今や韓国、台湾、シンガポールの方が医療水準が高い…「どんぶり勘定で診療報酬を改定」日本の医療政策の末路

プレジデントオンライン6/12(木)7:15

今や韓国、台湾、シンガポールの方が医療水準が高い…「どんぶり勘定で診療報酬を改定」日本の医療政策の末路

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/imaginima

■「本当に削るべき部分」を減らせない日本の医療

何しろ、日本では医療のデジタル化が遅れているため、各医療機関がどんな医療をしているのかがわからない。そのため、治療した結果、症状が改善したのか、アウトカムはどうだったのか、治療の内容は適切だったのか悪かったのか、判断する材料がないのだ。

例えば、鼻水と咳がひどいというAさんがBクリニックを受診したとき、肺炎も起こしていないし新型コロナウイルス感染症でもインフルエンザでもなさそうで、特段病名がつくような症状がないから風邪と診断したとする。一般的な風邪のほとんどはウイルスが原因だが、撃退する薬はなく、熱があれば解熱剤、咳を止める鎮咳薬や鼻水を抑える抗ヒスタミン薬などを出す対症療法をするくらいで、全く薬を出さなくてもいいくらいだ。

でも、極端な話だが、自分が欲しい薬をもらえなかったからということで、その日にAさんが別のCクリニックを受診したとしても、保険診療でまた診察してもらえる。症状が取れないからと、何回も受診したとしても安い再診料でまた診てもらえるし、データがないのだから無駄な受診だとクレームのつけようもない。こんなことをやっている限り、日本の医療は標準化されないし、本当に削るべき無駄な部分を減らせずに破綻するだろう。

■患者さんが「抗生物質ください」という日本

医療界では、標準化とかエビデンス(科学的根拠)などという言葉を使って、関連学会が診療ガイドラインを作ったりしているが、世界中で使われている標準化治療の徹底は、本来普通の風邪のように日常診療でよく遭遇するコモンディジーズ(一般的な疾病)で、どんな医師が診ても同じ結論しか出ないような病気にこそ必要だ。

風邪のようなウイルス性疾患には抗生物質(抗菌薬)は効果がないから使わないし、例えば、発熱症状に対する解熱剤などはウイルスがいる間の1週間以内ならともかく、それ以上は無駄であるというのが世界標準だ。ところが、日本では患者さんが「抗生物質ください」ということもある。特に高齢者は、若いころには開業医が風邪に抗生物質を出すのが当たり前だったせいか、ウイルス性疾患には抗生物質は効かないのに抗生物質を欲しがる人が多い。処方した方が患者の評判がいいからと薬を出す医師が少なくないのも問題だ。

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熊谷 賴佳(くまがい・よりよし)
京浜病院院長
1952年生まれ。1977年慶應義塾大学医学部卒業後、東京大学医学部脳神経外科学教室入局。東京大学の関連病院などで臨床研究に携わったのち、1992年より京浜病院院長。祖父と父親とも医師という医師家系で育つ。オリジナリティー溢れる認知症ケアの発案のほか、地域が一丸となった医療サービスの実現をめざして院外活動にも積極的に参加。認知症や地域医療に関する著書多数。
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(京浜病院院長 熊谷 賴佳)

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