パンをかぶった目つきの悪い小動物(『パンどろぼう』)に、お茶碗によそられたずんぐりむっくりの白くま(『おいしそうな しろくま』)……人気絵本作家、柴田ケイコさんが描くキャラクターは、ただかわいいだけではない、ひとクセのあるビジュアルが魅力的です。そんな柴田さんが、人気の動物・パンダを描くときのこだわりとは?

新作絵本、『パンダのおさじと フライパンダ』(ポプラ社)の制作秘話をご本人に語っていただきました。

柴田ケイコ(イラストレーター・絵本作家)
高知県在住 2002年よりフリーイラストレーター 2016年よりイラストレーター兼絵本作家 個展や企画展にて雑貨制作も行う。


子どもの心を掴む「楽しい呪文」の誕生秘話

――『パンダのおさじと フライパンダ』では、「アッポパイ、ポコパイ」の呪文と、楽しいダンスが子どもたちの心を掴んでいます。子どもが喜ぶツボがわかるのは何故でしょうか?

自分自身に子育ての経験があるのが大きいかもしれないです。覚えやすいフレーズが子どもの心に刺さるのを、自分も読み聞かせで体験してきたので。

テレビCMでキャッチーなコピーが流れてくると、子どもだけでなく大人もずっと頭に残りますよね。そういう要素を絵本に入れてもいいなと思い、『パンダのおさじと フライパンダ』では呪文を登場させました。

私は落語が好きなんですけど、「死神」という古典落語のおまじないがすごく面白くて。呪文のヒントはそこから得ています。理由はわかりませんが、私自身もともと呪文が好きなのかもしれないです。

――かわいいだけじゃない、ひとクセあるキャラクターも柴田さんの作品の魅力ですよね。絵本のキャラクターを作る上で、何か意識されていることはありますか?

既存のキャラクターと似ているものは、なるべく作らないよう意識しています。ちょっと変わっていた方が皆さんも反応して下さるし、私もそういうキャラクターが好きなので。『パンダのおさじと フライパンダ』には、そこまで濃いキャラクターはいないんですけど、しゃもじいがちょっと怪しいですよね。ああいうやつがいてもいいと思っています。

自分でパンダを描くとなったら、目は入れたくないなと思っていたので、おさじくんは真っ黒な目元になりました。私の感覚だと、目を入れるとかわいさが退いてしまう気がしたんです。「パンダって遠くから見たら目が見えないし、いいんじゃないかな」と思って。目を描けば表情をつけやすくなるのかもしれないんですけど、目がなくても、何となく表情が出ると思うんですよね。

マズルは白にしちゃうと一般的なパンダになっちゃうので、おさじくんらしい色でちょっと差別化しようかなと思って、ほんのりピンクにしました。