佐伯日菜子、育児のため女優業をセーブ。10年待ってくれた押井守監督の一言に感動

佐伯日菜子、育児のため女優業をセーブ。10年待ってくれた押井守監督の一言に感動

©テレビ朝日

『エコエコアザラク』の黒井ミサ役で一躍“ホラー・クイーン”と称されるようになった佐伯日菜子さん。色々なジャンルの作品がやってみたいと思っていたそうだが、ホラー作品のオファーばかりがくるようになっていたという。そして19歳のとき、アジアでブレークするきっかけとなる映画『らせん』の貞子役のオファーが。

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◆香港で値切ったら、新聞に「貞子、買い物上手」?

−貞子役をやることになったときにはいかがでした?−

「最初は驚きましたけど、若いときは結構ノリノリだったんですよ、勢いが(笑)。それって若さですよね。怖いものなしというか、あとさき考えないというか。そういうことは大事だけど危険でもありますよね(笑)。

台本にヌードと書いてあったので、事務所の社長には『絶対にその場でやると言わないように』って言われていたんですけど、スタッフのなかに何人か『エコエコアザラク』のスタッフもいて、『すでに800人くらいオーディションをしているんだけど、貞子役が見つからない』って言うんですよ。

それで飯田譲治監督に『君しかいない。やってくれ』って言われたし、気がついたら『よろしくお願いします』って言っていました(笑)」

その場にいた事務所の社長は佐伯さんが未成年だったため、「お母さんの許可を取らないと契約書にサインはできない」と言ったそうだが、佐伯さんが自ら母親を説得して出演することに。

映画『静かな生活』のときから25年間佐伯さんのマネジメントを担当している社長は、「結果的にはやって正解でした。もしやっていなかったら、アジア進出はなかったですからね。香港や台湾にもものすごく呼ばれました」と話す。

−香港では買い物に行って新聞に載ったこともあったそうですね−

「香港とか台湾の方って純粋なんですよね。一時が万事大騒ぎという感じで、ちょっと話を盛るんですね。私が町で買い物をしたとき、ちょっと値切ったら、翌日の新聞に『貞子、買い物上手』って大きく出ちゃって、『何で知っているの?』って(笑)。

それで、別の日にナイトマーケットに行ったら、なぜか上半身裸の男性が私の後をずっと付いて来ていたんですね。そうしたら今度は『貞子行くところに裸男現る!』みたいな記事を書かれて(笑)」

−すべて貞子なんですね−

「そうなんです。すべて貞子(笑)。それで、香港で世界各国の幽霊みたいなのが出てくるドラマを製作したときに、日本の回で『貞子』が出ることになって、私が日本代表としてゲストで出たこともありました。

役柄に対するファンの皆さんの愛はとてもありがたかったですが、求められるのが貞子で、それがすごくジレンマというか、『このままでいいんだろうか』ってすごく思ってしまったこともあったんですけどね」

−“ホラー・クイーン”と称されることについてはいかがでした?−

「やっぱりちょっと悩みましたね。今思うとすごくありがたいんですけれども、来るお話全部がホラーになってしまった時期があったんですね。

ファンレターに『日菜子ちゃんはお化け屋敷のお化けじゃないですよね』て書いてあって、『私はお化け屋敷のお化けですか』ってショックを受けたこともありました。

正直やっぱり得意なんですよ。人を怖がらせるにはどうすれば良いのかということがだんだんわかってきちゃって、それも嫌だったんですね。なんかフレッシュさがないっていうか。だんだん『自分の顔が怖いから怖い話しか来ないんだ』ってちょっと考え込んでしまいました」

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◆10年待ってくれた“世界の押井”監督

26歳になったとき、佐伯さんはプロスポーツ選手と結婚。2女の母となる。育児のために女優業をセーブし、ママモデルの仕事のみすることに。しかし、結婚して3年ぐらいまでは、ホラー作品の依頼が多数あり、150本以上台本が来ていたという。

−女優として仕事をしたいという思いはありませんでした?−

「それはやっぱりありました。社長からどんな仕事のお話が来ているかは聞いていましたから、映画が公開されたり、ドラマが放送されると『ああ、この人に決まったんだ』、『この人でこういうドラマになったんだ』って、いちいち打ちのめされるわけですよ。『私がやりたかったなぁ』って思って」

−結婚されるときに女優業はどのくらい休んで、いつから復帰するかということは決めていたのですか−

「仕事はやっていいと言われたんですけど、わりとすぐに子どもができたので、あまり子どもにかわいそうな思いをさせてもいけないなと思って、女優業は徐々に子供の成長を見てやっていくようにすればいいかなという感じでしたね」

おしどり夫婦として知られ、家族4人の幸せな生活がずっと続くと思われていたが、徐々に亀裂が生じ始め、2013年に離婚。2人の娘とともに暮らすシングルマザーとなり、本格的に女優業を再開する。

復帰を待ち望む声は多く、映画『GHOST IN THE SHELL 攻殻機動隊』(1995年)、映画『イノセンス』(2004年)などで海外でも高く評価されている押井守監督もその一人。毎年忘年会で顔を合わせる度に事務所の社長は「日菜子、まだ動けない?」と聞かれていたという。そして2007年、押井監督と初タッグが実現する。

「昔、20歳過ぎくらいのとき、押井監督が大きい作品を用意して下さっていて、それに出て欲しいって言われたことがあったんですね。

色々と準備もされていたのですが、その映画自体がなくなってしまったのと、私が結婚して現場に入れなかったということもあって、それこそ10年くらい待っていて下さっていたんですね。

