4月11日から放送開始の探偵ドラマ『ネメシス』(日本テレビ系)で、俳優の櫻井翔とダブル主演を務める女優・広瀬すず(22)。これまで様々な映画やテレビドラマに出演し、多数の受賞歴を持つ実力派女優だが、世間から“演技派”と呼ばれることはあまりない。だが、その力は業界で高く評価されているようだ。

 もともと10代女性向けファッション誌『Seventeen』の専属モデルとして2012年にキャリアをスタートしたこともあり、その類い稀な美貌は折り紙つきだった。テレビCMで活躍する姿に魅了されたファンも少なくない。だがそのことがかえって、“演技派”としての側面を覆い隠してきてしまったのかもしれない。

 2013年にテレビドラマ『幽かな彼女』(フジテレビ系)で女優デビューを飾った広瀬は、同年に『謝罪の王様』で映画にも初出演。世間から注目を浴びたのはその2年後、2015年に連続ドラマ『学校のカイダン』(日本テレビ系)で初主演を務めた時だろう。

 同じく2015年には、カンヌ国際映画祭コンペティション部門に出品された是枝裕和監督の映画『海街diary』に出演。綾瀬はるか、長澤まさみ、夏帆ら先輩女優たちと“四姉妹”を熱演した広瀬は、ほぼアドリブでの演技にも挑戦し、日本アカデミー賞をはじめ多数の映画賞で新人賞を受賞した。

 その後も数多くの映画賞を受賞してきた広瀬。昨年は主演映画『一度死んでみた』で日本アカデミー賞の優秀主演女優賞を獲得。今年に入ってからはドラマ『桶狭間 OKEHAZAMA〜織田信長 覇王の誕生〜』(フジテレビ系)で時代劇に初挑戦するなど、新境地も開拓し続けている。

 そんな広瀬すずの演技について、世間のイメージとは裏腹に映画監督からは高い評価を受けていると、テレビウォッチャーでコラムニストの飲用てれび氏は語る。

「世間的なイメージとしては、広瀬すずに“演技派”のイメージはあまりないように思います。しかし、是枝裕和や李相日、坂元裕二といった世評の高い監督や脚本家の映像作品のほか、野田秀樹の舞台作品にも出演しています。

 特に是枝監督の広瀬の演技への評価は高く、NHK『あさイチ』に出演したときは彼女のことを『ひとりで立ってる子』『なにものにも寄りかからずに、誰かに媚びることもなく、おもねることもなく、自分の足でちゃんと立ってる』と評していました。

 そんな『ひとりで立ってる子』の孤独と自律がない交ぜになったような佇まいを感じさせたものとして、個人的にはドラマ『anone』での抑えた演技が印象的です」(飲用てれび氏)

 坂元裕二が脚本を務めた2018年放送のドラマ『anone』(日本テレビ系)で、広瀬はネットカフェで寝泊まりする主人公を演じていた。彼女にとっては10代最後の主演連続ドラマであり、同年には芸能界デビューのきっかけとなった『Seventeen』の専属モデルも卒業。転機となった1年でもあっただろう。

 実力を十分に備えた広瀬すず。世間に“演技派”としてのイメージが定着するにはどのようなきっかけが必要なのだろうか。飲用てれび氏は次のように指摘する。

「彼女があまり“演技派”と見られないのは、“アイドル女優”というイメージが強いためかもしれません。海外で賞を獲った作品に出演するといったインパクトがあると世評も変わるのかもしれませんが、出演作品と年齢を積み重ねることで、自然と評価が追いついてくるようにも感じます」

 11日からスタートする主演ドラマ『ネメシス』は、数多くの賞を受賞した2009年の映画『SR サイタマノラッパー』を手がけたことでも知られる入江悠が総監督を担当。映画ファンからも期待が寄せられている作品だ。広瀬すずが“演技派”と呼ばれるようになる日が来るのは、時間の問題なのかもしれない。

◆取材・文/細田成嗣(HEW)