熱戦が繰り広げられる東京五輪では、選手だけでなくキャスターたちもしのぎを削っていた。各テレビ局のキャスティングは吉と出るか、凶と出るか。大物司会者から、元アスリートまで、仕事ぶりを徹底評価する。

「まさか、こんなところで“五輪史上初”の記録が出るとは思いませんでしたよ……」

 日本テレビの関係者が頭を抱えるのも無理はない。事件が起きたのは、開会式翌日の7月24日。スペシャルサポーターを務めるくりぃむしちゅーの上田晋也(51才)の新型コロナウイルス感染が発覚したのだ。前日の23日、上田は国立競技場の記者席で開会式を取材していた。

「上田さんは各選手のプロフィールから競技の細かなルールまで非常によく勉強していただけに、かなり落ち込んでいるといいます」(日本テレビ関係者)

 濃厚接触者はいないとのことだが、局の顔が欠けるという一大事。しかし、代役を立てる予定はないという。

「回復を待つということになっていますが、実際のところほかに選択肢がないんです」(前出・日本テレビ関係者)

 競技会場に立ち入るには、IOCに対して事前に「アクレディテーション申請」を済ませ、承諾を得る必要がある。

「アクレディテーションとは、簡単に言えば入館証のようなもの。各局、五輪番組の出演者分は、事前に申請しています。しかし、このタイミングではすでに申し込みが締め切られているため、代役を立てられないのです」(前出・日本テレビ関係者)

 IOCはメディア関係者のためにワクチンを確保しており、6月下旬から接種を推奨していた。上田は接種していなかったのだろうか。

 所属事務所に問い合わせたところ「7月の上旬に、日本テレビさんで1回目を接種していました。2回目はこれからだったのですが……」とのことだった。

 現場の興奮を伝えるだけでなく、感染対策にも万全を期する必要がある今回の五輪キャスターたち。開幕から1週間が過ぎ、早くも評価が分かれ始めた彼らの裏通信簿を公開する。

 テレビ朝日でメインキャスターを務めるのは、元テニス選手で3度、五輪に出場している松岡修造(53才)だ。冬季も含めると1998年の長野五輪から数えて12度目の五輪取材となる大御所だが、いまもなお現場で取材する姿が目立つ。

「松岡さんはコロナ禍での五輪開催が本当に選手のためになるのか、と葛藤を抱えていたようです。今回は、勝ち負けだけではなく、どうやってコロナ禍で練習を重ね、五輪の舞台に挑んだかを焦点に取材をしたいと熱く語っていました」(テレビ朝日関係者)

 自身も元アスリートだけあって、選手への気遣いは群を抜いている。

「24日、競泳女子400mリレーの日本代表が惜しくも予選敗退。悔しそうな表情を浮かべる選手たちに向かって、松岡さんはまず『皆さんはすべてを出したと思っています』と声をかけました。さらに、『終わってしまったことはどうにもならない』と険しい顔をする酒井夏海選手には『笑顔がいちばん似合いますよ』と思いっきりエールを送った。ストレートに励ます、というのは誰にでもできることではないですよね」(前出・テレビ朝日関係者)

 元NHKアナウンサーで『サンデースポーツ』などを担当し、五輪取材経験も豊富な中村克洋さん(70才)は、松岡の観察力をこう評価する。

「松岡さんは勢いや熱意だけが注目されがちですが、海外で活躍していたテニス選手だけあって語学力が抜群。7月25日の競泳取材では、米・NBCが英語で池江璃花子選手にインタビューしている様子に耳を傾け、『海外の選手が(池江選手に)いろんなメッセージをくれたんだって。世界のスイマーの友達から思いを感じつながっているんだと思いました』と述べていました」

 テレ朝に修造あれば日テレに有働あり。そう言いたくなる安定感を放つのが、日本テレビスペシャルキャスターの有働由美子アナ(52才)だ。有働アナの真価はインタビューにあると、日本テレビのスポーツ番組関係者はうなる。

「事前番組では、柔道の井上康生コーチに対し、“当時(井上の選手時代)、私たちがつきあっている説があったの知ってますか”と切り込んでいて驚きました。今回の五輪ではこれまで以上に突っ込んだ取材をしたいと思っているようです」

 上田が新型コロナ感染で欠けてしまったいま、有働アナと共に五輪取材にあたるのは明石家さんま(66才)だ。

 会期中は15時間以上もテレビに張り付き、選手よりもキャスター観察に精を出すという、テレビウオッチャーの今井舞さんは、彼をこう批評する。

「メインキャスターの明石家さんまは正直、キャスターではなく、お笑い番組の司会者。今回は判定不能です」

 確かに、7月19日に放送された『さんま×上田×有働! 今だから話します キャスター大集合SP』(日本テレビ系)で、さんまは奔放な発言を繰り返していた。陸上の桐生祥秀選手に対して「引退する覚悟でいくんだ?」と質問。桐生選手が引退を否定した後も「まだしないんだ?」と笑いながら畳みかけた。

