わが子には自分でよく考えて行動できる人に育ってほしいものです。そのためには、できる限り親は口を挟まず、見守ってあげることも重要です。では、親の介入や注意が必要な場面とはどんな時でしょうか? 一般財団法人日本キッズコーチング協会理事長の竹内エリカさんが解説します。

※本稿は、 竹内エリカ著『心理学に基づいた 0歳から12歳 やる気のない子が一気に変わる「すごい一言」』(KADOKAWA)から、一部抜粋・編集したものです。


人を助ける人になってほしいとき

× ちゃんと挨拶しなさい
〇 挨拶しようね。みんなの気分がよくなるからね

・誰でも誰かの役に立ちたい
子どもの「幸せ力」を育てるということを考えるうえで注目したいのが、貢献心を育てるという方法です。貢献心というと大げさに聞こえるかもしれませんが、人は誰でも誰かの役に立ちたいという欲求を持っていると言われています。

人は誰かの役に立っている感覚があったとき、脳内でドーパミンが分泌されて幸福感を感じます。この現象を「ヘルパーズハイ」といいます。

カリフォルニア大学で行われたある実験があります。まず、人を以下の4つのグループに分け、それぞれ6週間を過ごしてもらいました。

グループ1 社会に役立つ行動をするグループ(寄付やゴミ拾いなど)
グループ2 家族や友人に親切にするグループ(プレゼントやお手伝いなど)
グループ3 自分に親切にするグループ(おいしいものを食べる、旅行に行くなど)
グループ4 いつも通り過ごすグループ

結果として、グループ1とグループ2はモチベーションが上がり、幸福感も増していました。つまり、他人に親切にすることで自分の内側にポジティブな感情を生み出して、周りの人間関係の充実や人を信じる力につながったということですね。

よく子どもが大人に、「これあげる」と言って何かをさしだしてくれることがありますね。その時点で本人は「貢献」しているという気持ちではないにしても、「人を喜ばせたい」という気持ちはどの子どもにもあるということです。小さなうちからその小さな芽を育ててあげたいものです。

そのほか、「挨拶しなさい」というのを「挨拶しようね。みんなの気分がよくなるから」と伝えたり、「靴を揃えなさい」を「靴を揃えてね。みんなが通りやすいから」のように言い換えたりすると、「自分の行為が周りの人にいい影響を与えるのだ」ということがわかっていきます。こうした言葉がけで子どもの幸せ度がアップするのなら、ぜひ取り入れてみたいですね。


・0〜2歳への声かけ

誰かを思いやるような行動が出てくるのは、想像力や共感力が育つ5歳頃からと言われています。ですが、0〜2歳のうちに準備しておくことはできます。この頃、子どもが親におもちゃを渡すという遊びをよくしますね。受け取ったときに「ありがとう」と言ってあげましょう。

小さいときから感謝の言葉を知っておくと、貢献心が育つ年齢になってその言葉を聞くと「自分が人のためになってるんだ」と感じるようになります。日常生活の中で、感謝の言葉をたくさん伝えてあげてください。

・3〜6歳への声かけ

3歳頃になると、子どもはお手伝いをしたがります。お手伝いは、人が最初にする貢献の行動です。はじめは遊びの一環でやろうとしますが、この頃から誰かのためになる経験をさせてあげることはとても大切です。

お母さんの料理の簡単な手伝いやお父さんのお風呂掃除の手伝いなど、ちょっと面倒でもやらせてあげて、「ありがとう」と伝えてあげましょう。

・7〜12歳への声かけ

小学3年生頃になると、再びお手伝いをしたがります。興味からはじまったお手伝いが、しっかりとした仕事になっていきます。家族のために役割を持つのが社会貢献の第一歩。

それは子どもが幸せを感じるために大切な行為なので、ぜひ積極的にやらせてあげてください。「お風呂掃除お願いしようかな」「ごみ出ししてくれる?」など、簡単なものでOK。子どもに任せることで、責任感も育ちます。


ルールを教えたいなら、しつけをしない「しつけの3原則」

子どもに対してはできるだけ「ああしなさい」「こうしなさい」と言わずに、自分で考え行動することを応援したいものです。

ですが、どうしても介入しなくてはいけない場面もありますね。子どもが道路に飛び出して危うく車にひかれそうになるような場面で、見守っているわけにはいきませんし、歯磨きをしたくないと駄々をこねている子どもに対して、意思を尊重しようとそのままにすれば、虫歯になってしまいます。

それでは、どんなときに見守り、どんなときにしっかりと叱るべきなのでしょう。その判断基準となるのがしつけの3原則です。それは、安全、健康、道徳に関わるときです。この3つの場合だけは、しっかりと叱ってください。

まず、安全に関わるとき。道路に飛び出す、熱いお湯を触ろうとするなど危険な場合です。次に、健康に関わるとき。歯を磨かない、ごはんを食べないでお菓子ばかり食べている、夜ふかしして日中元気がないなど、不健康な生活スタイルを送っている場合。

そして、道徳に関わるとき。嘘をつく、お友達をいじめるなど道徳に反する行為があった場合。これら3つの場合は、「見守る」という姿勢を一切気にせず、子どもをしっかりと叱りましょう。これが「しつけの3原則」です。


・0〜2歳への声かけ

この頃は、安全に十分注意してあげましょう。0〜1歳は、何でも口に入れたり触ろうとしたりする時期。食べ物以外のものを口に入れようとしたら「ダメ! 危ないよ」、熱いものを触ろうとしたら「触らないで。熱いよ」と言いましょう。

2歳頃は動けるようになり、道路に飛び出そうとしたりしますね。「止まりなさい!」「車がくるから危ないでしょ」と声をかけましょう。手をぎゅっと掴んだりしてもOKです。

見守って言い聞かせるのはしっかり理解できるようになってから。ただ「ダメ」と言うのではなく、どうダメなのか、どう危険なのかを伝えてあげるといいですね。

・3〜6歳への声かけ

この頃意識したいのは、まず健康です。2歳後半くらいから、歯磨きを嫌がる子が増えます。ほかにもお菓子を食べすぎる、夜ふかしをする、だらだらと寝ているなどの状態は、今すぐ危険になるわけではありませんが、ゆくゆく健康を害する可能性が。

体の健康は心の健康にも影響する重要な要素。叱りつける必要はありませんが、「今日はやらなくてもいいわ」と見守るのは避けましょう。「早く寝て元気になったら明日もたくさん遊べるね」などと、必要性を伝えて良い習慣を促してあげましょう。

そして、道徳も意識したいところ。親に「あっち行って」「嫌い」のようなきつい言葉を言ってくることがあります。成長の時期だから仕方がないとも言えますが、相手が傷つく言葉を口にするのは道徳に反するので、怒っても構いません。

「そんなこと言わないで」「すごく悲しい」と伝えましょう。お友達にいじわるをする、物をとる、仲間はずれをするなどの場合も「それはいけない」としっかり叱りましょう。

・7〜12歳への声かけ

この頃気をつけたいのが、まず健康です。ちゃんと栄養のあるものを食べて適度に
3〜6歳への声かけ運動してしっかり寝る、というのが日常のしつけの中で重要です。生活リズムの安定は心の安定に直結します。

そして、道徳も大切です。高学年になってくると人間関係のトラブルも増えてきます。そのときは「嫌なことをされたら、はっきり『嫌だからやめて』って言葉で伝えていいんだよ」と声をかけ、話をよく聞いてあげましょう。相手を傷つけずにうまくいくような立ち振る舞いを教えてあげて、常に味方でいることも大切です。