先日Metaは次期MR/VRヘッドセット「Quest 3」を発表したが、実際の発売は今年秋(9月27日開催の「Meta Connect」以降)である。あえて数か月先の新製品を予告したのは、アップル初のヘッドセット「Apple Vision Pro」の機先を制するためと見られている。

そんななか、同社のマーク・ザッカーバーグCEOが社内ミーティングでApple Vision Proの発表に触れ、「コンピューティングの未来のビジョンになるかもしれないが、私が欲しいものではないようだ」と述べたことが報じられている。

The Vergeが見たという全社会議では、ザッカーバーグ氏はアップルのヘッドセットは自社が「まだ探求していない」技術の大きなブレークスルーを提示しておらず、人々がデバイスを使うビジョンも「私が望むものではない」と語ったという。またVision Proの3,499ドルに対し、Quest 3が499ドルと大幅に安く設定することで、より多くのユーザー層にアプローチできる口火を切ったと主張したそうだ。

さらにアップルの発表を「両社の価値観やビジョンの違いを如実に示したと思う」と語ったとのこと。その違いとは、Metaは「人々が新たな方法で交流し、より身近に感じる」ものや「活動的であること、何かをすること」をめざす。対してアップルのデモは全て「独りでソファに座っている人」だった。それはコンピューティングの未来のビジョンを示してはいるが、Metaの追求するソーシャル的な方向性とは違うというわけだ。

ことさらにザッカーバーグ氏がVision Proという非庶民向けデバイス、要は高価格機と低価格のQuest 3を対比するのは、ハイエンドや一般的なコンシューマー市場への浸透に苦戦していることが背景にありそうだ。Metaは低価格に抑えたQuest 2によってVRゲームやフィットネス市場で一定の成功を収めたものの、ユーザー層が急速に広がっているとは言い難い。そして高級ヘッドセットQuest Proの投入も「大失敗」と報じられ、大幅値下げを余儀なくされたとみられている。

ほか「物理法則の制約があるなか、わが社のチームがまだ探求したり、考えていないような魔法のような解決策はないというのが、良いニュースだと思う。高解像度のディスプレイを採用したことで、7倍のコストと電力供給テクノロジーを搭載し、バッテリーや有線を必要とするほどのエネルギーが必要となった」など、VRヘッドセットの先駆者からの辛らつな意見が非常に興味深い。

ひとまずザッカーバーグ氏としては、Vision Proの高額さにより、当面は自社と直接競合しそうにないことに胸をなで下ろしたのかもしれない。しかし、Quest 3はMRデバイスとしては廉価だが、一応の成功を収めたQuest 2よりも高額に違いなく、今年秋に発売された後の展開を見守りたいところだ。

Source: The Verge