猪八戒、釣り好きの万年ヒラ社員、大学病院院長、ヤクザとさまざまな役を演じ切ってきた。気づけばドラマデビューから54年経ち、演じる役も年相応になっている西田敏行(73才)。しかし、いま、ドラマで見せる姿は“演技”なのか──撮影現場で見せる名優の「本当の姿」。

 2月中旬、千葉県の公園でドラマ『俺の家の話』(TBS系)のロケが行われていた。主演の長瀬智也(42才)や桐谷健太(41才)ら出演者がせかせかと動き回るなか、車いすに乗ってじっと出番を待つ西田。心なしか疲れた表情を浮かべ、じっと目をつぶったりする西田の周りには大勢のスタッフが張りつき、一挙手一投足を見守る。さながら厳戒態勢──ドラマ関係者が打ち明ける。

「連日、朝早くからスタジオやロケ地での撮影を行っています。西田さんは役柄上、車いす姿で出演するシーンが多いですが、休憩中もずっと車いすに乗ったまま。たまに自分で歩くときは、杖や手押し車がないと厳しそうで、ちょっとした段差でもスタッフやマネジャーが手を貸して上り下りしています。

 長瀬さんが支えて歩くシーンの撮影で、西田さんがよろけて危うく転倒しそうになった。長瀬さんがとっさに抱え込んで事なきをえましたが、スタッフも駆け寄って騒然としました」

『俺の家の話』は、家出してプロレスラーになった長男(長瀬)が、人間国宝の能楽師の父(西田)の介護に奔走するストーリー。西田は入浴介助のシーンでは弱った裸をさらけ出したり、認知症の徴候を見せるなど、体当たりの演技で話題を呼んでいる。

 2月19日に放送された第5話のラストには、農作業姿の田中みな実(34才)が初登場。田中のかわいらしさに相好を崩す西田の姿は、「西田さんの反応がかわいい」「ウチのおじいちゃんみたい」と評判になった。だが現実はドラマ以上にシリアスだ。西田の知人が声をひそめて打ち明ける。

「ドラマでは介護される役割ですが、実はリアルでも西田さんの体は満身創痍で、なかなか思うように動くことができないようです。いざ本番となれば、しっかりとセリフを発するところがプロとしての真骨頂ですが、基本的に収録シーンが終わると、体力維持に努めています。役者人生を懸けて、今回のドラマに臨んでいるように見えます」

吉永小百合から「たばこはやめて」

 西田は福島の中学校を卒業後、役者を志して単身上京。演劇スクールの夜間部を経て、1967年に『渥美清の泣いてたまるか』(TBS系)でドラマデビューした。1978年の『西遊記』、1980年の『池中玄太80キロ』(ともに日本テレビ系)で注目を集め、1988年から始まった映画『釣りバカ日誌』シリーズで国民的俳優に仲間入りした。

 以降、役者としての地位を不動のものにする一方、度重なる病に悩まされた。2001年、脊髄が圧迫され、四肢に痛みやしびれが生じる頸椎症性脊髄症の手術を受けた。2003年には心筋梗塞で倒れ、一時は死の危険もあったが、なんとか一命を取り留めた。2001年から2019年まで、西田が局長を務めた『探偵!ナイトスクープ』(朝日放送)の元スタッフが語る。

「当時の西田さんは1日8箱のたばこを吸うヘビースモーカーで、お酒も大好き。大阪で時間のあるときはスタッフを引き連れ、酒場を何軒もハシゴしていました。心筋梗塞以前から糖尿病や高血圧もあったと聞いています。倒れた後は、西田さんが大ファンの吉永小百合さん(75才)から『たばこはやめてください』とのお手紙をもらって禁煙しました」

 2016年2月には自宅のベッドから転落したことで首を痛め、同年4月に頸椎亜脱臼の手術を受けた。その1か月後には胆のう炎が見つかり、オペに踏み切った。

「頸椎をけがした頃から脚やひざが痛くなって歩くことが難しくなり、普段から杖をついてゆっくり歩くようになりました。いくら隔週での収録とはいえ、東京と大阪の往復は体力的にかなりきついと本人から申し出があり、2019年11月に18年続けた『探偵!ナイトスクープ』を降板しました」(前出・元スタッフ)

 その後も、体調不良が癒えることはなかった。

「いまも持病の糖尿病を治療するため、定期的に都内の病院に通院しています。家庭では奥さんが付きっきりでサポートしていますが、自力で歩こうとすると脚がよろめくこともあります。それでも役者としての動きを少しでも取り戻そうと、空いている時間には都内病院で人目をしのび、リハビリやマッサージをすることがあるそうです。

 リハビリルームは貸し切りにし、リハビリ姿は病院スタッフでも最小限にしか見せない。役者として、役柄のイメージを崩したくないという俳優魂なんでしょう」(前出・西田の知人)

生きている限り役者を続ける

 新型コロナが感染拡大した昨年3月、西田は日本俳優連合理事長として俳優の窮状を訴え、首相らに支援を求めた。

「仕事がなくなっても補償がない俳優仲間を見かねた西田さんがメッセージを出しました。世間からは、『なんで役者だけ』『稼いでいる役者が稼いでいない役者を助ければいいじゃないか』と反発の声があがりましたが、西田さんは未来を担う俳優たちのため、批判を受けながらも主張を続けた」(前出・西田の知人)

 その西田が『俺の家の話』に打ち込むのには理由がある。それは長瀬の存在だ。

「2人は、2005年の『タイガー&ドラゴン』で落語の師弟関係を演じ、2010年の『うぬぼれ刑事』(ともにTBS系)では親子役を演じました。長瀬さんは人間味あふれる西田さんを尊敬し、『また息子を演じられて本当にうれしい』と11年ぶりの親子共演を心から喜んでいました」(前出・ドラマ関係者)

 オファーを二つ返事で受けた西田は、長瀬との共演に並々ならぬ決意で臨んでいる。

「長瀬さんは3月末でジャニーズ事務所を退所して裏方に回ると報じられ、今作が最後の作品、そして西田さんとも最後の共演になるかもしれません。西田さんは2人でもう一花咲かせようと気合を入れて撮影に臨んでいます」(芸能関係者)

 西田は、ドラマで脚本を担当する宮藤官九郎(50才)との『CREA』(2021年1月号)での対談でこうも語った。

《宮藤さんのホン(脚本)で長瀬くんと組ませてもらうっていうのが一番、俺にとっては理想に近いかたち》

 前出のドラマ関係者が、西田の名演について語る。

「今作の西田さんの役は、年齢を重ねて体が弱ってきた西田さんに対する“あてがき”です。体調不良や入退院を繰り返した西田さんに無理をさせず、ありのままの姿を出せるよう、介護されるリアルな高齢男性の役にした。車いすの役でなければ、ドラマ出演も難しくなってきているんです。西田さんが裸になるシーンは、ごまかさない素の姿を見せるための演出だそうで、西田さんはそれに応えました」

 西田は、著書『役者人生、泣き笑い』でこう述べている。

《幸か不幸か、役者には定年がないので、生きている限り役者稼業を続けて行くつもりです》

 長い役者人生のなかでいまが最も素に近く、最も輝いているときかもしれない。

※女性セブン2021年3月11日号