今、テレビ業界では「土日朝」の動きに注目が集まっている。人気ロケ番組のスピンオフが相次いで進出しているのだ。その背景について、コラムニストでテレビ解説者の木村隆志さんが解説する。

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 16日(土)、朝5時30分から『あさモヤさまぁ〜ず2』(テレビ東京系)がスタートしました。この番組は『モヤモヤさまぁ〜ず2』(土曜23時〜)のスピンオフ企画。つまり土曜は5時30分〜と23時〜の2回、『モヤさま』を楽しめることになります。

 さらに、さかのぼること半年前の今年4月、『バナナマンの早起きせっかくグルメ!!』(TBS系)がスタートしました。こちらは日曜の朝6時〜放送されている番組で、『バナナマンのせっかくグルメ!!』のスピンオフ。やはり、日曜は6時〜と20時〜の2回、『せっかくグルメ』を楽しめることになっています。

 土日という休日の朝になぜ各局のロケ番組が進出し、1日2回放送という異例の放送編成になっているのでしょうか。

朝番組ならではのメリットがズラリ

 最初に挙げておきたいのは、朝も夜と同様に視聴者が食事をする時間帯であること。

ロケ番組の中心はグルメであり、放送時間はちょうど視聴者の朝食にあたるタイミング。それは「美味しいグルメを観てお腹を空かせてみなさんに最高の朝ごはんを食べてもらう番組」という『早起きせっかくグルメ』のコンセプトからもうかがえます。

 また、「夜よりも朝のほうがフィットする町、店、食、モノ、人がある」ことも、朝のロケ番組が増える理由の1つ。『あさモヤ』は「本編とは違う街を歩く」ことを明言していますし、1日2回放送で飽きられる不安より、別のものを見せられる期待のほうが大きいのでしょう。

 夜の時間帯ではチャレンジできない企画を気軽に試せるのも朝の強み。すでに放送されている『早起きせっかくグルメ』では、「写真で空腹!せっかくフォトグルメ」「美味しい朝ごはんの食べ方をバナナマンに教えて」「せっかく宿の朝ごはん」などの朝限定企画を放送していますし、MCの設楽統さんも「この番組は新企画だらけ」と語っています。

 一方、『あさモヤ』を手がける伊藤隆行プロデューサーも、「起きたときにあの空気感でやっているのは、もしかしたら面白いのでは。『あの枠(朝の時間帯)で遊ぶ』っていうのは、制作者としてけっこうワクワクすることではあります」などのコメントを発表していました。

 さらにもう1つ、民放各局の動きとして挙げておかなければいけないのは、「番組のブランドを有効活用しよう」という姿勢。『モヤさま』は2007年のスタートから15年目、『せっかくグルメ』は2015年スタートから7年目と視聴者の認知度が高い番組だけに、自局の看板として前面に押し出していくことはビジネスとして当然でしょう。

 ネットコンテンツとの争いに勝つために「自局のブランドをどう生かしていくか」は各局の課題であり、収録の効率化、セットの有効活用などのメリットもあるため、今後も増えていくかもしれません。

土日朝はロケ番組のゴールデンタイム

 あまり知られていませんが、もともと土日の朝には多くのロケ番組が放送されています。

 土曜朝は情報番組の中でロケコーナーを放送したあと、8時台から『朝だ!生です旅サラダ』(ABC・テレビ朝日系)、『土曜はナニする!?』(関西テレビ・フジテレビ系)、『ぶらり途中下車の旅』(日本テレビ系)、日曜朝も『遠くへ行きたい』(読売テレビ・日本テレビ系)などが放送されています。

「もともと休日の朝はロケ番組を楽しむ人々がいる」「起床時間の早い中高年層が人口比率的に増えている」という理由に加えて、健康志向の高まりなどから「若年層の視聴者が増えている朝の番組がある」という話も聞きました。朝の番組にこれまで以上のビジネスチャンスが生まれているのでしょう。

 もちろん「1日2回見てもらう」という熱心なファンが多いのがベストですが、「朝だけ、夜だけ見る」という人々が多くても、それはそれでマンネリ化を防げるというメリットもあり、失敗のリスクは低いところもポイントの1つ。加えてバナナマン、さまぁ〜ずという幅広い世代からの知名度が高いMCがいる『早起きせっかくグルメ』『あさモヤ』は、朝を代表する番組となっていくのではないでしょうか。

【木村隆志】
コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者。雑誌やウェブに月30本前後のコラムを提供するほか、『週刊フジテレビ批評』などの批評番組に出演し、番組への情報提供も行っている。タレント専門インタビュアーや人間関係コンサルタントとしても活動。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』『話しかけなくていい!会話術』『独身40男の歩き方』など。