小学生がよく使う「かわいい」や「嫌い」という言葉を、大人っぽく言い換えてみませんか? 語彙力を鍛えることで、ワンパターンだった会話から抜け出すことができます! 12歳までに身に着けておきたい語彙を、齋藤孝さんが紹介します。

※本稿は齋藤孝著『「伝える力」が伸びる! 12歳までに知っておきたい語彙力図鑑』(日本能率協会マネジメントセンター)から一部抜粋・編集したものです

齋藤孝(明治大学文学部教授)
1960年静岡県生まれ。明治大学文学部教授。専門は教育学、身体論、コミュニケーション論。著書に『12歳までに知っておきたい言い換え図鑑』(日本能率協会マネジメントセンター)、『語彙力こそが教養である』『小学3年生から始める!こども語彙力1200』(いずれもKADOKAWA)、『大人の語彙力ノート』(SBクリエイティブ)、『声に出して読みたい日本語』(草思社)、『雑談力が上がる話し方』(ダイヤモンド社)など多数。NHK Eテレ「にほんごであそぼ」総合指導。


かわいいを言い換えてみよう!

・愛らしい
【意味】かわいらしい。小さくてほほえましい。
【例文】母は双子のパンダの愛らしい姿に夢だ。

・愛嬌
【意味】にこやかで親しみやすく、人にいい印象を与えること。
【例文】友達の弟はいつもニコニコしていて、愛嬌がある。

・愛くるしい
【意味】とてもかわいらしいさま。
【例文】我が家のペットのハムスターは、愛くるしい目をしている。

・素敵
【意味】心が引きつけられ、素晴らしいと感じるさま。
【例文】あなたのペンケースは、キラキラしていて素敵ね。

・あどけない
【意味】幼くてかわいい。素直で悪気がない。
【例文】赤ちゃんのあどけない笑顔を見て、思わず私も笑顔になった。

・天真爛漫(てんしんらんまん)
言葉や行動に気取ったところがなく、ありのままであること。「天真」は飾り気のない様子を、「爛漫」は光り輝いている様子を意味するよ。

・純真可憐
素直でけがれがなく、愛らしいこと。似た意味の四字熟語には「純情可憐」もあるよ。「純心」と覚えないように気をつけよう。

「かわいい」は、思わず抱きしめたくなるような、小さいものやけがれのないものに対して抱く感情なんだ。つい、なんでも「かわいい」ですませたくなるけれど、日本語にはたくさんの言い換え候補があるよ。

たとえば、愛らしいと愛くるしいは似ているけれど、愛くるしいの方が強い表現だよ。自分の気持ちが引きつけられるものに対してならば、素敵や魅力的といった言い換えもできるね。

日本のアニメやキャラクターの人気も手伝って、「かわいい」は世界各国で通じるよ。他の表現もあることを、いつか海外の友達に教えてあげてほしいな。


嫌いを言い換えてみよう!

・虫が好かない
【意味】特にこれといった理由はないが、好きになれない
【例文】彼はとても頭が良く、見た目もいいのにどうしても虫が好かない。

・気に入らない
【意味】自分の好みや望みに合わない。
【例文】兄に謝ったのに、態度が気に入らないと言われて腹が立った。

・苦手
【意味】自分にとっていやな相手。また、不得意な物事。
【例文】寒さが苦手な兄は、雪が降るとコタツから出ない。

・不倶戴天(ふぐたいてん)
同じ世界に生きていたくないという気持ちを抱かせること。「不倶戴天の敵」は、小説やアニメでもひんぱんに使われる決まり文句だよ。

虫が好かないの「虫」は昆虫のことではないよ。昔の人は、人間の体の中に気分や感情を左右する「虫」がいると考えていたんだ。だからお腹が鳴ることを「腹の虫が鳴る」と言うし、なんとなく予感がすることを「虫の知らせ」とも言うんだね。

「好き」のページで紹介した、気に入るの反対は、もちろん気に入らないになる。気に食わない、気に染まないといった言い回しもあるよ。

好物の反対は嫌物とついつい言いたくなるけれど、残念ながらそんな日本語はないよね。苦手や、苦手をさらに強調した大の苦手が反対の意味み合いになるかな。