角居勝彦調教師「3年後の厩舎解散」について自ら語る

角居勝彦調教師「3年後の厩舎解散」について自ら語る

 JRAの調教師は70歳が定年となっている。過去健康上の理由や経営不振などで早期に退職した例もある。しかしこれだけの好成績を残した調教師が、定年まで10余年を残して競馬界から去るというのは極めて異例のことだ。週刊ポストの人気連載「角居勝彦 感性の法則」で角居氏自身が1月6日に大きく報じられた「3年後の厩舎解散」について説明する。

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 正月早々お騒がせしました。でも、発表が正月早々でなければならなかった理由があります。

 角居厩舎では早い時期、ときには生まれてすぐ「この馬を預かってほしい」といわれるケースも多い。昨年生まれた現1歳馬はすでに何頭か預かることが決まっています。その彼らとクラシック戦線を共に闘うのを最後にしようと決めました。2020年、東京五輪の年になります。

 年が明けて馬産地ではすぐ出産がはじまりますが、その子たちがクラシックシーズンを迎える前の2021年2月に、角居厩舎は解散します。それで、このタイミングでの発表になったわけです。

 角居家は祖父母の代から天理教を信仰しています。私も調教師になったときから、いつかは実家に戻って天理教の仕事に就くと決めていました。石川県輪島市に祖母のつくった布教所があり、母が継いでいたのですが、昨年体調を崩してしまいました。地元の信者の方々が守ってくれていたのですが、みなさん80歳をこえてきているので、なんとかしなければとずっと考えていたのです。引退後はそこの所長というかたちで、金沢市にある直系の大教会の指示を受けながら布教活動を行なっていくことになると思います。

 あと3年の調教師生活となりますが、馬に対する姿勢がこれまでと変わることはありません。1歳馬に関しても、クラブ・個人ともお付き合いのあったオーナーから、お預かりするのが4歳2月までであるということに対する了解をいただければお受けします。

 引退を発表したことでモチベーションが落ちるのではないかとの危惧があるかもしれませんが、私としてはむしろその逆。「あと3年」と期限を区切ったことで、これまで以上に、感性を研ぎ澄ませ、馬の才能を引き出したいと思います。「苦手」といわれる短距離(笑い)にもチャレンジしていきたいし、牡馬でダービーも取りたいし、年度代表馬などJRA賞も狙っていきたい。なので、今まで通りの応援をお願いします。この連載も、しばらくは続けさせていただくつもりです。

 厩舎スタッフには昨年の秋に解散する予定を伝え、転職の希望も受け付けるようにしました。どこの厩舎に移っても恥ずかしくない仕事ができるはずです。3年の間にフランスに行かせて、ファーブル厩舎流の調教を勉強してもらおうと思います。アンドレ・ファーブル調教師は、過去凱旋門賞を7回も勝ち、数々の名馬を送り出した現代最高の名伯楽です。マニュアルなどではなく、感性を大事にした馬との接し方は、私のお手本としているところでした。

 競走馬の余生を応援する「サンクスホースプロジェクト」は少し軌道に乗ってきましたが、引退までの間に確立させたいと思っています。

 私自身、引退後は競馬に関わることはないと思いますが、現在北海道の牧場で修業中の次男が、競馬サークルを目指して頑張っています。あれこれいうことはありませんが、応援はしてやるつもりです。

●すみい・かつひこ 1964年石川県生まれ。2000年に調教師免許取得、2001年に開業。以後16年で中央GI勝利数24は歴代3位、現役では2位。2017年は13週連続勝利の日本記録を達成した。ヴィクトワールピサでドバイワールドカップ、シーザリオでアメリカンオークスを勝つなど海外でも活躍。引退馬のセカンドキャリア支援、障害者乗馬などにも尽力している。引退した管理馬はほかにカネヒキリ、ウオッカなど。本シリーズをまとめた『競馬感性の法則』(小学館新書)が好評発売中。

※週刊ポスト2018年1月26日号

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