山本千儀さんは、「人間関係に行き詰まりやすい人は、たまっている自分の感情を発散できていないことが多い」と語ります。つらい、寂しい...そんなネガティブな感情を押し込めず、感情を発散する大切さについて紹介します。

※本稿は、山本千儀著『「他人に振り回される私」が一瞬で変わる本』(日本実業出版社)より、一部を抜粋・編集したものです。


それ感情の便秘かも? スッキリ解放させましょう!

人は常に物事を合理的に判断して行動しているわけではなく、行動は感情にも大きく左右されています。

人には感情の「容量」があります。器のようなものをイメージするとわかりやすいかもしれません。ここに不満や不安、恐れなどの感情の濁った水がたまっているとします。

濁った水という感情にずっと支配されると、きれいな水の新しい感情に切り替えることがなかなかできなくなります。

私は特に不必要な感情をため続けた状態を感情の便秘とも表現しています。

腸に便がたまるとお腹が張って苦しくなりますし、便意に苦しみ続けることにもなります。これと同じように、古いイヤな感情もため続けると心が苦しくなりますし、切り替える動きも鈍くなります。

また、古いものが場所を陣取ると新しい栄養素の吸収も悪くなります。 腸内の環境を整えるように、必要ない感情は出す心の"感情整備"をしてみましょう。


ネガティブな感情を否定しない

人間関係に行き詰まりやすい人は、たまっている自分の感情を発散できていないことが多いです。特に、イヤな感情を吐き出すのは悪いことであるという考えを持ちます。

持っている「つらい、さみしい、もう無理かも」などのネガティブな感情にフタをして、「私ってこんなにポジティブな人です」と自分を偽っている人、いわゆる偽ポジティブ星人という方々です。

ネガティブな感情を持ったからといって自己否定する必要はない、と私は思っています。

陰陽バランスが存在するように、人はポジティブな感情とネガティブな感情の両方を持ち合わせます。「悔しいけど前向きになれる」、「楽しいのに欠如感がある」「さびしいが気楽である」など、感情は混在します。

複雑な感情を受け取りながら生きているのが人間です。その時の感情に向き合って自身のことを内観できるほうが成長につながるのです。本当のポジティブは「ネガポジ、どっちでもいい‼」ぐらい、すべてを受け止められるマインドです。


「吐」という漢字説明の落とし穴

「吐」という漢字は、「口」と「+」(プラス)「−」(マイナス)の組み合わせでできています。「吐」から「−」を取ると「叶」という文字になる、という説明を聞いたことはありませんか?

「マイナスの発言をしてはいけない」「プラスの言葉だけ口にしているといいことが実現する」といった文脈でしばしば語られています。

けれども、この解釈では逆につらくなる引き金となります。プラスもマイナスもあってこそ「吐」という漢字が形成されます。プラスの言葉を口にするのも大事であり、逆にマイナスの感情があるなら、しっかり認めることも大事です。

マイナスの言葉を吐くのをやめるのではなく、その瞬間に感じたイヤな感情にフタをせず認めること、イヤな気持ちを感じて良いということです。マイナス発言がダメではなく、「私は今こういうことがイヤなんだな」と感じた後に手放すという意味の「吐く」です。

「吐」は+と−の共存。息は吐くから吸えるのです。吸いっぱなしでは過呼吸で苦しくなります。乾電池もプラスとマイナスがあるからこそ、電気が出力されて機械を動かせるわけです。

世の中にプラスだけの乾電池は存在しないですし、仮にあったとしても機能しません。

ImpossibleをI'm possble.に変換できるようにI'm possible.にもImpossibleが隠れているのとも似ていますね。

自分が今イヤな感情を持っているとき、「私、今こう感じている」とその感情をそのまま認めた後、イヤなもののみを吐き出し、手放すほうが健全です。

そのためには「私はこの人の前では吐いても良い! この人なら信頼できる!」という関係性を保てる人の存在がとても重要になります。