一度決めたら戦略は変えない特攻精神。精神論ばかりを語り、少しも科学的でない分科会。本来、医学は人の幸せのためにあるのに、それが捻じ曲げられている。日本の医療界にはびこり続ける根本的な問題とは?

※本稿は、木村盛世・和田秀樹著『なぜ日本は勝てるはずのコロナ戦争に負けたのか?』(かや書房)を一部抜粋、編集したものです。


コロナ禍で明らかになった、無駄で害のある医療

【木村】あくまで推測なのですが、今回の医療崩壊の原因の1つに、地方の医師会所属開業医が、いわゆる個人事業主だということがあると思うのです。彼らはかなり高齢化していると思いますので、その人たちが一番怖がったのは、自分がコロナで倒れるということだったのではないかと。

自分が感染して倒れたら医院が立ち行かなくなるという気持ちから、感染者を診たくないという感情に行き着いたのが正直なところではないのかと。

【和田】木村先生はアメリカの病院に勤めていらっしゃったから、よくおわかりだと思うのですが、アメリカだと8時間勤務だったら、4時間外来をやって、4時間勉強をさせてくれるんです。ところが、日本の医療は薄利多売で、医師たちは勉強する時間がないんですね。医者は一見、収入が多そうに見えるのですが、実は薄利多売ですから、勉強する時間さえ取れないんです。

そのために、マスコミが騒ぐと、もうそれに医者まで振り回されてしまったという状況があるような気がするんですね。ましてや木村先生がおっしゃるように、開業医の高齢化が進んでいますから、そういった人たちはそれでなくても長年勉強してこなかったうえに、テレビが騒ぐのですから。

【木村】老齢開業医がワイドショーの一般視聴者みたいになっちゃって。そういった医師たちが、医師会を支えている人たちの多くだと私は思っています。ただ、これは別の話ですが、今回のコロナが終われば、こういう人たちの淘汰も進むと思います。

【和田】こういった淘汰されなければならない医師が発生したのは、要するに日本では戦後、国民皆保険制度が整備され、国民が治療費のことを心配しないでも医療を受けることができるようになったのが発端です。国民皆保険制度は、日本国民にとっては素晴らしい制度でした。

ところが、医療費が大幅に増えることになったのです。そのため、医療費を抑制するさまざまな政策がとられました。そのうちの1つが診察報酬の減額です。

多くの病院は収益を維持するために、患者数と受診回数を増やす薄利多売方式に切り替えました。その結果、病院は生活習慣病の患者さんに、本来は必要のない検査をしたり、飲まないほうが良い薬を与えたり、薬の処方箋は小分けにして患者に与え、受診回数を増やすようになり、患者さんの寿命を縮めているのです。

【木村】コロナ禍で病院が怖いというイメージが国民に広まり、みんなが極力、病院に行かなくなりました。その結果、何が起こったかというと、死者数が減ったのです。

【和田】2007年に北海道の夕張市が企業でいう倒産にあたる、財政再生団体に指定され、それまで171床あった市民病院が19床になり、医療崩壊が起こりました。ところが、その後、夕張市ではさまざまな病気での死亡率が減ったのです。それと同じことが2020年の日本で起こりました。みんなが病院に行かなくなると、死者数が減りました。

【木村】私がこの1年で痛感したのは、近代医療って本当に何の役にも立たないということですよ。要は開業医が薄利多売のために、安定した高血圧と糖尿病、腰痛持ちの患者さんに、1週間後、1カ月後にまた来てくださいね、念のため検査に来てください、と言っていたことが何の意味もなさなかったのが明らかになりました。

【和田】病院に来ないと病気がひどくなると説明していたのに、現実にはむしろ、みんなが健康になっています。健康診断というのが恐らくは寿命に寄与していないと僕が感じる1番の理由は、次の事実です。

1947年に、日本人の平均寿命が50歳を超えました。そのときには男女の平均寿命の差が2歳しかありませんでした。ところが1970年代から男は会社で健康診断を受け、数値が悪いと病院に通うことになった。女性は正規雇用が少ないから、健康診断を受けている人は少ない。その結果、女性のほうが8歳から9歳、平均寿命が男性より長くなった。

【木村】病院の薄利多売はいけないということと、薄利多売でしかやっていけない病院はまったく意味がなかったということが、今回のコロナ禍でも明らかになりました。

【和田】薄利多売で稼いでいる医者は、ワイドショーの視聴者と一緒になってパニックになっている。そういう医者は頼りないと皆が感じてくれればいいのだけれど、医者まで怖がっているのだから、コロナは怖い病気だという印象ばかりが残っている感じですね。