昭和の偉大な作曲家である筒美京平さん。松本伊代が日本レコード大賞をはじめ多数の新人賞を受賞した『センチメンタル・ジャーニー』も、筒美さんの作曲だ。今年デビュー40周年を迎えた松本が、思い出の曲について振り返った。

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 筒美京平先生のお名前は、歌番組で表示される作曲家のクレジットで知りました。父が好きだった尾崎紀世彦さんの『また逢う日まで』をはじめ、多くのヒット曲を書かれていて「すごい人だなぁ」って。ですからデビュー曲『センチメンタル・ジャーニー』(1981年)を作曲していただけると知った時はとても嬉しかったことを憶えています。デビューにあたっては先生のピアノで歌のレッスンを受けましたが、終始穏やかな物腰で子供だった私にも優しく接してくださって。

 湯川れい子先生の詞を初めて見た時は驚きました。私は自分のことを「伊代は〜」と名前では呼ばないので、ちょっと不安だったのですが、京平先生のメロディに乗せて歌い始めたら、気恥ずかしさは消えました。詞にメロディがはまっていたので違和感なく歌えたんです。先生の偉大さを最初に感じた瞬間でした。

 私はずっと自分の鼻声にコンプレックスを持っていたんですね。でも先生はその声を個性として見抜いて、約30曲も提供してくださった。2004年にCD-BOXを出した時は「実にユニークな響きのある声。平山みき、郷ひろみとともに私の好きな三大ボイスの1つです」というコメントまでいただいて。私の声が魅力的に聴こえるような曲をたくさん作ってくださったことに感謝しています。

 先生の曲って、すべてがサビというか、どの部分を聴いても印象に残るメロディだと思います。先日、あいみょんさんが好きな曲の1つに『センチメンタル・ジャーニー』を挙げてくれましたが、私が若い人にも知られているのは先生のおかげ。20歳から数年間、大人になろうとして歌うのを封印した時期もありましたけど、これからは先生から贈られた宝物として、いくつになっても歌い続けていきます。

【プロフィール】
松本伊代(まつもと・いよ)/1965年生まれ、東京都出身。1981年『センチメンタル・ジャーニー』でデビューし、各新人賞を受賞。現在はバラエティでも活躍中。今年デビュー40周年を迎える。

取材・文/濱口英樹

※週刊ポスト2021年8月13日号