ラグビーW杯日本代表の注目選手と見どころを識者が徹底解説

ラグビーW杯日本代表の注目選手と見どころを識者が徹底解説

「4年に1度じゃない。一生に一度だ」をキャッチコピーに開かれるラグビーワールドカップの日本大会。長い人生で1度きりの自国開催ならばぜひとも日本代表の選手を応援したいが、ラグビーはどうもわかりにくいという人も多いはずだ。そこで本稿では初心者でも一目でわかるように日本代表の注目選手を紹介しよう。

 ラグビーとは、防具をつけない生身の人間がルールに則って楕円球を奪い合い、自陣から敵陣に攻め入ることを目的とする陣取り合戦である。

 体格で外国に劣る日本は、いったんプレーが止まった後に選手が集まってプレーを再開する「セットプレー」で確実にボールを保持したい。とりわけ8人のフォワードが一塊になって組み合う「スクラム」で押し込まれることなく、いかに攻勢を保つかがポイントとなる。

 そこで大きな役割を果たすのが、スクラムの先頭に位置するプロップとフッカー。中でもスポーツライターの藤島大氏が期待するのは韓国出身の具智元(グ・ジオン)選手だ。

「ルーツは韓国ですが、中学3年生の時に大分県の公立中学に編入してから日本で育った“ホームグロウン”の選手です。身長184センチ、体重122キロながら50メートルを7秒02で駆け抜ける俊足と、元ラグビー韓国代表で『アジア最強プロップ』と呼ばれた父の血を受け継ぐスクラムの強さが最大の武器。日本の生命線であるスクラムのカギを握るひとりです」(藤島氏)

 具選手が先発した9月6日の南アフリカとのテストマッチで、日本は世界最強レベルのフォワードを相手に安定したスクラムを見せた。本大会での日本代表の躍進を実感させる出来栄えだった。
 
 プレーが続いている間に、ボールを持って突進する、味方のボールをキープする、相手のボールを奪い取るといったハードワークを求められるのがフランカーとナンバーエイト。激しいボール争奪戦の要となるポジションだが、日本代表キャップ(出場数)30を誇る大八木淳史氏が「やってくれる」と断じるのは若手ナンバーワンの呼び声高い姫野和樹選手だ。

「身長187センチ、体重108キロでベンチプレス180キロ、握力80キロという強靭なフィジカルの持ち主。2メートル級がそろう外国勢と比べると決して大きくないが、ボールを持っての突破は十分に通用します。前回大会の五郎丸歩選手のようなスターになるかも」(大八木氏)

 ボールを持った選手が相手と接触するとごちゃごちゃっとした人の塊(密集)ができる。そこから背番号9をつけたスクラムハーフが素早くボールを取り出し、背番号10のスタンドオフにパスをする。ボールを受け取ったスタンドオフは“攻撃の司令塔”として、別の選手にパスする、キックを蹴る、自らボールを持って走るなどのアタックを選択する。

 日本代表の攻撃の起点となる重要な10番を背負うのは、田村優選手である。

「スキルの精確さは強豪国の同じ背番号に劣りません。日本代表の戦法について、『日本にハマるかどうかより、信じるか信じないかが大切』と言い切るハートの強さも心強い。自分の頭で考えてプレーできることもジャパンの10番としての大きな強みです」(藤島氏)

 田村選手はトライ後に加点を狙うコンバージョンキックや、ペナルティキックも担当する。超満員の観衆が固唾を飲んで見守る中、勝敗を分けるキックを蹴るなんて想像するだけでドキドキするが、経験豊富な田村選手ならきっと期待に応えてくれるだろう。

 フィールドの後方や端に陣取り、味方の後方からアタックに参加したり、自陣の後ろに空いたスペースを守るのはウイングとフルバックの仕事。攻撃ではトライゲッター、防御では最後の砦となり、何かと得失点に絡むことの多いポジションだ。

 ラグビージャーナリストの小林深緑郎氏がチームの命運を託すのは松島幸太朗選手。ジンバブエ人の父親と日本人の母親を持つ松島選手は、日本人離れした身体能力を誇る。

「ほかの選手とは運動神経のレベルが違います。とくに横への動きが素晴らしく、通常ならばトライを取れないような状況でも独特の動きでトライに結びつけます。一時期はケガをしていましたが、最近は完全復調してまさにキレキレです」(小林氏)

 ウイングには50メートルを5秒8で走るスピードスターの福岡堅樹選手もいる。攻撃の“両翼”を担い、相手の防御を突破する能力に秀でた松島選手と福岡選手にボールが多く渡れば、日本のチャンスが格段に広がる。

 ラッキーボーイとなり得るのは念願のワールドカップ初選出を果たした山中亮平選手。長きにわたる紆余曲折を経てメンバー入りした苦労人である。

「高校時代にファンタジスタとして名を馳せたものの、神戸製鋼に入部した直後のドーピング検査で髭を伸ばすため使用した育毛剤が引っかかり2年間の資格停止処分に。本人は退部も考えたが、当時の平尾誠二GM兼監督の『俺が必ず復帰できるようにしてやる』との言葉を支えに謹慎してチームに復帰しました。前回大会は土壇場で代表入りを逃したが、諦めず努力を続けてついにメンバー入り。最近は高校時代の体のキレが戻ってきているので、出場したら活躍してくれるはずです」(小林氏)

 それぞれの体格、能力、特徴に応じた働きが求められところがラグビーの面白いところ。ピッチに立つ日本代表15人の個性が幾重にも織り交ぜられた好ゲームを期待したい。

●取材・文/池田道大(フリーライター)


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