二刀流・大谷翔平の快進撃が止まらない。投手としては2勝をマーク、打者としてはホームラン王も射程圏内だ。6月9日(日本時間)のロイヤルズ戦では特大の17号先制ツーランを右翼席に放り込んだ。走塁も超一流で、すでに今季9つの盗塁を成功させている(6月9日現在)。

“走・攻・投”全てのプレーに世界が注目する中、使用する野球用品もスポットライトを浴びている。大谷とアドバイザリースタッフ契約を結び、グローブ、バット、スパイクなどのギアを提供しているのがアシックス社だ。

 前例のない“二刀流”に挑む大谷は、道具にも特別なこだわりがあるという。

「投手のスパイクは右足のつま先部分に強い負荷がかかるため“P革”という補強革をつけるのが一般的です。しかし走塁や打撃も重視する大谷の場合、それではスパイクが重くなり、左右の重量差でバランスが悪くなってしまう。そのためP革はつけず、耐久性があり軽量なポリウレタン樹脂を使った固めのスパイクを採用しています。ソールにもこだわり抜いていて、地面にしっかり力を伝えるために平たいものを選んでいるそうです。

 今季からバットについてもヘッドの重いトップバランスからミドルバランスに変更。素材も柔らかくてしなるアオダモからバーチという固い素材に変えた。今季のホームラン量産は、大谷の細かいリクエストに応えるアシックスの貢献も大きい」(スポーツ紙記者)

 アシックス製品を使用する日本人メジャーリーガーは多い。すでに6勝を挙げ、ナリーグナンバーワン投手との呼び声高いダルビッシュ有や、マリナーズで活躍する菊池雄星も同社のアドバイザリースタッフだ。

「ダルビッシュは高校時代から長く米国ブランドの野球用品を使用していた。しかしメジャー挑戦後にアシックスのスパイクの履き心地に惚れ込んだそうです。ダルビッシュのスパイクは投手専用設計で、親指の付け根部分に斜めの刃がついており、それが軸足で立つ際の安定を高めている。グローブはアシックスの『a』ではなく、ダルビッシュの『D』マークが入った特注品です」(同前)

 アシックスのスパイクと言えば、現役時代のイチローが長く愛用していたことでも知られる(2015年のフロリダ・マーリンズ移籍後はビモロ社のスパイクを使用)。野球界からマラソンランナーまで、精緻なシューズづくりには定評がある。

 その一方で、アシックスブランドのグローブやバットをよく見かけるようになったのは比較的最近のことだ。1976年から2012年まで、アシックス社はメジャーのナンバーワンブランドである米『ローリングス』社と長くライセンス契約を結んできたからだ。

「『ローリングス』は、“オズの魔法使い”の異名を持ち、史上最高の遊撃手と名高いオジー・スミス(カージナルスなどで活躍)や、現役時代の巨人・長嶋茂雄も愛用した野球用グラブの老舗ブランドです。しかし長年、日本での人気はミズノに水をあけられてきた。ヤンキースで活躍した松井秀喜もミズノ製品を愛用していたし、イチローもシューズではアシックスなどを選びながら、グラブに関しては一貫してミズノに信頼を寄せてきたことが象徴的です。

 アシックスは国内最大のスポーツメーカーですが、こと野球に関しては苦戦が続いていた。そのため2012年に米ローリングス社とのライセンス契約を終了し、『アシックス』ブランドを強化していくための作戦に打って出たのです。それがダルビッシュや大谷など“世界的アスリート”との契約につながった」(同前)

 株式会社アシックスは「自社ブランドで商品展開することで、マーケティング投資効率が高まり、強みであるスポーツ工学研究所の知見を生かしやすくなった。それが海外で活躍し、夢や希望を与える選手たちのケガ予防やパフォーマンス向上につながっていることを嬉しく思います」(広報室)と回答した。

 メジャーでは「ローリングス」や「ナイキ」、「ウイルソン」といった米国ブランドがいまだ主流を占めているが、大谷らの活躍でその勢力図が変わる日は来るか。