「Amazon Music HD」レビュー、日本もハイレゾストリーミング時代へ。その音質とは?

「Amazon Music HD」レビュー、日本もハイレゾストリーミング時代へ。その音質とは?

Amazonによるハイレゾ/ロスレスストリーミングサービス「Amazon Music HD」がスタートした。私たち「日本のオーディオファン」にとって、国内で公式にハイレゾストリーミングサービスを聴けるようになったことは一大トピックである。

最初に記しておくと、Amazon Music HDのアドバンテージは3点ある。1点目はスペック的にオーディオファンが納得できるクオリティの音源をラインナップしていること。2点目は、日本語のウェブページが用意され、スムーズに契約ができること。3点目はハイレゾクオリティで聴取可能な楽曲数がなんと数百万曲(公式発表)もあり、そのなかにはJ-Popや歌謡曲などの邦楽も入っていることだ。

今回は速報レビューとして、このAmazon Music HDを聴取するための事前準備を紹介しながら、PCオーディオ環境下での音質と使い勝手の検証、さらに本サービス同様にFLACによるサービスを提供しているQobuzとの比較も行い、同サービスのクオリティチェックを行った。

■ついに日本に登場したハイレゾ/ロスレスストリーミングサービス

まずは、本サービスが登場するまでの、日本で正式に始まっていたストリーミングサービスの現状を軽くおさらいしよう。

高音質を謳うストリーミングサービスとしては、海外ではMQA方式を採用したTIDAL、FLACフォーマットを採用したQobuzが存在していたが、いずれも日本でのサービスインは見送られており、国内からは公式利用することができなかった。

では日本で展開されているサービスというと、FLACによる44.1kHz/16bitのロスレスサービスを提供する「Deezer」を筆頭に、Spotify、Apple Music、AWA、Amazon Prime Music/ Amazon Music Unlimitedなどのサービスが名を連ねる。しかし、そのほとんどが配信音源は最大256kbps - 320kbpsの圧縮フォーマットを採用している(未確認だがフォーマットはAAC説が有力)。

ロスレスのDeezerはともかく、このスペックではピュアオーディオ環境としては不足していることは言わずもがな。なにしろ海外では、ハイレゾ配信は特別なことではなくなっているからだ。

それに対して今回のAmazon Music HDは、44.1kHz/16bitの「High Definition:HD音質」に加え、最大192kHz/24bitの「Ultra High Definition:Ultra HD音質」のロスレス配信を聴き放題で楽しむことが可能である。

さらに驚くべきは、ULTRA HD音質で聴取可能な楽曲数が数百万曲とアナウンスされていること。実はこの数値、国内外の多くのハイレゾ配信サイトのカタログ数を凌駕しており、本当にこの通りであればとんでもないことである。

なお、TIDALが44.1kHz/16bit FLACによるロスレスサービスを開始した時に実感したのだが、オーディオファイルにとって配信クオリティがCDのフォーマット以上かそれ未満かは重要だと思う。なぜなら、せっかくお金をかけて良い音を求めるのに、聴き放題だからといってわざわざCDフォーマット未満の音を聴く気にはなれないからだ。だからこそ、日本におけるハイレゾストリーミングサービスのスタートを心から待ち望んでいた。

■Amazon Music HDの使い方

続いては、Amazon Music HDのプランや再生できる機材について簡単に説明しよう。利用できるプランは個人で使う「個人プラン HD」と、家族で使える「ファミリープランHD」の2種類が提供される。現在Amazonのプライム会員であれば、個人プランは1,780円/円もしくは17,800円/年。ファミリープランHDは2,480円/月、24,800円/年となる。すでにAmazon Music Unlimitedに登録していれば、月1,000円の追加料金でアップグレードも可能だ。また、諸条件はあるものの90日間の無料お試し期間も用意されている。

対応デバイスは、専用アプリ「Amazon Music」をインストールしたWindows/Macパソコン、Amazon Music Unlimitedに対応するオーディオ製品、Alexa対応のAIスピーカーやAndroid/iOS搭載スマホ・タブレットなど。

ただし、iPhone単体では最大48kHz/24bitまでの対応となり、より高いスペックを再生するには外部DACを用いる必要がある。またAndroid端末も2014年にリリースされたAndroid Lollipopを搭載したモデル、もしくはそれ以降の端末でHD/Ultra HD再生をサポートするが、公式に「Android端末の品質と使用目的は大きく異なるため、HD/Ultra HDサポートについてはメーカーの仕様を確認すること」を推奨している。詳しくは公式サイトのQ&Aを参照してほしい。

本日時点でホームオーディオユーザーが本サービスを利用したい場合は、パソコンを用いたPCオーディオ環境かAmazon Music Unlimitedに対応するオーディオ機器が有力候補になる。そして、既に18日時点でマランツやデノンのHEOS対応機種の全てがファームウェアアップデートでAmazon Music HDに対応したことも発表された。

