PRESIDENT Online 掲載

■全米で2000人以上の逮捕者が出る大騒動に

11月の大統領選挙まで半年を切ったアメリカ。共和党の大統領候補指名が確実視されているトランプ氏が、ここへきて現職のバイデン大統領を上回る支持を得ている。NBCニュースが4月21日に発表した世論調査によると、大統領選挙が行われた場合、誰に投票するかという質問に対し、トランプ氏が46%、バイデン氏が44%となった。

トランプ氏は現在91件の犯罪容疑で訴追されており、選挙活動を積極的に展開できる状況にない。にもかかわらずその人気は衰えていないどころか、「接戦でトランプ氏が勝つ」との観測も出始めている。

その内情は、トランプ氏が強いというより、バイデン民主党の支持が弱まっているといったほうが正しい。最大の原因は、イスラエルとパレスチナの衝突だ。ガザで繰り広げられている虐殺を現政権が止められないために、若者だけでなく支持母体のリベラル支持者の間でも「バイデン離れ」が起きている。

ニューヨークの名門コロンビア大学やNY市立大学では、学生がイスラエルの攻撃に対する抗議デモを数週間にわたって行い、4月30日には約300人が逮捕された。これを発端にした親パレスチナの抗議運動は今や全米に拡大し、5月5日時点で2000人以上の逮捕者が出るに至る。

■「イスラエルに加担する企業への投資をやめよ」

筆者が取材したニューヨーク・フォーダム大学の運動主催者はこう訴える。

「ガザで起きているのは虐殺であり、イスラエルがやっているのはアパルトヘイトです」
「大学はイスラエルの攻撃に加担している企業への投資をやめるべきだ」

抗議運動の最大の特徴は2つ目で、イスラエルへの投資をやめるよう政府や企業に求めるというもの。キャンパスでテントを張ったり、デモを起こしたりしながら、大学側との交渉を行っている。

学生らは「自分たちの授業料を使った投資がどこに行っているのか、情報公開を受けるのは当然の権利」と主張するも、現在のところほとんどの大学は要請に応じていない。逆に治安の維持を理由に警察を呼び、学生らの怒りを買って状況はエスカレートしている。

昨年の10月、ハマスのテロをきっかけにイスラエルのパレスチナ侵攻が始まった時も多くの大学で抗議運動が起きたが、実に平和的なものだった。それがどうしてこうなったのか。

まず、デモに危機感を持ったのはユダヤ系の学生たちだ。ホロコーストをはじめユダヤ差別の歴史を持つ彼らは、反ユダヤの動きが高まることを恐れた。確かに中にはヘイトスピーチもあったが、あくまでも学内での出来事にとどまっていた。

その状況を利用し、一変させたのが議会下院の共和党議員らである。