「笑顔」も「いいね!」も通じない…日本発祥の「絵文字」が海外で直面している"恐ろしい世代間ギャップ"

プレジデントオンライン6/14(土)18:15

「笑顔」も「いいね!」も通じない…日本発祥の「絵文字」が海外で直面している"恐ろしい世代間ギャップ"

撮影=プレジデントオンライン編集部

こうした変化は、言語学の観点からも説明できるという。言語学者のアレクシック氏はワシントン・ポスト紙で、「意味の漂白」と呼ばれる現象だと解説する。別名「脱意味化」とも呼ばれるもので、単語から元々の意味が抜け落ち、新たな文脈で使われる現象を指す。絵文字の場合、感情表現を繰り返し使うことによって元の意味が薄れていき、より強烈な表現に置き換わるのだという。

例えばこれまでにも「大声で笑う(laughing out loud)」を省略した「lol」が好んで使われたが、陳腐化すると「LITERALLY CRYING」が登場した流れがあった。絵文字では、泣き笑いの絵文字が飽きられると涙の絵文字となり、さらにドクロ絵文字へと変遷した経緯がある。この急速な変化サイクルが若い層で活発に起こり、世代間ギャップを生んでいる。

応用例として英フィナンシャル・タイムズ紙は、Z世代は「妖精コメント」と呼ばれる独特の表現方法をマスターしていると解説する。辛辣な皮肉を込めた発言を、あえて妖精や蝶、輝くハートなどのかわいらしい絵文字で飾るというものだ。きらびやかな妖精で憎しみを込めた一言を装飾するという、なんともパンチの効いた表現だ。

■若い世代に身近に感じてもらいたい親世代のジレンマ

Z世代はオンラインとの接し方について、ミレニアル世代とは異なる独自の価値観や表現スタイルを持っているようだ。では、30代以上が若者と同じようなニュアンスで絵文字を使うべきかというと、それもまたぎこちなさが残るだろう。

意図して若い世代の習慣を取り入れようとすること自体、「格好悪い」との印象を与えかねない。英ノーサンブリア大学デジタル市民センターのソーシャルメディア研究者であるカロライナ・アレ博士は、ガーディアン紙に対し、若い世代はそもそも、自然体を好む傾向にあると語っている。

「ミレニアル世代が(中略)自分がどう見られているかを気にしたり、プロフェッショナルだったり洗練されたりといった見栄えを保とうとしたりすることは、彼ら(若者)の目には格好悪く映るかもしれません」

インディペンデント紙の筆者であるコフィー氏は、彼女自身がミレニアル世代という立場から、「私はすでに(古いカルチャーとなりつつある)横分けの髪型やトレーナーソックスを諦め、ハリー・ポッターや(TVドラマ)『フレンズ』への言及も極力控えてきました。どうか私たちの愛するサムズアップだけは奪わないでください。さもないと、笑い泣きの絵文字が本当の泣き顔に変わってしまいます」と切実に訴えている。

新しい世代のカルチャーを受け入れようとするほど、どうしても不自然な振る舞いになってしまう。絵文字のジェネレーションギャップは、若い世代に身近に感じてもらいたい親世代と、それを敬遠する子世代の、消えることのないすれ違いを象徴するかのようだ。

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青葉 やまと(あおば・やまと)
フリーライター・翻訳者
1982年生まれ。関西学院大学を卒業後、都内IT企業でエンジニアとして活動。6年間の業界経験ののち、2010年から文筆業に転身。技術知識を生かした技術翻訳ほか、IT・国際情勢などニュース記事の執筆を手がける。ウェブサイト『ニューズウィーク日本版』などで執筆中。
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(フリーライター・翻訳者 青葉 やまと)

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