世界のゴルフルール大幅改定 背景に日本の「接待ゴルフ」文化

世界のゴルフルール大幅改定 背景に日本の「接待ゴルフ」文化

 パー4の第2打。取引先の部長が5番アイアンで打ったボールは、スライスして右の林に吸い込まれていった……。

「××部長、とりあえず、行ってみましょう!」。そう盛り上げてグリーン周りに進んでみたものの、右サイドのOBは思っていたよりも浅く、ボールは見当たらない──。

 本来なら約170ヤードほど戻って第2打地点で打ち直しだが、後ろの組はすでにティショットを終えている。部長には1ペナか2ペナでその場から打ってもらいたいが“特別救済”を進言するのは気が引けるし、部長がそれで気を悪くしたりしたら……。そんな“接待ゴルフ”に付きものの悩みが、来年からなくなる。

◆「前4」がなくても安心

 3月12日、R&A(英国ゴルフ協会)とUSGA(全米ゴルフ協会)は2019年1月施行の新規則を発表した。

「今回の改定は、2016年全米オープンで優勝したD・ジョンソンが、“グリーン上でアドレスした後にボールが動いていた”としてホールアウト後のビデオ判定で1打罰を科された一件がきっかけとされています。

“ルールがわかりにくい”という批判が大きくなり、故意に球を動かした場合以外は罰が科されないようになるなど、大幅な改定に至った。変更項目を見ると、アマチュアへの影響が大きそうです」(ゴルフ担当記者)

 たとえば冒頭のケース。これまでならOBを打った“部長”は、「元の位置に戻って(1打罰で)打ち直し」だった。それが「ボールがOBとなった地点付近のフェアウェイに、2打罰で球をドロップできる」ようになるのだ。

「ドロップ」も、これまでのように肩の高さではなく、ヒザの高さからでOKになる。都内に住む50代サラリーマンは変更を歓迎している。

「前進4打の特設ティがないゴルフ場で、お偉いさんがドライバーでOBを連発して気まずい空気になることもなくなる。『OBになったあたりから2打罰』など、若干の後ろめたさを感じながらやっていた“いい加減な処置”も、正式にルールとして認められるから、目上の人に対して勧めやすくなる」

 その他にも変更点は、

●球を探している時などに偶然、球に触ってしまっても無罰(これまでは1打罰)
●グリーン上でピンを抜かずにパットを打ってカップインしても無罰(同2打罰)
●バンカー内でアンプレアブルを宣言した場合、2打罰でバンカー後方からプレーできる(同1打罰でバンカー内にドロップ、もしくは最後のプレー位置に戻る)
●クラブに球が2回当たってしまう「二度打ち」をしても無罰(同1打罰)

 いずれもプロトーナメントなどの競技ゴルフでは滅多に考えられない場面ばかり。明らかに“接待ゴルフ”“カジュアルゴルフ”を想定した変更に見える。ゴルフ評論家の菅野徳雄氏はこう話す。

「変更の趣旨は、複雑だったルールを簡素化して競技時間を短縮し、ゴルフをより気軽に、幅広い層に楽しんでもらおうというものです。ただ、世界各国でゴルフ場事情は大きく違うのに、かなり“日本のゴルフ事情”に合わせた変更になっているのは確かです」

 それゆえ、ルール改定に、“日本の接待ゴルフ文化”の与えた影響が大きかったとみられているのだ。

 R&AとUSGAは昨年3月に一度、“原案”を発表している。その後、同8月までの間に一般からのコメントを募り、それを踏まえた修正が加えられて正式発表に至っている。

「昨年3月の“原案”の時点では、『OBでも打ち直さなくてOK』『ドロップはヒザの高さから』という項目はなかった。これらの追加項目は日本の接待ゴルフ文化と非常に相性がいい。日本のゴルフ場関係者やメーカー関係者の要望で加わったのではないかとみられている」(前出・担当記者)

◆日本のゴルフ場を“救済”

 たしかに「OBの扱い」については、狭い山間部の土地を切り開いてコースを造成し、左右のOBが浅くなっていることが多い日本のコースでプレーする人への影響が大きい。関西のゴルフ場支配人はこういう。

「率直に言って、かなりありがたい。日本では海外と違って、6〜8分間隔で組数を詰め込んでスタートさせるのが常識です。そのなかで“OBの時に戻って打ち直す”というのはなかなか難しい。とにかく進行をスムーズにしたい日本のゴルフ場事情を汲んでもらった改定だと思う」

 ゴルフ業界では、ルール変更のたびに「メーカーの意向」も見え隠れしてきた。

「過去にも、クラブやボールの容量や反発係数などについて繰り返し規則の変更が行なわれてきたが、“買い換え需要”を作り出したいメーカーの意向があったといわれている。

 たとえば高反発ドライバーがルール不適合になれば、所属ゴルフ場の月例などに参加するゴルファーは道具を買い換えなければならなくなる。そうした“市場を活性化するルール変更”が繰り返されてきた。

 そう考えると、米国に次いで大きい日本のゴルフ市場の活性化を狙ったメーカーが“接待ゴルフに優しいルール”の実現に影響力を発揮したとも考えられる」(前出の担当記者)

 これまでスポーツのルール変更といえば、スキージャンプや柔道など、ややもすると“日本いじめ”にも見える変更が物議を醸してきたが、ゴルフに限っては“日本仕様”に生まれ変わる動きが進んでいるようだ。

※週刊ポスト2018年4月13日号


関連記事

おすすめ情報

NEWSポストセブンの他の記事もみる
主要なニュースをもっと見る
社会のニュースをもっと見る
経済のニュースをもっと見る
政治のニュースをもっと見る
国際・科学のニュースをもっと見る
エンタメのニュースをもっと見る
スポーツのニュースをもっと見る
トレンドのニュースをもっと見る
生活術のニュースをもっと見る
地域のニュースをもっと見る

スポーツ アクセスランキング

ランキングの続きを見る

スポーツ 新着ニュース

新着ニュース一覧へ

総合 アクセスランキング

ランキングの続きを見る

東京 新着ニュース

東京の新着ニュースをもっと見る

東京 コラム・街ネタ

東京のコラム・街ネタをもっと見る

特集

特集一覧を見る

記事検索