それで、子どもたちも少し大きくなったので、『じゃあ、やろう』っておっしゃって下さったのが、映画『真・女立喰師列伝』(2007年)だったんですよ。

久しぶりにお会いして『待ってたよ』っておっしゃって下さったときには、もう感動して…。私のことを10年も待ってくれる人なんていないですよ。本当にうれしかったです」

−プレッシャーはなかったですか−

「『世界の押井だし、とんでもない作品を作られているやばいおじさんだ』というイメージだったんですけど、ご本人は至って穏やかで、可愛らしい感じなんですよね。そのやばさをプレッシャーとして出さないんですよ。

だからその世界観に入り込めたというか、自分の力以上に増し増しで良くしてくださったので、ありがたさしかないですね」

押井監督とは2009年に映画『アサルトガールズ』でもタッグを組み、2017年には佐伯さん主演で撮り下ろした5本の短編ドラマ作品が北米で放映されたことも話題に。

(C)埼玉県/SKIP シティ彩の国ビジュアルプラザ

◆樹木希林さんから「天の声」が…

近年は積極的に若手監督ともタッグを組み、新人監督育成プロジェクトにも参加している佐伯さん。2017年には、白石和彌監督や中野量太監督、昨年社会現象にまでなった『カメラを止めるな!』の上田慎一郎監督など多くの監督を輩出した「SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2017」で短編審査委員をつとめた。

8月16日(金)にはこの映画祭がきっかけで製作された映画『イソップの思うツボ』(浅沼直也監督・上田慎一郎監督・中泉裕矢監督)が公開。佐伯さんはキーパーソンとなる役で出演している。

※映画『イソップの思うツボ』
友だちはカメだけの内気な女子大生、大人気タレント家族の娘、“復讐代行屋父娘”の娘…三人の少女が出会うとき、とんでもない予測不能のだまし合いバトルが…。

−3年前から3人の監督で1本の映画を撮るという企画がようやく実現しましたね−

「そうですね。映画の企画はなかなか実現しなかったりすることもありますけど、私は絶対にこの『イソップの思うツボ』には出たかったので、『カメ止め』のチケットの半券をずっとお財布にお守りがわりに入れていたんですよね(笑)。

だから、衣裳合わせで初めて上田監督にお会いしたときには『上田監督来たー!』って感じで興奮しました」

−オムニバス作品ではなく、3人の監督が1本の映画を撮るというのはいかがでした?−

「わりと自然にそれぞれ役割分担されていたと思います。3つの家族が出てくるのですが、どの監督がどの一家を担当するのかということも、ごく自然に決まっていましたね。

撮影期間はわずか9日間だったのですが、地方ロケもありましたし、そうとは思わせないほど充実していてすごく面白かったです」

−「コメディーをやりたい、実際に起きた事件を基にした作品に出たい」とおっしゃっていましたが、『エリカ38』にも出演されていますし、どちらもかないましたね−

「そうですね。『エリカ38』では浅田美代子さんが演じるエリカにだまされて自殺する山崎一さんの奥さん役だったんですけど、山崎さんは『毎日が夏休み』にも出演されていたんですね。

あのときは『NOVA』のCMがメチャメチャはやっていて、山崎さんは『イエス、ザッツライト』というセリフですごい話題になっていたので、私は山崎さんの顔を見ると『イエス、ザッツライト、イエス、ザッツライト』って言って遊んでいたんですね。とても失礼なんですけど(笑)。

山崎さんもそのときのことを覚えていて下さって、『楽屋に来てものすごいいっぱいしゃべってくれたよね』っておっしゃってくださったんですよ。

その山崎さんと夫婦役ということで、変わらず素敵でしたし、すごいベテランの役者さんなのに20年以上前にご一緒させていただいた映画のことを思い出して話してくれたことがすごいうれしかったです」

−エリカに食ってかかるシーンは迫力がありました−

「ありがとうございます。あのシーンでは『この人が山崎さんをだましたから死んでしまったじゃないか』っていう思いが身体中から沸き上がってきて…。山崎さんじゃないんですけどね(笑)」

−撮影のときには樹木希林さんも現場にいらしたと思いますが−

「階段の上にいらしたので、最初は気が付かなかったんですね。それで何かの瞬間に浅田さんに対して、天の声のように、『ちゃんとバミリを見なさいよ』って言うのが聞こえてきて、『ワーッ、樹木さんがいらっしゃる』ってビックリしました」

−ベテラン監督の作品から新人監督の低予算映画まで色々出演されていますね−

「結婚してしばらくできなかったフラストレーションみたいなものがあって、今いろんな現場に行くと、ほんとにデビューした頃くらいの気持ちでありがたいですよね。何をしてもうれしくて、みんなでロケ弁を食べていてもうれしいんですよ(笑)。現場の話をしているのもうれしいし、『現場ってこうだよね』って。

だからたまに『早く帰りたいなぁ』とか、『撮影巻いて欲しいなぁ』なんていう声が聞こえてくると、ものすごく悲しくなるんですよ。『今、現場があるありがたみってすごいんだよ』って。

でも、それは私個人の物語であって、ほかの人たちに押し付ける気はないんですけどね。良い現場が続いたということもあるんですけれども、今、自分に仕事の現場があるということは本当に幸せだなあと実感しています」

映画に愛され、映画を愛する思いが伝わる。まだまだやってみたい役はたくさん。今後も積極的に新人監督たちとの仕事もしていきたいと目を輝かせる。次はどんな役にチャレンジするのか期待している。(津島令子)


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