PRESIDENT Online 掲載

話し手と良い話ができる人はどんな聴き方をしているか。心理カウンセラーの古宮昇さんは「相手をただ大切に感じる思いが聴き手の根底にあると、それが相手に伝わり人間関係に影響を与える。このようにして聴いていると、話し手も本来の自分らしさを取り戻すだろう」という――。

※本稿は、古宮昇『一生使える! プロカウンセラーの傾聴の基本』(総合法令出版)の一部を再編集したものです。

■聴き手の根底にある「気」「エネルギー」「オーラ」「雰囲気」の正体

あなたが今までに出会ってきたなかで、いちばん好きな先生は誰でしょう?

そして、なぜその先生が好きなのでしょう?

さまざまな答えがあるはずです。しかしあなたはおそらく、「漢字の教え方がうまかったから」とか「分数の教え方がうまかったから」のようには答えないでしょう。

生徒は、教え方のテクニックが上手だったからといって、その先生を一番好きだとは感じないものです。素晴らしい先生というのは、教育への情熱があるとか、子ども思いだとか、子どものことが大好きだとか、子どもの成長を見ると心から喜びを感じるとか、そういう人です。

もちろん、教師にテクニックは必要です。何を言っているかわからないような教え方では、良い教師になれるはずがありません。

しかし本質的に大切なのはテクニックではなく、子どもや教育に対する真摯(しんし)な思いなのです。

傾聴しようとするときにもっとも大切な基盤は、テクニックではなく、話し手の気持ちをなるべく話し手の身になって理解するとともに、そのままの話し手のことをただ大切に感じていることでしょう。

私たちの思いは、言葉にしなくても相手に伝わり、その人との人間関係に影響を与えます。話し手をただ大切に感じる、その思いが聴き手の根底にあると、それは「気」「エネルギー」「オーラ」「雰囲気」といった形で醸し出され、話し手に伝わります。