がんの進行で始まった夫の徘徊…死後に妻が気づいたその行動の意味

がんの進行で始まった夫の徘徊…死後に妻が気づいたその行動の意味

食べられなくても「芋焼酎」は飲める

病床にある夫と過ごしていると、「看護師の立場としては」という建前が、いくつも崩れていきました。たとえば、お酒を飲みたがる夫にどう対処したものか、最初は悩みました。もともと彼は無類の酒好き。晩酌を欠かさない人だったのです。それも、決まって芋焼酎のストレートでした。
先の長くない人なのだから「少量のお酒であれば"アルコール消毒"になるだろう」「体も温まるだろう」と自分自身に言い聞かせ、用意するようにしました。
主人がおいしそうに目を細めてお酒を飲む姿は、今でも鮮やかに覚えています。
そのうち、酒好きの夫に大きな問題が降りかかりました。おちょこすら持てなくなってきたのです。私が彼の口元に、おちょこを運ぶことが増えました。
こんな私の姿を目の当たりにしていたからでしょうか、息子たちも、食事介助をよく手伝ってくれました。
当時、長男は看護学生、次男は小学2年生でした。
あるときから、私は10種類ほどのおかずを少しずつ用意して、それらをひとつひとつ夫の口元に運び、食べられるものを探すようになっていました。
その「食べられる」「食べられない」というところにゲーム性を見出したのか、息子たちは食事介助をすすんで手伝ってくれました。
「これは食べられたよ!」「無理だったよ」
他人様から見れば、自分の親に対して失礼で、不謹慎な行動だったかもしれません。でも、そんな不真面目な明るさがあったからこそ、私は続けられたのです。
そのうち、息子たちの出番も徐々に減るようになってきました。いよいよ、固形物が食べられなくなり、さらには「流動食」も夫はほしがらなくなってきたのです。それは「おいしくない」ということではなく、もう「食べないでよい」という体のサインだったのでしょう。
救いは、夫がお酒を変わらずほしがってくれたことです。ただ、もうそのころになると、おちょこからは飲めません。そこで私は、シリンジ(注射器のような形の、液体を注入する医療器具)で、夫の口にお酒を「入れる」ことにしました。
一般的な医療関係者の方が知ったら、卒倒する人もいるかもしれません。でも、私は夫が喜んでくれるのを見て「それでよい」と感じていました。


関連記事

おすすめ情報

PHP Biz Online 衆知の他の記事もみる
主要なニュースをもっと見る
社会のニュースをもっと見る
経済のニュースをもっと見る
政治のニュースをもっと見る
国際・科学のニュースをもっと見る
エンタメのニュースをもっと見る
スポーツのニュースをもっと見る
トレンドのニュースをもっと見る
生活術のニュースをもっと見る
地域のニュースをもっと見る

生活術 アクセスランキング

ランキングの続きを見る

生活術 新着ニュース

新着ニュース一覧へ

総合 アクセスランキング

ランキングの続きを見る

東京 新着ニュース

東京の新着ニュースをもっと見る

東京 コラム・街ネタ

東京のコラム・街ネタをもっと見る

特集

特集一覧を見る 動画一覧を見る

記事検索