子どもが不登校になると、多くの親はとまどい、不安に陥ります。しかし、角舘有理さんが「不登校は決してダメなことではない」と言い切るのは、息子さんが不登校だった5年間で、学校では経験できないことをたくさん経験し、多くのことを考える時間を持つことができたからだそう。

親が「不登校=悪」の固定概念から解放された時に、親も子も将来に向かって歩き出すことができる、と角舘さんは語ります。
本稿では、角舘さんの息子さんが不登校から脱出した時のエピソードをご紹介します。

※本稿は角舘有理著『無理に学校へ行かせなくていい 〜不登校を脱出した息子と私の記録〜』(ICE[インプレス])から一部抜粋・編集したものです。

角舘有理(かくだて・ゆり/ライター)
上智社会福祉専門学校卒業。福祉施設指導員や一般事務を経験後、2015年からインターネット上を中心にフリーランスのライターとして活動。現在は企業ブログの執筆代行や、セールスレター、医療関連、住宅関連の仕事を中心に執筆している。不登校関係では、ウーマンエキサイトへの子育てカテゴリへの寄稿や、天狼院書店のグランプリ受賞作「息子の不登校と過去の私を癒やす旅」などがある。


不登校を脱するきっかけ

不登校を脱するきっかけとなったのは、高校受験を本格的に意識し始めたことです。息子の心のなかには、中学2年の秋くらいから「中学校を卒業したらどうするのか」という問題が、漠然と広がっていました。

・自分を見つめ直し将来を考え始める

息子が自分自身を見つめ直すようになった頃から、生活面にちょっとした変化が現れ始めました。一つには、色々なものに対して批判をしなくなったこと、もう一つは自分なりに勉強をし始めたことです。

勉強といっても、教科書を開くわけではありません。息子の勉強法は、頻繁にニュースを読み聞きして社会情勢を知ったり、洋楽を聴いて訳し、自分で歌えるようになったりというようなことでした。

以前は、海外の政治に対して、面白おかしく偏った書き方をした記事を拾っては同調したりしていましたが、今では同じ事象に対していくつものニュースサイトなどを読み比べて、多角的に判断するようになりました。英語に関しては、洋楽を聴いてわからない単語を調べて意味を理解し、発音を真似てきちんとコピーするといった具合です。

どうしてそんなふうに急に活動的になったのかと不思議に思ったので、息子に聞いてみました。すると、「勉強してない不安を少しでも解消しようと思って」という答え。

勉強しないと、どんどん世の中から取り残されていくような気がする。だから、少しでも社会のことを知ったり、英語ができるようになっておきたいと思ったのだそうです。

ついに、逃げたり避けたりするレベルから、対策を考え実行に移すというステージへのレベルアップです。中学2年生後半頃、不登校になってからは丸4年が経っていました。

ただ不安に押しつぶされそうになるのを、ゲームで紛らわしていた小学5年生のときから、精神的にだいぶたくましく成長したなあと実感して、嬉しくなったのを覚えています。生き残るためには、前に進むためには、自分が動かないと始まりません。息子はきっと無意識にそう感じたのでしょう。

英語に関しては、好きなアーティストの歌を深く知ることができるということもあって、どんどん理解できる単語が増えていきました。単語だけでなく、歌詞を調べながら歌うことで単語の並びにも興味を持ち、自然に文法も身についたようです。新しく発見した文章の構成を、よく私に説明してくれました。

中学校の頃、英語の先生にビートルズの歌詞の書いてあるプリントを渡されて嫌々歌っていた私とは大違いです(ビートルズが嫌いなわけではなく、プリントされた曲があまりにも有名すぎて、逆に興味がなかったのです。先生すみません)。

やはり、自発的に好きなことを調べると吸収するのが早いんだなあと感心し、そんなやり方を選択する息子を、人として尊敬しちゃうなあと思いました。やはり、好きに勝るものはありませんね。