PRESIDENT Online 掲載

ネットでは「10万円以下の小規模葬儀」という広告をみかける。本当に可能なのか。佐藤葬祭代表の佐藤信顕さんは「必要な備品や人件費を考えるとどんな簡素な葬儀でも10万円以下では事実上不可能。ネットの広告を信用してはいけない」という――。

■火葬だけの直葬でも10万円以下ではできない

ネットやテレビCM、街頭看板で「葬儀が○万円から」という格安を売りにした広告をよく見かける。「葬儀 格安」で検索すると、最低料金が6万円台や7万円台をうたっている業者が簡単に見つかる。

筆者のところにも「本当にそんなに安く葬儀ができるのか」という質問をもらうことがあるが、結論から言うと不可能と言わざるを得ない。

まず格安業者が最低価格で規定している「葬儀」は、葬儀する場所(セレモニーホール)を確保してお坊さんにお経を挙げてもらい、弔問客に焼香を上げてもらってお別れをするといった、いわゆる一般的な葬儀とは異なる。彼らが提供するのは直葬と呼ばれる火葬だけの葬儀だ。

だが、その火葬だけの葬儀でも10万円以下で行うことはできない。

■葬儀費用は「物品+設備費+人件費」

筆者のように葬祭業を行っている者であれば、適正料金を調べるのは決して難易度の高いことではないが、消費者からしてみれば、業者の提示した料金を比べるしかなく、適正料金を判断するのは極めて難しい。

とは言え、適正価格の算出方法はいたってシンプルだ。

物品などに関わる必要経費に人件費を足したものが適正価格だからだ。

直葬の場合、棺やドライアイス、最低限の生花などにかかる費用と寝台搬送、安置場所といった設備サービスが最低限必要となる。それに人件費を加えたものが最低限のコストという事になる。

構造としては、「物品+設備費+人件費」が適正料金と最低料金を算出する根拠になる。

だが、この棺、ドライアイス、寝台車、保管設備だけで8万〜10万円程度のコストが発生する。人件費をゼロにしないと10万円以下で火葬だけの葬儀、直葬を施行するのは難しいと言える。