ドラマの主演とせりふがほとんどないチョイ役。いまから14年前に、そんな立場で出会った同学年の2人の俳優。時間の流れと共に演者としては肩を並べるまでになった。親友でありライバルでもある両者の関係が大きく変わろうとしている。

 立て続けに首都圏を襲う大きな地震。ニュース速報としてテレビ画面に映し出された島は、崩れ落ちながら海中に消えていった。まさかの日本列島が沈没する物語のプロローグ──。これは10月10日に放送が始まった日曜劇場『日本沈没─希望のひと─』(TBS系)のワンシーンだ。香川照之(55才)をはじめ、杏(35才)、松山ケンイチ(36才)、仲村トオル(56才)ら豪華キャストが顔を揃えるなか、堂々と主役を張るのが小栗旬(38才)だ。

「ドラマ制作費は映画並みの20億円。Netflixで世界にも配信されている大作で、TBS局内からも大きな期待が寄せられています」(ドラマ関係者)

 それだけに、小栗が受けているプレッシャーは相当なものだが、加えて“前任者”の存在がその重圧をさらに大きなものにしているという。8日放送の『A-Studio+』(TBS系)に出演した小栗は、MCの笑福亭鶴瓶(69才)から前クールで同じ放送枠だったドラマ『TOKYO MER〜走る緊急救命室〜』について話を振られると、「超プレッシャーですよね、あんなこと起こると」「超比較対象になるじゃないですか」と愚痴をこぼした。

 何しろ『TOKYO MER』は初回視聴率14.1%からスタートし、最終回では19.5%をマークしている。『日本沈没』は初回の世帯視聴率が15.8%(関東地区)と好スタートを切り、一安心しているかと思いきや、小栗は心中穏やかではないようだ。

「最近の日曜劇場は、放送中にクランクアップを迎えるスケジュールが多かった。『TOKYO MER』もそうでしたし、4月クールの『ドラゴン桜』は最終回放送の前日まで撮影をしていたぐらいです。視聴者の反応をギリギリまで見ながら、脚本などのテコ入れができ、それが高視聴率につながっていました。

 ところが、『日本沈没』は、小栗さんがハリウッド挑戦や来年のNHK大河ドラマ主演と多忙のため、今年の初めにはもう撮影が終わっています。視聴者の反応を見ながらの変更はきかない状況です。さらに小栗さんにプレッシャーを感じさせているのが、『TOKYO MER』の主演が鈴木亮平さん(38才)だということ。最近、彼とは何かと比較されることが多いようなので」(テレビ局関係者)

 小栗と鈴木は共に身長180cm台の半ばで演技派、そして同学年で親友といえる間柄だ。しかし、芸能界での活躍は小栗の方がずっと早かった。小栗は15才で大ヒットドラマ『GTO』(1998年・フジテレビ系)に出演して注目を浴びた後、演出家の蜷川幸雄さん(享年80)の舞台に上がり、演技を磨く。そして『花より男子』(2005年・TBS系)でブレークするや、多くの人気ドラマや映画で主役を務めてきた。そんな小栗の背中をはるか後方から追いかけてきたのが、鈴木だった。

「鈴木さんは2007年の小栗さん主演のドラマでデビューし、このとき2人は初めて顔を合わせたそうです。鈴木さんはせりふが1つか2つのチョイ役でしたが、小栗さんは鈴木さんの潜在的な才能を見抜いていた。2010年に小栗さんが監督を務めた映画『シュアリー・サムデイ』に鈴木さんを起用、2013年の映画『HK/変態仮面』で脚本に協力した小栗さんは、“主演は亮平がいい”とアシストしたんです。ほとんど裸の“変態”を演じるということで、多くの役者が出演を躊躇するなか、鈴木さんは二つ返事で受けた。以来、鈴木さんは小栗さんを恩人だとよく言っています」(芸能関係者)

 それから地道に俳優の道を歩み続けた鈴木。愚直な役作りや迫真の演技が評価され、2018年にはNHK大河ドラマ『西郷どん』の主演の座を射止めた。

「この『西郷どん』に小栗さんは坂本龍馬役で出演。重要な役ですが、いわば脇役。初対面のときと立場が逆転しました。小栗さんは来年の大河ドラマ『鎌倉殿の13人』で初主演が決まっていますが、大河では鈴木さんに先を越された。親友として喜びを感じる一方、鈴木さんの“下克上”に内心、焦りを感じていたかもしれません」(前出・芸能関係者)

渡辺謙が後継者に推したのは

 もう1つ、小栗が焦燥感に駆られる出来事が起きていた。それは、小栗にとってハリウッド初進出作となった、映画『ゴジラVSコング』(日本公開は今年7月)への出演だ。

「小栗さんが演じたのは、ハリウッド版『ゴジラ』シリーズで、前2作で渡辺謙さん(61才)が演じた博士の息子という重要な役でした。小栗さんは所属事務所のバックアップの下、語学留学を経て、英語力をつけて万全の態勢で挑んだ。ところが、蓋を開けてみると、登場シーンは大幅カット、白目をむいた顔をアップで抜かれるシーンでは劇場から失笑が漏れるなど、面白キャラ扱い。これには小栗さんも心を痛めていたようですよ」(映画配給会社関係者)

 小栗にとってハリウッド進出は悲願だった。小学校の卒業文集に「夢はハリウッド」と綴り、中学時代には「アメリカでの経験を生かして日本で制作者」になる、とより具体的なものになっていた。2019年の夏にはロサンゼルスに居を構え、家族と共に渡米。本格的にハリウッド俳優の仲間入りを果たすはずだったのだが……現実は甘くなかった。

「不自然に出番が少ないうえに、正直、浮いているところもあったと感じます。製作側が演技よりもアクションを重視する方針に変更したこともあり、いつもの小栗さんのような存在感はありません。小栗さんの意欲が空回りした印象です」(映画ライターの前田有一さん)

 一方の鈴木は東京外国語大学卒で英語とドイツ語を流暢に操るトリリンガル。彼も「海外での活躍」を望み、昨年はついにハリウッドへの足がかりを掴んだ。鈴木は渡辺謙が出演し、製作にもかかわるハリウッドとWOWOWの共同制作ドラマ『TOKYO VICE』への出演が内定していた。

「渡辺さんが以前から高く評価していた鈴木さんを猛プッシュして、出演が決まっていました。ただ、コロナの影響で同作の制作は延期。スケジュールが合わなくなり、鈴木さんのハリウッドデビューは“幻”となってしまったのです。しかし、渡辺さんが“ハリウッドの後継者”として鈴木さんを推していた、というのが垣間見えました」(前出・映画配給会社関係者)

 もし鈴木がハリウッド作品に出演できていたら、完全な下克上となったかもしれない。とはいえ、小栗が日本を代表するトップ俳優であることは変わらない。どちらが先に国際俳優として名を上げるのか。映画評論家の秋本鉄次さんは、こう分析する。

「アメリカで成功する日本人俳優は無骨でちょっとミステリアスな雰囲気を持っているタイプ。小栗さんよりも鈴木さんの方がそういう役をこなせる気がします。彼が演じる役の“ギャップの激しさ”や狂気的な演技はアメリカでも通じるでしょう。小栗さんは、高い演技力と日本人的な色気が武器ですが、それは海外で理解されるまで時間がかかりそうですね」

 世界配信される『日本沈没』で、小栗の面目躍如となるか。

※女性セブン2021年10月28日号