PRESIDENT Online 掲載

■ついに国内1500人の早期退職募集

日本を代表する名門ブランド「資生堂」が、2024年2月、国内事業に関わる従業員約1500人の早期退職を募集すると発表した。

国内事業を手がける子会社「資生堂ジャパン」のうち、45歳以上で勤続年数20年以上の社員が対象だ。

募集期間は同年4月17日から5月8日までで、①退職時年齢に応じた特別加算金を通常の退職金に加算し、②希望者には再就職支援サービスを提供する。

日本地域本社である資生堂ジャパンの従業員数は、1万人を超えており、今回、募集する早期退職はそのうちの1割を超える大規模なものになる。

大規模なリストラの背景には業績不振がある。資生堂の業績(2023年12月)は、売上高が前年比8.8%減の9730億円、コア営業利益が同22.4%減の398億円、営業利益が同39.6%減の281億円、純利益が36.4%減の217億円となり、2年連続の減収減益だ。コロナ禍が終わり化粧の機会も増え、インバウンドも復活しているにもかかわらず、なぜ業績が低迷しているのだろうか。

筆者は、名門ブランド「資生堂」の低迷は、①中国傾斜②EC遅れ③ブランド乱立の3つの根本的な問題によるものだとみている。こうした問題は、優良ブランドを抱えながら、生かし切れていない他の日本企業に共通する点も多そうだ。

■売上高の25.5%を占める中国事業

① 地政学リスク高まる中国への傾斜

グローバル企業でもある資生堂において、日本事業の26.7%に次ぐ売上高25.5%を占めるのが中国事業だ。東京電力福島第1原子力発電所の処理水放出に伴う日本製品の買い控えもあり、中国事業の売上高は同4.0%減の2479億円、コア営業利益70億円の黒字(前期39億円の赤字)だった。

中国における地政学的リスクや反日的な対応は随分前から存在しており、何もプロ経営者でなくても、いまや一般の日本人であっても十分に認識できるような話だ。

経営判断、ビジネス判断として、この先も中国市場を大票田とする施策に問題はないのだろうか。自然災害など避けることが困難なリスクではなく、ある程度予測可能なリスクであるはずだ。事実、多くの日本企業が中国ビジネスからの撤退や縮小、他の市場への転換を検討したり、実行に移すなかで、足元の市場の大きさや成長性に目を奪われ、傾斜しすぎている面はないだろうか。

処理水放出に伴う不買運動だけでなく、同じような問題がこの先も繰り返される可能性は十分にあろう。万が一、日中間の対立がさらにエスカレートした場合のプランBを資生堂は持ち合わせているのだろうか。

化粧品の成分開示義務を強化するなど、中国政府の規制強化による技術流出懸念もあり、中国リスクはこの先も尽きることはない。因果関係は不明だが、他の業界でも起きたように、低価格ながら品質も向上してきた中国現地化粧品メーカーによるシェア拡大も進んでいる。