなすのは、CodeWeavers社が提供するCrossOverのオープンソースコードだ。これは同社の公式ブログで言及されているもので、アップルに「macOS上でWindowsゲームを実行するための素晴らしいソリューション」として認められたことに歓迎の意が表明されている。

特筆すべきは、最新のDirect X12までもサポートされていることだ。DirectX 12のAPIコールは、アップルのAPIであるMetalに変換され、入力、オーディオ、ネットワーク、ファイル、その他のシステムコールがmacOSに対応するという。

問題は実際に動くかということだが、それはGame Porting ToolKitが配布されてから数時間後に証明されることになった。すでに複数のユーザーが『Diablo IV』や『Cyberpunk 2077』、『ホグワーツ・レガシー』といった最先端のPCゲームをMac上で動かしているのだ。

もっとも、この環境でどこまでWindowsゲームが正常に動くかは未知数である。ほとんどのゲームはMacに最適化されていないため、やはりパフォーマンスが低下したりバグが発生する可能性もある。

実際、本家CodeWeaversのDirect X 12対応も著しく進展しながらも「Diablo II Resurrectedを動かすためには、MoltenVKとSPIRV-Crossに関わる多数のバグを修正する必要があった。他のDirectX 12対応ゲームも同様で、タイトルごとにサポートを追加する必要があり、各ゲームで複数のバグが発生することが予想される」と述べている。

それでも、Macに莫大な数のWindowsゲームがなだれ込んでくる突破口は開かれたことになる。「デス・ストランディング」の後にも、数々のAAAタイトルがMacに向けて進撃を始めるのかもしれない。

Source: The Verge