感性が人一倍、敏感・繊細な人を「HSP」と呼びます。昨今、多くの人がHSPであることに苦しみを感じています。敏感であるが故の生きづらさは、どうしたら解消できるのでしょうか。山本千儀さんが、HSPの苦しさを取り除くための「環境の整え方」について紹介します。

※本稿は、山本千儀著『「他人に振り回される私」が一瞬で変わる本』(日本実業出版社)より、一部を抜粋・編集したものです。


生まれつき感受性が強く、敏感な気質を持つ人々

世の中には直感が鋭すぎてつらい思いをしている人がいます。いわゆるHSPと呼ばれている人たちです。特に人との距離感、自己防衛、危機回避や安全地帯を意識していただきたいのはこの方々です。

皆さんはHSPという言葉をご存じでしょうか。HSPとは、Highly Sensitive Personの頭文字を取った言葉であり、生まれつき非常に感受性が強くて敏感な気質を持つ人のこと。

この概念は、アメリカの心理学者であるエイレン・アーロン博士によって提唱されました。

HSPというのは診断名ではなく、生まれつきの性質のことで、約5人に1人が当てはまるといわれています。脳の扁桃体が過剰に情報をキャッチするせいで、ストレスを抱えてしまう状態であり、感受性が強くて人一倍敏感な気質のある人たちです。

日本では「繊細な人」というニュアンスで解釈されることが多いですが、私がいろいろなHSPの人と関わったり、自分自身の特徴を俯瞰したりした印象では、繊細という言葉だけではいい尽くせない、他にも深いニュアンスが含まれているように感じます。

日本語でいえば、「繊細」というより「敏感」「過敏」という単語のほうがしっくりくる感じがします。アンテナが高くて、エネルギーを敏感にキャッチしてしまうというイメージです。

HSPは情報や刺激に敏感に反応します。竜巻や地震など自然災害が発生するとき、いち早く危険を察知した動物や昆虫などが逃げ出すといった話を聞いたことがあると思います。それは、動物や昆虫にHSP気質があるからだといわれています。

HSPの人は周りの人のエネルギーを敏感にキャッチするので、対人関係でつかれてしまいやすい傾向があります。

また、この傾向がある人は、優しい性格を持ち、共感力が高く、自分よりも他人を優先しがちです。

他の人が見えないところまで気づき、「あの人はこういうことがしたいのかな、力になれないかな」「ここを補足すると、みんなが助かるかも」などと気づきも多いため、細やかな配慮を自ら率先してしまうのです。

実は私自身もHSPであり、人より細部まで気づくことに悩み、なるべく必要以上に見ないようにスルーすることを意識してきました。

それでも人知れず悩みを抱えていたのですが、あるとき『鈍感な世界に生きる 敏感な人たち』(イルセ・サン著、枇谷玲子訳、 ディスカヴァー・トゥエンティワン)という本のタイトルに衝撃を受けました。「これって私のことかも?」と目の前がスッキリ晴れた感覚と共に大きな衝撃を受けました。


人に疲れるのに、人と関わりたい? 社交的な繊細・敏感さん

HSPの方々は、共通する4つの特性があるといわれています。

・ 物事を深く処理し、深掘りして分析する。(D:Depth of processing)
・ 刺激に対して敏感に反応し、つかれやすい。(O:Overstimulation)
・ 高い共感性を持ち、感情移入しやすい。(E:Emotional reactivity and Empathy)
・ 音や光、匂いなどに対する感覚が鋭く敏感である。(S:Sensitivity to Subtleties)

これら以外に、HSPの人が敏感のために気になることは、実に多種多様です、本書では、特に人間関係に強く左右される、人と関わりたいのに人につかれる、「外向型HSP」(HSE)について触れたいと思います。

HSPと一言でいっても、実は複数のタイプに分かれています。私自身、これまでHSPの方々とコミュニティで交流したり、セッションを行ったりしてきた経験からも、十人十色で一括りにできないのを実感しています。敏感の対象が人それぞれなのです。

あえて大まかに分類すると、4タイプに分けることができます。

まず、内向型と外向型に大きく分かれ、外向型のHSPは「HSE」と呼ばれています。HSPの中にHSEという1つのタイプがあるといったイメージです。

HSEは「Highly Sensitive Extrovert」(ハイリー・センシティブ・エクストロバート)の略であり、「外向型HSP」と呼ばれることがあります。HSEという概念を提唱したのは、HSPを提唱したエレイン・アーロン博士と共に活動している心理カウンセラーのジャクリーン・スティックランド氏です。

そもそもHSPの人は感情がとても繊細であるため、人間関係につかれやすい特徴を持っています。この特徴は内向型も外向型も同じです。

ただし、1人で過ごすことを好む内向型に対して、外向型は人につかれやすいのに人と関わりたいという特性を持ちます。過敏な気質と外交の気質を両方持っているので、まるでアクセルとブレーキを同時に踏んでいるような人たちといえます。

内向型のHSPからは明るく社交的で繊細な人に見えない、一方、非HSPからは気をつかい過ぎ・気にし過ぎと見え、どちらからも理解をしてもらえず、深く悩むことが多いのです。

以上をもとに、刺激追求型、刺激を追求しない型という観点を加えて、4タイプに分類してみたものです。

・HSP(刺激追求しない型・内向型):人と関わるのが苦手、刺激が多いとつかれる、内に向けて対話する、1人の時間で回復

・HSE(刺激追求しない型・外向型):人と関わるのが好き、刺激が多いとつかれる、外へ発信、外からエネルギーをもらう

・HSS型HSP(刺激追求型・内向型):人と関わるのが苦手、好奇心旺盛・刺激を好む、内に向けて対話する、1人の時間で回復

・HSS型HSE(刺激追求型・外向型):人と関わるのが好き、好奇心旺盛・刺激を好む、外へ発信、外からエネルギーをもらう