「スポーツ選手のことも、お笑いショーの素材としか思っていないのでしょうね」(今井さん)

 日本テレビの報道番組『news zero』のキャスターで、6度の五輪取材がある櫻井翔(39才)。今回はNHKの顔を務めている。そのリポート力に前出の中村さんは太鼓判を押す。

「“いよいよ国立競技場にオリンピックの息が吹き込まれる”“悔し涙をうれし涙で書き換えた”など、彼独自の印象的な言葉で表現していた。普段ラップを作っている表現者としての実績が生きていると思います」

 キャスターは、勝者ばかりでなく敗者からも言葉を引き出さなくてはならない。それを難なくこなすのが櫻井と共にNHKの顔を務める相葉雅紀(38才)だ。

「体操の内村航平選手が鉄棒からまさかの落下をしたとき、相葉さんの目は“信じられない”と物語っていました。そして試合直後、内村選手への取材で、あえて結果に触れず雑談から入った。極限の状態で演技することの難しさと、ここ一番に臨んだ選手の気持ちに寄り添っていたのです。キャスターに必要な優しさを相葉さんは充分に持っています」(中村さん)

 2人の頑張りは、現場のスタッフにも目撃されていた。

「相葉さんは現場取材をかなりこなしているし、櫻井さんは新聞を全紙チェックしていて、頭が下がります」(NHK関係者)

ひとり勝ちはあの元サッカー選手

 今回の五輪では、元アスリートもキャスターに起用されている。競泳の北島康介(38才)のほか、マラソンの高橋尚子(49才)や柔道の野村忠宏(46才)、レスリングの吉田沙保里(38才)らも、各局の五輪番組を盛り上げる。そのなかで、最も注目を集めているのは、テレビ朝日でキャスターを務める元サッカー日本代表の内田篤人(33才)だ。

「試合後、選手たちが真っ先に内田さんのところへ駆け寄り、取材予定のなかった森保一監督も内田さんなら、と口を開きました。相馬勇紀選手への取材では『ぼく、彼にドラミちゃんってあだ名をつけたことがあって』と小ネタを繰り出すサービスも。さわやかなスーツ姿は早くも評判で、今後、出番が増えそうです」(前出・テレビ朝日関係者)

 初めての五輪取材だが、メインキャスターとして挑んでいるのが関ジャニ∞の村上信五(39才)。開幕までも『村上信五のスポーツ奇跡の瞬間アワード』(フジテレビ系)などの番組で経験を積んできたが、そこで垣間見えたのは勉強熱心な横顔だった。

「選手にインタビューをするときには事前に資料を渡すのですが、もっとたくさんの資料をもらえないかとリクエストされることが何度もありました」(フジテレビ関係者)

 今回、フジテレビは映像演出に活路を見出したようだ。セットに都内の景色が映し出され、バーチャル映像内で村上らが各競技場まで移動する。派手な演出に今井さんは首をかしげる。

「他局のようにベテラン人材を確保できなかったので、“みんなと違う方向で頑張るぞ!”といったところでしょうか。正直、何をやっても外すフジテレビ、という印象です。あの映像も何かの役に立つわけでもなく、ただ乗り物酔いするだけ」(今井さん)

 一転、地味に伝えると覚悟を決めたのはTBS。キャスターは安住紳一郎アナ(47才)だけだ。

「派手な演出を遠ざけたのは安住アナの意向だったと聞きます。競技のことだけをシンプルに伝えたいという考えのようです」(TBS関係者)

 テレビ東京は五輪においても“らしさ全開”だ。小泉孝太郎(43才)が3回目のメインキャスターで、武井壮(48才)がサブキャスターというコンビは独自の戦いを展開している。

「前回の五輪の際、中継トラブルで音声だけが届かなくなったことがありました。小泉さんは同じトラブルに備え、読唇術を学んだそうです」(テレビ東京関係者)

 しかし、前出の今井さんは小泉に手厳しい評価を下す。

「スタジオで一緒にキャスターを務める女性アナウンサーも経験が浅いのか、上手く間をつなげていない。結果、小泉のつたなさが露呈しています。張り付いた笑顔の小泉と、爪痕を残そうとグイグイ前のめりになる武井壮とのコントラストが目に染みます」

 まだ前半戦が終わったばかり。後半の戦い次第では、思わぬ勝者が生まれるかも。

※女性セブン2021年8月12日号