清原果耶主演のNHK連続テレビ小説『おかえりモネ』。10月末の最終回まで2週間を切り、今後の展開に注目が集まっている。コラムニストのペリー荻野さんが、今までの朝ドラとは違う『おかえりモネ』の魅力について綴る。

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 長年、NHKの朝ドラを見ていて、『おかえりモネ』は、これまでの作品とは何かが違うと感じてきたが、ここへきてやってとわかった。

 ヒロイン・百音(清原果耶)の話し方が、とても小声に聞こえるということだ。実際には、言葉はよく聞き取れるし、なんたって気象キャスターやラジオのパーソナリティになるんだから、話し方が落ち着いているのはいいことなのだが、妹の未知(蒔田彩珠)もまた、小声系なので、余計に静かな感じがするのである。
 
 先週、姉妹は大変だった。地元のラジオで天気予報を続ける百音は、数時間後、海が大荒れになると予測。船は次々戻ってきたが、百音の幼なじみで未知が思いを寄せる亮(永瀬廉)の船だけ安否不明になってしまう。心配でたまらない姉妹のところに亮の船の無事だったと連絡が入る。百音が「よかった…」「みーちゃん、港へ行って来たら」と声をかけると涙を流す未知は「ん…」と席を立つ。

 危機のあとの朗報。民放のお仕事ドラマなどであれば、ファンファーレのような元気な曲が流れて、登場人物が雄たけびのような喜びの声をあげ、ガッツポーズを作ってもおかしくない場面だが、このドラマの雰囲気は正反対。ふたりはまるで心で会話しているようだ。ささやくような姉妹の会話は、耳を澄まして聴く視聴者の胸をそっと打つのである。

 百音・未知姉妹の静かさに驚くのは、今、BSプレミアムで1979年の朝ドラ『マー姉ちゃん』が再放送されているからかもしれない。長谷川町子の『サザエさん うちあけ話』をもとに磯野家の母とマリ子(熊谷真実)、マチ子(田中裕子)、ヨウ子(早川里美)の三姉妹の日常を描くというこの物語。三姉妹はよくしゃべり、よく笑う。

 今週は一家が福岡から東京へ引っ越すという話なのだが、大勢にわーわーと見送られ、列車に乗った姉妹は「いよいよ東京へ行くとやねえ」「うちも東京へいくとやもん!!」と大喜び。このまま東京へ一直線…かと思ったら、途中下車して大坂城を見物して「お城って大きい」なんてことを言っている。のんきで陽気なのだ。他にも宮崎あおいの『純情きらり』、三倉茉奈・佳奈の『だんだん』など、個性的な姉妹が朝ドラにはいろいろ出てきたが、モネと未知のような、ささやき姉妹は新しいタイプだと改めて思う。

思えば、清原果耶は、2019年のドラマ『蛍草 菜々の剣』(原作・葉室麟)でも、父と自分が仕えた主人の敵と戦うために、剣の腕を磨く娘・菜々を演じた。女剣士といえば、きりりと袴をはいて勇ましい声をあげるのが定番だが、前掛けをした菜々はおっとりした泣き虫。もちろん、声もささやき系。それでもこどもたちや長屋の仲間、道場の師範に助けられ、黙って剣をとるのだ。若い娘が、死ぬかもしれない一騎打ちに「静かに」立ち向かう。女剣士としてもニュータイプを見た気がしたし、泣かされた。

『モネ』では、ささやき姉妹とは対照的に、いつも明るく「大丈夫」と元気のよかった亮が、本音ではちっとも大丈夫じゃなかったことがわかった。心に痛みや悩みを抱えているのに、無理に大きな声で元気よく見せなくたっていい。これは、このドラマの大事なテーマのひとつなのだ。