PRESIDENT Online 掲載

テレビ局は長年、視聴率の数字を追ってニュース番組を制作してきた。そして現在、ウェブにおいても分析データを基にしたニュースづくりが主流になっている。しかし、ここには大きな落とし穴があるという。アメリカ人ジャーナリスト2人の共著『ジャーナリストの条件 時代を超える10の原則』(新潮社)より、一部を紹介する――。

■注目を集め続けるにはどうすればいいか

ニュースメディアの文化に混乱が進行しているとき、常に話を大きく、センセーショナルにする圧力が高まる。「ストリップとギター」の原則とでも呼べるかもしれない。

もし注目を集めたければ、表通りへ出て裸になり、ストリップショーをすれば良い。おそらくすぐに人だかりができるだろう。問題は、それをどう維持するかだ。あなたの裸をいったん見たら、そこに居続ける理由があるだろうか。どうやれば集まった人が帰らないようにできるか。

違うやり方がある。同じ通りに行き、ギターを弾いたとしよう。最初の日、数人が聞いてくれるかもしれない。翌日、多分少し増えるだろう。あなたのギターがどれほどうまいか、レパートリーがどれほど多く、魅力的かによっては、聴衆が毎日増えるかもしれない。

もしうまければ、人を集め続けるために場所を変え続けたり、曲の繰り返しに飽きた人たちに代わる新たな聴衆を見つけたりする必要はない。逆に同じ場所に居続ける方がメリットがある。

■数字で人気のコンテンツがわかってしまう

これは、新たなテクノロジーによってメディアの数が増え、一つ一つの報道機関としては自分の読者・視聴者が減るのを目の当たりにする時に、実際に報道メディアが直面する選択だ。将来が不透明で、読者・視聴者を急速に増やさない限りこの仕事をいつまで維持できるか分からない時、あなたはどちらの手法を求めるだろうか。

ニュースメディアは常にある程度は、信念や哲学に基づいて事業を進めなければならない。経験に基づく過去のやり方では未来には役立たないかもしれないからだ。そこに出てくるのが、リアルタイム計測ができるという新しくややこしい問題だ。ある種のコンテンツがいかに即時に人を集めるかを見せてくれるのである。

報道機関の中には、かなり堅い伝統のあるところさえも、ストリップを選んだところがあった。新聞のウェブサイトが、トップページの目立つところに若手芸能人の写真のスライドショーを掲げているところを考えてみてほしい。これはニュースが量産品となり過剰供給だとの考えに動かされている面もある。

プルデンシャル証券のジェームズ・M・マーシュ・ジュニアはウォール街のアナリストとして、私たちとテレビについて議論したとき「現在、ニュース番組はだぶついており、需要を供給が優に上回る状態だ」と述べた。ストリップを選ぶ理由はまた、独自報道を多数出すには金がかかる、記者やカメラクルーを張り巡らせ、世界各地に支局を持つ必要があるという事実に動かされているところもある。