ちなみに、Ultra HDのストリーミング再生には、5Mbps以上のインターネット回線速度が必要と公式発表されているので、回線速度には気を使いたい。

今回はMacBook Proを用いたPCオーディオ環境を前提に、契約から楽曲再生までを行った。まず、Amazon Music HDの公式ページにアクセスし、契約の手続きを進める。支払い方法はクレジットカードか携帯決済が選択できる。Amazonのアカウント(有料のプライム会員でなくても大丈夫)を持っていれば、5分もかからず契約完了する。

次に専用の再生アプリ「Amazon Music」をインストールしてログインする。ちなみにウェブブラウザーを利用したプレーヤーも用意されているが、本サービスをハイレゾクオリティで再生するには本ソフトが必須だ。

アプリのトップ画面はカラフルで、パッと見た感じはULTLA HDという文字とともに邦楽のアーティストや楽曲が沢山並んでいて、国内で正式スタートしたサービスであることを実感する。また、プレイリストや人気アーティストのアルバム、ULTLA HDで聴取可能なアルバムや楽曲、レコメンドされたアーティストや楽曲などの項目がバラエティ豊かに並ぶ。

トップ画面のUIは、画面上部にある項目「ブラウズ」「最近のアクティビティ」「マイミュージック」「ストア」が基本メニューとなっている。右上には楽曲やアーティストを探すサーチバー、右側はプレイリスト関係、下部は再生中楽曲のステータス表示に当てられている。

また、各アルバムアートの下部には[SD](44.1kHz/16bitロッシー)、[HD](44.1kHz/16bitロスレス)、[Ultra HD](44.1kHz/16bit以上のロスレス) のアイコン(公式ではバッジと呼ばれる)が表示され、配信フォーマットが一目で分かるようになっている。さらに、コンパクトなミニプレーヤーモードも実装される。

ストリーミングサービス全体の優劣を決める大きな要素は、「アプリの画面内から膨大なタイトルへの導入経路を様々な選択要素から確保すること」にあるが、その視点で見た場合の第一印象は良い感じだ(余談ではあるが、ここの見せ方が一番上手なのはSpotifyである)。

早速再生したい気持ちを抑えてアプリの初期設定を行う。まずは、「システム環境設定」から「サウンド」を選択し、出力先を接続したUSB-DACに指定する。これはアプリではなく、パソコンそのものの設定となる。

続いて、アプリの画面上部のメニューから「設定」をクリックして、アプリの設定画面を表示させ、詳細タブを選択する。

音質を「HD/Hi-Res」に、オフライン再生設定を「再生可能な最高音質(HD/Ultra HD)」に、「ラウドネスノーマライゼーション」のチェックボックスを外す。ハードウェアアクセサレーションレンダリングの有効化/無効化については、詳細をAmazonサポートに確認したが、本記事執筆時点で有効な回答がなかったので、デフォルトの有効化を選択して使った。

なお1点気になるのが、定番再生ソフトの「Audirvana」などが実装する、インテジャーモードやHog(Exclusive Access=排他)モードを実装しておらず、それに準じる設定項目も筆者の目では見つけられなかったこと。これは音質的に大きく不利な要素となる。

また、本アプリの独自機能として、事前に楽曲をダウンロードしておき、インターネット環境がない場所でも聴取可能な「オフライン再生機能」や、気に入った楽曲をダウンロード購入できる機能が備わっていることにも注目したい。ストリーミング音源の聴取とともに、ローカルファイルの再生機能(現時点でアルバムアートや楽曲のタグ情報は認識しない)も備えている。ただし、現時点で販売用音源のレゾリューションが表記されていないため、配信レゾリューションと購入できるレゾリューションが同一でない可能性もある点は注意していただきたい。

■いよいよ試聴、その音質は?

ホセ・ジェイムスの新作アルバム「リーン・オン・ミー」を試聴するために、検索ウインドウに「ホセ・ジェイムス」と日本語で入力した。すると本アーティストの発売アルバムが一挙に並ぶ。しかもほぼ全てのバッジ表記はHDもしくはULTLA HDなことに感心する。オーディオファイルに人気のダイアナ・クラールでも同様だ。また、マイルス・デイヴィスやビル・エヴァンスなどの有名ジャズアーティストを始め、ロック・ポップスに至るまで有名アーティストや名盤のオンパレード。しかも多くがHDとULTLA HDで、特に海外アーティストの充実度は素晴らしい。再生可能な楽曲数が数百万曲というアナウンスはハッタリなどではないようだ。

