J1で初めてFC町田ゼルビアと東京ヴェルディによる「東京クラシック」は、町田の大勝に終わった。

東京Vにとっては、11戦無敗で迎えた一戦。首位に肉薄する町田が相手とはいえ、勝算を見込んでいたはずだ。しかし序盤から試合はホームチームのペースで進み、前半で町田が2点をリード。内容的に点差がもっと離れていてもおかしくはなかった。

後半頭から東京Vは山見大登と齋藤功佑を投入。巻き返しを目指したが、60分にVARでPKを与えてしまうと、藤尾翔太がきっちり決めて3点差に。その後も柴戸海、さらに長期負傷明けのエリキに嬉しい今季初ゴールが飛び出し、終わってみれば5-0という大差のゲームとなった。

「完敗でした。3,000人と聞きましたけど、こんなに多くのサポーターが来てくれて、彼らに本当に悔しい思いをさせてしまったなと。勝敗を決するようなゴールが入っても、まだ背中を押してくれていた彼らに申し訳ないなというふうに思います」

会見冒頭でそう語った城福浩監督は、こう続けた。

「今シーズンは、この歴然とした差をどう埋めていくかというところが我々のやるべきことかなと思います。インテンシティの高い時にどんなサッカーをするのか。つなげるようになった時にシュートまでどのように持っていくのか。前半も後半もそれが足りなかったです。

何より個の差はあれど、最後の1対1のところの粘りであるとか、シュートブロックの時に顔を背けてしまうとか。本当に基本中の基本という、我々が大事にしていてそこが緩んだらJ1のステージでは勝負できないというところがいくつか出てきてしまいました。

もちろん選手は疲れもあると思います。ただ、この差を真摯に受け止めて、グラウンドの上でフラットな競争させて、次に向かいたいです」

3節でセレッソ大阪に敗れて以降、11試合負けなしで来た東京V。いくつもの劇的ゴールで勝点を伸ばしてきた彼らだが、町田相手には多くの隙を見せてしまったと言わざるを得ない。

その要因として、城福監督は「競争の不足」を挙げた。

「このチームの今一番の課題は競争だと考えています。やはり高いレベルで競争した選手がピッチに出ていくという意味では、そこの問題が今回露呈したと自分は受け止めているので、しっかりチーム内競争力のあるチームにして、この大敗を次に生かしたいと思います」また、序盤から相手に押し込まれたことについて、自分たちの問題だったのかと尋ねられた城福監督は、具体的に“あるシーン”をピックアップして言及した。

「これは私の問題だと最初に断っておきますけど、(試合の)入りはすごくよかったです。ただ、我々が用意したフリーキックを、本来蹴るはずではない選手が蹴ったんですよ。我々が準備した状況よりも違うものが…そういうのを引き出してしまったのはおそらく自分のコントロールが効いていなかったんだなと」

城福監督が挙げたのは、開始2分の場面のこと。

右サイドでU-23日本代表の山田楓喜がファウルを受けてフリーキックを獲得。J1屈指のプレースキッカーである山田にとっては早くも訪れた見せ場であったが、実際にボールを蹴ったのはこの日左サイドバックに入っていた翁長聖だった(山田はフェイクを入れていたので2人の間では意思の疎通が取れていたと思われる)。

DAZNでは、翁長がボールを蹴りゴールを大きく越えてしまった直後、城福監督が不満げな表情で何かを言いながらベンチに戻っていく姿がとらえられている。

昨季まで2年間町田に在籍していた翁長は古巣相手ということで気合いが入っていたに違いない。しかし、結果的にチームとして最初に迎えたチャンスを潰してしまう形になった。そして、2点をリードされる展開もあってか、翁長はハーフタイムに交代している。

城福監督いわく「こういう状況になるというのは、ほぼほぼ予想通りでした」という試合だった町田戦。そうならないためには少しの油断も許されないはずだったが、開始2分にそれが出てしまった時点ですでに結果は見えていたのかもしれない。

町田戦を終えての東京Vの成績は、3勝9分3敗の12位。勝敗は五分であるが、逆を言えばまだまだどちらに転んでもおかしくない状況だ。だからこそ今回の結果を次に生かす必要がある。

東京Vは今週、22日(水)に行われるルヴァンカップ3回戦のサンフレッチェ広島戦を経て、週末の26日(日)には昨季王者のヴィッセル神戸とアウェイで対戦する。