25日、天皇杯の1回戦が全国各地で開催された。奈良県のロートフィールド奈良では、J3を戦っている奈良クラブと、京都代表の京都産業大学が対戦するというカードが組まれていた。

試合は京都産業大学が3分と33分にゴールを決めて2点をリードするも、その後奈良クラブが同点に追いつき、さらに後半アディショナルタイムにコーナーキックから鈴木大誠の逆転弾が決まるという劇的な結果に。

3-2で勝利を収めた奈良クラブは、このあと6月2日に最大のライバルといえるFC大阪との「生駒山ダービー」を戦う予定となっている。

そしてその後6月8日にJ3のSC相模原戦に臨んだあと、6月12日には天皇杯2回戦でJ1を戦う強豪の鹿島アントラーズと対戦することになった。同じ鹿をエンブレムのモチーフとするクラブ同士の「鹿ダービー」の実現である。

「ポポヴィッチ監督とは友人だが、試合は負けない(笑)」





試合後の記者会見に出席した奈良クラブのフリアン監督は、このあとのスケジュールについて以下のように話していた。

「本当に幸せです。特にファンの皆さんに対してそう思っていますし、選手たちにも同様です。鹿島アントラーズというクラブと戦えるのは非常に大事なことだと思います。

天皇杯に対してはいつも特別な気持ちを持っていますし、ここ数年は1回戦を突破することができなかったので、とても嬉しく思います。

個人的にも鹿島アントラーズのランコ・ポポヴィッチ監督は友人ですし、対戦できるのを本当に心待ちにしています。彼がブリーラム・ユナイテッドで指揮を執っているときに私もタイにいましたし、また再会できることを楽しみにしています。

彼へのリスペクトはとても大きいです。タイ時代からは月日が流れていますが、今でも連絡を取り合ったり、または助けてくれたりと親交が続いています。

私が2017年にタイへと行ったときには、彼はすでにリーグ優勝を果たしているほどに経験を積んでいましたし、どのようにその国で過ごせばいいのかというアイデアやアドバイスをくれました。

それから私は日本にやってきて4年が経ち、日本のサッカーのこともよく理解できるようになってきましたが、彼はセレッソ大阪や鹿島アントラーズなどJFLからJ1まで広いキャリアを積まれている。

そんな偉大な監督から話を聞くことができるのはいつも光栄なものです。でも、試合になればライバルなので負けられないですね(笑)」

鹿島アントラーズを率いるポポヴィッチ監督と鈴木優磨


鹿島アントラーズを率いているランコ・ポポヴィッチ監督は、2016年夏からタイ・プレミアリーグの強豪ブリーラム・ユナイテッドを指揮していた。

そしてフリアン氏はそれから遅れること10ヶ月、2017年4月にU-21タイ代表の監督に就任。2018年から2019年まではタイサッカー協会のメソッド部門ディレクターを務めている。

同時期に同じタイで活動していた外国人指導者同士であったこともあり、かねてより連絡を取り合っている仲であるとのこと。

「誰よりもあの悔しさを忘れずに挑む」



アディショナルタイムに決勝点を決めた鈴木大誠


この試合で決勝ゴールを決めた鈴木大誠は、自身の得点で鹿島アントラーズとの試合が決まったことに興奮を隠さなかった。

「去年の天皇杯では鹿島アントラーズへの挑戦権を逃していますからね。それを取れたことへの…なんかこう、やるぞという感じというか、闘志が湧き上がるというか、ワクワク感がもう今からありますね。

まだこれからリーグ戦もありますけど、チーム状態も上向きですし。そこで来週はFC大阪とやれますし、その後は今年調子を上げているSC相模原とやれる。

そこにさらに鹿島アントラーズとの試合が入ってくる。チームがこれからもっと上に行くんだとなっているときに、その流れをさらに上向きにしてくれるような対戦相手が続くので、楽しみですね。

ただ、鹿島戦についてはその前に考えるので(笑)。まずは来週の生駒山ダービーですね。

FC大阪には、開幕前にこのロートフィールド奈良でやったプレシーズンマッチで散々な負け方をしてしまったので…その悔しさはちょっと忘れられないです。

選手の誰よりも、あるいはサポーターの誰よりもオレはあの悔しさを忘れてないんだ…という姿勢で臨みたいですね」

先発フル出場で試合をコントロールしたCB小谷祐喜


また、キャプテンマークを巻いてこの試合に出場した小谷祐喜は、ルヴァンカップで0-6と敗れたサンフレッチェ広島戦も踏まえて以下のように話していた。

「僕たちはルヴァンカップでJ1の広島相手にかなり面食らったというか、J1の力を見せつけられてしまった。その反省も生かして、J1の相手にもう一回自分たちの全力を尽くして挑めるというのは…すごく成長につながる試合だと思いますし、今日の逆転勝利で勢いも出たと思うので、しっかり戦いたいです。

広島戦は1試合を通してアグレッシブさを出し続けられなかった。前半はいいゲームができましたが、後半は勢いに飲まれてしまった。

攻撃の時間帯も守備の時間帯もあると思うんですけど、リーグ戦でもやっているようなアグレッシブな姿勢で取り組むというのは、どんな相手にでもやっていきたいです。

今日の試合の経験も生きると思います。特に後半は本当にみんなが一つになってチームとして戦えたので、このあとのJ3でも続けていきたいです」

肩を痛めながら後半ATまでプレーした西田恵(11番)


そしてこの試合で貴重な1点目を決めて逆転の足がかりを作った西田恵は以下のように話し、生駒山ダービーや鹿島アントラーズ戦に向けての思いを語った。

「正直やってみないとわからない部分はあると思いますけど、同じ人間ですしね。カテゴリは違いますけど、だからこそ僕たちは失うものはないですし。

まずはリーグ戦がありますし、それが僕たちには大事です。その先にある鹿島アントラーズ戦はチャレンジャー精神をもって戦います。

繰り返しになりますけど失うものはなにもないので、今の全力を出して、どれだけ通用するのか、自分が何ができるのか、いろんなことを試せるいい機会だと思いますし、その先に勝利があるといいですね。

(リーグ戦といえば次はFC大阪とのダービー。サポーターからはかなり熱いバナーが出ていましたね)



そうですね!ダービーに勝つぞという気持ちはもちろんあります。長いリーグ戦の中の1試合であることには変わりはないという点もありますし、目の前の毎試合を勝つために毎週準備をしていますけど、その中でみんなが燃え上がる、モチベーションになるゲームだと思います。

去年はアウェイで勝って、逆にホームで負けてしまったので、今年は両方白星で終えられるように、来週は勝ちたいと思います」

苦戦の末に鹿島アントラーズへの挑戦権を獲得した奈良クラブ。ただ逆転勝利による上昇気流を捕まえられた雰囲気もあり、ここからの重要な試合にいい流れをもって臨めそうだ。

サポーターによる盛り上げがあった生駒山ダービーは6月2日の午後4時から東大阪市の花園ラグビー場第1グラウンドでキックオフされる予定だ。