再生ボタンを押すと画面下部に再生ステータスが表示される。配信フォーマットのアイコンをクリックすると、ソースのレゾリューション、再生装置の限界レゾリューション(後述するMIDI設定に左右される)、実際に再生されているレゾリューションが表示され、ソースの持つレゾリューションで再生ができているのか一目で確認できるのが嬉しい。

それでは、日本人アーティストの配信状況はどうだろうか? トップ画面を見る限り、あいみょん、宇多田ヒカル、松任谷由実、井上陽水、尾崎豊など新旧アーティストがULTLA HDで再生可能だ。そして18日にサブスク解禁されたPerfumeは、メジャーデビュー以降の全作品がHDで聴けてしまう(本アーティストはそもそもハイレゾ音源を配信していないので、現時点でこれが最上位フォーマット)。

ただし日本人アーティストの多くは依然としてSD品質での配信となっている。また、ハイレゾ配信を行っている作品であっても(たとえば森口博子の『GUNDAM SONG COVERS』など)、HDで配信されているケースもある。

■Amazon Music HDの音質は?

いよいよ再生してみる。ブラウズ画面でアルバムアートにポインターをおけば、スタートボタンが表示され、それをクリックすることで再生される。

また、アルバムアートの中央部以外をクリックすると、そのアルバムの楽曲一覧表示に切り替わり曲単位で再生指示が出せる。

それでは気になる本サービスの音質を報告したい。ホセ・ジェイムスの「リーン・オン・ミー」では、帯域バランス、音色、音調とも同時比較したハイレゾファイルとほぼ同等。卓越した情報量を持ち、上下fレンジも秀逸で、安定した再生音を実現している。そしてハイレゾのメリットとされる空間表現力も中々のものだ。

が、ここで1つ大きな壁にぶち当たった。本アプリは、各楽曲のサンプリング周波数とビット深度の情報をmacOSのMIDI設定に自動反映させる機能が備わっていない。しばらく初期化していない筆者のパソコン設定がおかしい可能性もあるが、今回の試聴では各楽曲のサンプリング周波数/ビット深度に合わせてAudioMIDI設定をしないと、DAコンバーターにはMIDI側で設定した数値がそのまま送られてしまう。つまり曲に合わせその都度、設定変更しなくてはいけない。

次に、FLACによるハイレゾ配信を行っているQobuzと同一タイトルで音質を比較した。Qobuzの再生にはAudirvanaを用いている。つまり「Audirvana + Qobuz」VS 「Amazon Music + Amazon Music HD」となるのだが、率直に書くと音質については前者が圧倒している。

具体的には、中高域の解像度と見通しの良さが違う。弱音部のわずかな響きやそれらが作り出す空間のパースペクティブは、特にAudirvana + Qobuzの方が良好だ。これは先述した排他モードなどをAudirvanaが備えており、macOSのCore Audioを経由する影響を回避できているのが大きな理由だろう。もちろん比較しなければ、後者も決して悪い音質ではないので、Amazon Musicソフトが排他モードを実装することに期待したい。

最後にギャップレス再生の可否を確認するため、HDクオリティのビートルズのアルバム『アビイ・ロード』のトラック9から14までを続けて試聴したが、音が途切れることなく再生できた。

■日本で “ハイレゾ” を一気に身近にするゲームチェンジャー

いかがだったろうか。Amazon Music HDの登場は、特に膨大な楽曲数でハイレゾクオリティが聴き放題という点で、現在のオーディオソースシーンを一挙に変えるゲームチェンジャーとなるインパクトがある。

それにしても予想外だったのは、 “日本初” のサービスインを成し遂げたのは、かねてよりサービス開始を表明していたダウンロードサイト「mora」が提供する「mora qualitas」ではなく、Amazonだったこと。ストリーミングサービスの世界における競争がいかに激しいことかを実感した。

Amazonでは、Amazonプライム・ビデオなど、サブスクリプションタイプのコンテンツサービスを強化しており、他社に先駆ける先行者利益や、2020年から始まる5G化を綿密に計算している可能性高い。

今後は再生環境もより整備されるはずだし、オーディオ機器への組み込みもさらに加速するだろう。また、上で詳細には触れていないが、「オフライン再生機能」や「楽曲購入機能」などもユニークで、ソフトウェアのユーザビリティもほぼ満足できるレベルに達している。

今後は「音が良い」というメリットがオーディオファン以外のユーザーにどれだけ響くか、その魅力を訴求できるのか。そして日本人アーティストのタイトルをさらに増やせるのかがサービス成功の大きな条件となるだろう。

とはいえ現時点で、本サービスの登場により日本のハイレゾ配信が一気に身近になったことは、まぎれもない事実。日本のオーディオファンの一人として、長い間待ちかねていた瞬間が訪れた感慨で、今は胸がいっぱいだ。


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