5月26日、2024年シーズンの天皇杯1回戦が全国各地で開催された。

北信越フットボールリーグを戦う福井ユナイテッドFCは、本拠地であるテクノポート福井を会場に大宮アルディージャを迎え、2カテゴリ上の相手にジャイアントキリングを狙った。



序盤からアグレッシブに攻め込む意識を見せる福井であったが、そのペースを握った時間帯にゴールを決められず。

31分には逆に大宮の杉本健勇から泉澤仁、そして小島幹敏と繋がれて角度のないところから難しいシュートを決められてしまい、失点を喫することになった。

そして後半も同点に追いつこうという強烈な意欲を見せてスタートし、コーナーキックから押谷祐樹のヘディングでゴールに迫る。





さらにその直後には右サイドで先発した野中魁がカットインからシュートを放ち、あと少しで得点に至る場面を作り出すことに成功した。





ところが、61分には中野克哉のグラウンダークロスを泉澤仁に決められてしまい、逆にリードを広げられる結果に。そして89分には途中出場の大澤朋也のヘディングによって3失点目を喫した。

そのまま試合は終了。シュート数は前半も後半も大宮を上回りながらも決定力を欠き、福井ユナイテッドは天皇杯1回戦で大会を去ることになった。



しかし、テクノポート福井に詰めかけたサポーターは最後まで戦い抜いた選手たちに大きな拍手を送り、その健闘を称えていた。

福井のスタンドを彩る「青とオレンジ」



この試合ではもちろん福井県での開催とあって地元のサポーターも多く駆けつけていたが、印象的だったのはオレンジのカラーを身に着けたファンの多さだ。ゴール裏だけではなく、大宮側のベンチの後ろには多くの大宮サポーターが座っており、テクノポート福井のスタンドを彩っていた。

福井県には今年3月16日から北陸新幹線が開通。これまで金沢止まりだった路線が敦賀まで延伸され、関東からのアクセスがより良好になった。

大宮からやってきた報道のスタッフは「北陸新幹線で来ました。テクノポート福井に最寄りの芦原温泉駅は知らなかったんですけど、結果的に福井駅で降りてレンタカーを借りた選択は良かったですね」と話していた。

また北陸新幹線で福井まで遠征したという大宮サポーターは「福井駅で降りて、えちぜん鉄道で三国駅まで行き、レンタサイクルでテクノポートまで来ました。関東から1本で来られるのは心情的に楽ですね。だから今日は本当に晴れてよかったです(笑)」とも。

逆に福井のサポーターも北信越リーグで「長野での試合を日帰り遠征できるようになった」という。これまでは自動車で高速道路を使っても最低4〜5時間かかっていたところが、早ければ3時間以内で到着することができる。

テクノポート福井は残念ながら福井駅から自動車でも30分ほどの距離で、公共交通機関も乏しい点は残念だ。しかしそれでも北陸新幹線の開通のメリットは実際に出ているように見えるスタンドの風景であった。

大宮アルディージャを率いている長澤徹監督も天皇杯のアウェイまで応援に駆けつけた多くのサポーターを見て、その影響力の大きさを感じていたという。



「影響は感じましたね。もちろん我々のサポーターは毎回のように試合に駆けつけてくれています。

ギリギリの場面というのは、応援が勝負を分けることもあります。本当につま先が触るかどうか、数センチで決まる世界です。そこは毎回助けられていると思います。

このような素晴らしい場所にまたJリーグのチームがどんどんできてきたら素晴らしいことだと思いますし、可能性があるクラブがあることを認識できました」

「新幹線とバスケに続いて、サッカーでも盛り上げたい」



福井ユナイテッドFCを率いている藤吉信次監督は就任して3年目。その間に福井県の環境には多くの変化があったが、それについて以下のように話していた。



「新幹線がここまで通ったのは、僕が東京に帰りやすくなっただけではあるんですけど(笑)。ただ、福井がそれによって注目されるようになっている。そのような気持ちは選手も持っていると思います。

新幹線で盛り上がっているときに、サッカーでも盛り上げたい。バスケは昇格したので、サッカーもそうやって盛り上がっていきたい。そのような気持ちを持ってみんなが戦っています」

福井では先日B3リーグを戦っていたバスケットボールチームの「福井ブローウィンズ」が優勝を果たし、B2への昇格を果たしている。

新幹線開通による盛り上がり、そしてスポーツ面での成功。さらにサッカーでは今年照明付きの人工芝グラウンド「福井市フットボールセンター」が整備され、福井ユナイテッドFCも練習場として使用している。

この数年で多くの変化が起こっている福井県の環境。その流れに乗って福井ユナイテッドはJFLへの扉を開くことができるのか、間違いなく注目度は高まっている。

そして、福井ユナイテッドは6月23日に「北陸新幹線の終着点」でもある敦賀市で新潟医療福祉大学FCとの試合を行うことが決定している。

敦賀駅は福井県の南部を東西に結ぶ小浜線、関西を結ぶ琵琶湖線や湖西線、さらに名古屋までを結ぶ特急しらさぎの起点でもある場所だ。新幹線開通で最も盛り上がりを見せている街の一つで、ホームが増設された駅にも観光客が多く訪れており、自動販売機で冷凍のふぐ(てっちり、てっさ)が売られているという珍しいところも。





この試合で福井ユナイテッドは「小浜線に乗って福井ユナイテッドFCの応援に行こう」というキャンペーンを行っており、小浜線を利用すれば試合観戦が無料になる上、オリジナルグッズが贈呈されるとのこと。



他にも嶺南地方の6自治体(敦賀市、美浜町、若狭町、小浜市、おおい町、高浜町)在住の方は「WEB申し込みで先着400名」「会場で先着100名」を無料招待するという。

会場となるのは敦賀市の総合運動公園にある陸上競技場。敦賀駅からはコミュニティバスの最短の路線でおよそ15分ほど。レンタカーであれば10分ほどで到着する。



福井ユナイテッドはこのあと6月9日11時に敵地で富山新庄クラブとの北信越フットボールリーグ首位攻防戦を行い、その後23日に上記の新潟医療福祉大学FC戦に臨む予定だ。