【WEEKEND女子プロレス♯19】

 女子プロレス新団体マリーゴールドの旗揚げ会見で、アクトレスガールズを退団した選手たちが風香に率いられる形で登場し参戦を直訴した。そのなかのひとりが、松井珠紗(みさ)。

松井は舞台俳優の活動からプロレスを知りレスラーを兼任するようになったのだが、しだいにプロレスに集中したいとの思いが大きくなり、その決断がマリーゴールド入団だったという。芸能志望からプロレス集中へ。そして、デビューから約5年半、プロレスではない約2年半の“ブランク”を経て、初めてベルトを巻くチャンスがやってきた――。

「自分が芸能界に入ったのは中1、13歳の頃でした。最初はモデルになりたかったんです(笑)。ティーン向けの雑誌が大好きで、ティーンズモデルになりたかった。それで、誌面にあったオーディションのひとつに応募してみたんですけど、そこがモデルではなく舞台劇中心の俳優養成所だったんですよね(苦笑)。ただ、入ってみてレッスンを受けさせてもらっていくうちに、お芝居ってすごく楽しいなと思い、ずっとそのまま続けていったんです」

 俳優としてやっていくなかで、プロレスラーと共演する機会があった。元プロレスラーMARUの主宰する劇団の舞台に出演し、志田光と共演。そして志田のプロレスを見て、衝撃を受けた。それは、NOAH丸藤正道との性別を超えた一騎打ちだった。

「女性ってこんなに強く立ち向かっていけるものなんだ」と感動。プロレスに興味を持つと、“女優のプロレス”をコンセプトとするアクトレスガールズに誘われ、二足の草鞋を履くようになった。

 プロレスと並行して舞台俳優もこなす。なかでも20年12月に上演された『リング・リング・リング』は、つかこうへい脚本による名作の再演。MARUが令和によみがえらせたこの舞台の主演に、松井が抜てきされた。松井演じるのは、長与千種が演じた長与千種の役。しかも、膨大なセリフ量。大きなプレッシャーがのしかかった。

「セリフの量がすごかったですね。最初はもう暗記でした。感情がどうのこうのとか一回おいて、まずは暗記(笑)。当時ちょうど20歳で、座組のなかでも一番若いくらい。そのなかで座長としてやっていたし、とにかくプレッシャーがすごかったです」

 舞台にはジャガー横田も出演。プロレスではまだありえない顔合わせで、さらなる重圧が上乗せされた。

「長与さんの名前を使わせていただくプレッシャーのなかで、ラストがジャガーさん演じる役とのシングルマッチだったんですよ。リングでもあたったことのないジャガーさんと突然共演することになって。でも私は松井じゃない、長与なんだと自分に言い聞かせて演じましたね(笑)」

 そして舞台は無事終幕。圧倒的なセリフ量をこなし、長与にも励まされて長与を演じきった。その後も舞台で主役を演じていくのだが、プロレスへの思いがどんどん募っていったという。

「舞台もやりたい、プロレスもやりたいとなって両方一緒にやっていったんですけど、他団体さんにも出させていただけるようになっていくうちにプロレスをメインにしていきたい気持ちに徐々に変わっていったんです。(稽古も含めて)舞台の期間中、プロレスの方で置いていかれるような気持ちになってしまい、もっとプロレスやりたいと思うようになっていったんですよね」