臨床心理士・経営心理コンサルタントの岡村美奈さんが、気になったニュースや著名人をピックアップ。心理士の視点から、今起きている出来事の背景や人々の心理状態を分析する。今回は、自身が司会を務める番組で度々発言が炎上している俳優の谷原章介(49才)について。

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 今ではすっかり司会者の印象が強い俳優の谷原章介さん。今年の3月から朝の情報番組『めざまし8』(フジテレビ系)のメインキャスターを務めて半年近く、月曜から金曜の午前8時にチャンネルを合わせると、爽やかな笑顔を届けてくれている。

 高身長に甘いマスク、今時の個性的なイケメン俳優たちとは一線を画した正当派二枚目俳優の谷原さん。品があって穏やかで人当たりも良く親しみやすい。すっきりしていて嫌みもなければアクもなく、言うなれば時代劇ならお殿様役やお公家様役がぴったり似合うイケメンだ。低音ボイスだが声音は穏やかで柔らかいため、耳当たりが良く聞きやすい。

 6人の子供がいる大家族の父で、6月に第40回ベスト・ファーザー「イエローリボン賞」を受賞した時は、高校2年の時に父親に買ってもらったというブレザーを着用、家族を大切にする家庭的なイメージも強い。

 だがその反面、私個人としては谷原さんにそんなイメージや先入観を持っているせいか、残念なことに、悪役を演じても極悪には見えず、どんなに冷たい役を演じても冷酷には思えなかった。どんな役もそれなりに卒なく演じてしまうため、尖がったり突き抜けたりした印象がなく、インパクトが弱かったのだ。

 これまで土曜日の情報番組『王様のブランチ』(TBS系)のMCを10年間務め上げ、『うたコン』や『きょうの料理』(NHK系)でもナビゲーターや司会として活躍。9月に終了が発表された長寿番組『パネルクイズアタック25』(テレビ朝日系)でも司会を務めたが、どれも谷原さん個人が飛び抜けて目立っていたというわけではないだろう。

出演者の個性を生かし、番組を卒なくまとめていた。司会者として評価が上がったのは、視聴者が聞きたいと思うことや、聞きたい言葉を話してくれ、聞きたいコメントを出演者から引き出してくれるという「話し上手と思わせる心理」があったからだと思う。

 ところが、どうも『めざまし8』の谷原さんはこれまでとは違うらしい。これまでのような“卒なく無難に”とは逆を行き、同番組での谷原さんの発言が、度々「プチ炎上」しているというのだ。

 例えば、テニスの大坂なおみ選手が全仏オープンで記者会見を拒否した際、谷原さんは「記者会見で話していただきたい」とコメントし炎上。大坂選手がうつ病に悩まされていたことを告白し大会そのものを棄権すると、番組内で謝罪する事態となった。6月にも、よゐこの濱口優と南明奈夫妻の第1子が死産したことについて、「誤解を招くかもしれませんが」と前置きした上で、「自然の流れ」とコメントし批判が殺到した。

 ジェシー・S・ニーレンバーグ著『「話し方」の心理学―必ず相手を聞く気にさせるテクニック』(日本経済新聞出版)には、「人は、正しい言葉を使えば自分の言いたいことがまちがいなく相手に伝わるという幻想を抱いている」と書かれている。SNSが普及し、炎上する度にネットでは「空気を読めない」、「思ったことをそのまま口に出す」と叩かれ、どんなコメントが正解だったのか、見えてこないことも多い。

 忙しい朝は何かをしながら、番組を聞き流してしまう人も多くなる。そのうえ谷原さんの声は、聞き心地が良く邪魔にならない、すんなり耳に入ってくる声だ。そんな時、相手の頭を働かせるためには、「自分の考えを表に出し、それについて相手が考えるように刺激を与える」ことが必要だとニーレンバーグはいう。視聴者の注意を番組に向けてもらい、さまざまな問題意識を投げかけるには、感情や考えをストレートに発信するというMCとしての彼なりの意図もあったのかもしれない。それも番組を成立させるための一つの方法なのだろうか。