新型コロナ「第3の波」を受け、東京五輪の開催について国民の多くが反対に傾きつつある。荒涼たる風景が広がる競技会場に、これから約半年後、世界中から訪れた大観衆がアスリートに声援を送る光景を想像できるだろうか。

 緊急事態宣言が発令された1月7日、東京五輪・パラリンピック組織委員会の森喜朗会長が「まったく不安はない。準備は全部できている」と断言。その2日前、自民党の二階俊博幹事長も「自民党として、開催促進の決議をしても良いくらいに思っている」と強気の姿勢を崩さなかった。さらに1月12日、菅義偉首相はビル・ゲイツ氏との電話会談で「必ずやり切る」と語ったという。

 だが、共同通信の世論調査で開催反対が80%を超えたと伝わるなど、強硬路線には逆風が吹き荒れている。

 肝心の五輪会場は閉鎖中。どこも雑草が生い茂り、工事の足場などが残されたままのところも少なくない。立入禁止となっているため訪れる人もなく、荒涼とした風景が広がる。世界中から人が集まり、大歓声に沸くスポーツの祭典まであと半年。開催への見通しは全く立っていない中、各五輪会場のいまを歩いた。

【国立競技場】
 1月11日のラグビー大学選手権決勝。東京都の職員が競技場前に並び、「試合後の飲み会ナシ」を来場者に呼びかけた。緊急事態宣言下、大規模イベントの開催要件「最大5000人かつ収容率50%以下」を大きく上回る1万1411人が観戦。観客は検温を受けて入場し、隣同士を1席空けて観戦した。

【海の森水上競技場(江東区)】

 カヌー(スプリント)・ボート会場として新設。大会前の利用可だったが、昨年12月23日より新規受付を中止。中に人影はない。

【カヌー・スラロームセンター(江戸川区)】

 日本初の人工スラロームコースとして2019年7月に完成したが、コース内の水は淀んだまま。

【東京アクアティクスセンター(江東区)】

 立入禁止でひっそりとした同施設の近隣では、少年サッカーの試合が行なわれていた。少年たちの歓声だけが心地よいほど響く。

【選手村(中央区)】

 敷地内は立ち入ることができず、舗装が中途半端な場所もある。コロナ軽症者の一時受け入れの話も立ち消え、今も静かに入居者を待ち続ける。

【有明アリーナ(江東区)】

 新設されたバレーボールなどの会場だが、昨年4月に予定されていたバレーのテストマッチは中止。周囲に人影はほとんど見られない。

【武蔵野の森公園(調布市、府中市、三鷹市)】

 自転車競技のスタート地点として整備。地元住民の憩いの場として親しまれているが、コロナ禍では人出もなく閑散としている。

【有明アーバンスポーツパーク(江東区)】

 自転車競技とスケートボードの会場。仮説スタンドの座席の取り付けはいまだ途中のまま。冬枯れした雑草が寒々しさを際立たせている。

【大井ホッケー競技場(品川区・大田区)】

 楽しげにキャッチボールをする親子の後方から敷地内を眺めると、所々に雑草が生い茂る。一部開放されている公園には、家族連れや犬の散歩に訪れる人が歩く以外、人通りはほとんどない。

【夢の島公園アーチェリー場(江東区)】

 夢の島公園内に整備された会場。19年4月にオープンしたものの、芝生を保全するために広場の一般開放は行なわれていない。

【有明テニスの森(江東区)】

 風に舞った枯れ葉が広大な敷地内を転がっていく。3000人収容の「ショーコート」の中には、大量のフレコンバッグが整然と並べられたままになっていた。

【海の森クロスカントリーコース(江東区)】

 馬術の仮設コースとして整備されたが、いくつか建造物が見えるだけで、その様子は競技場というよりも広大な公園のように見える。

取材・文/小野雅彦

※週刊ポスト2021年1月29日号