5月28日放送のCBCラジオ『小堀勝啓の新栄トークジャンボリー』では、パーソナリティの小堀勝啓が映画『スパイを愛した女たち リヒャルト・ゾルゲ』(制作・総監督:セルゲイ・ギンズブルグ/制作・総監督・出演:アレクサンドル・ドモガロフ)を紹介しました。 ソビエト連邦のスパイで、諜報活動をおこなった日本で処刑された実在のスパイ、リヒャルト・ゾルゲの半生を描いた作品ですが、実話に基づくため日本人も出演しています。 どんな作品なのでしょうか?

     

リヒャルト・ゾルゲ

BGMはマレーネ・ディートリヒが歌う「リリー・マルレーン」。
映画『スパイを愛した女たち リヒャルト・ゾルゲ』は、この歌が流行った太平洋戦争前夜が舞台の話です。

リヒャルト・ゾルゲはナチス・ドイツの新聞社特派員として東京に駐在した人物でしたが、実はヨシフ・スターリン率いるソビエト連邦共産党のスパイでした。

ヨーロッパではナチス・ドイツがポーランドに侵攻して、まさにソ連も攻めようという状況。
ソ連が知りたいのはドイツがいつ動くのかということでした。

当時ドイツの同盟国だった日本は、中国に傀儡国家の満州を作っていました。
この満州を足掛かりに、ドイツに呼応してソ連に攻めるのか、あるいは資源を求めて、フィリピンやマレーシアへの南進政策をとるのか…日本の動きもソ連の関心となっていました。

ゾルゲはドイツと日本の情報を本国に連絡する密命を受け、日本で諜報活動をおこないます。

ゾルゲの魅力で作られた大諜報団

小堀「このゾルゲという人、映画を観ても思うんですが、とても魅力的な人物で、会った人を魅了するところがあったようです」

日本ではいろんな人脈を築いて、俗に「ゾルゲ諜報団」という大スパイ組織を作っていたそうです。
主力メンバーの中には、朝日新聞記者の尾崎秀実がいました。当時、日本随一の知識人、日本の頭脳として知られ、政府のブレーンも務めていました。

尾崎自身も共産主義に共鳴する人物で、ゾルゲとも急速に繋がっていき、人脈を広げながら情報を取っていきます。

小堀「ゾルゲその他が逮捕された時には、尾崎秀実でさえもゾルゲのスパイ団だったのかと、日本中がてんやわんやの大変な騒ぎになりました」

ゾルゲと女性たち

このゾルゲは、ドイツ特派員という立場を利用して、在日ドイツ大使公邸にも頻繁に出入りして親交を深めていき、雑談からドイツ側の機密を入手してはソ連へ送ります。

小堀「映画を観ると、ドイツ大使の奥さんがゾルゲの元カノなんです。女にもモテるんですね。ややこしい感情も絡んできます」

事実は小説よりも奇なり。フィクションである007ジェームズ・ボンド並みにモテていたようです。

タイトルに『スパイを愛した女たち』とあるように複数の女性が登場します。
ビアガーデンの歌手で、ゾルゲと東京で同棲してい花子もそのひとりです。

花子を演じる女優は中丸シオンさん。
『ウルトラマンネクサス』など様々なドラマや映画に出演し、今後の活躍も期待されていましたが、昨年38歳で亡くなりました。
中丸さんが「リリー・マルレーン」を歌うシーンに小堀は感銘を受けたようです。

冷酷なスターリン

思想犯を取り締まる特高警察や軍隊が目を光らせる中、活動を続けていくゾルゲ。

小堀「つらくもいつも逃れている。スパイの生活は常に綱渡りです。ハラハラドキドキがいっぱいあります」

ソ連本国ではゾルゲの情報を受け取って分析します。
その情報は確かなものでしたが、当のゾルゲには日本側からすでに目を付けられている気配がありました。

ソ連は日本と不可侵条約を結んでいたので、諜報活動が公になると関係が悪化します。
この時、スターリンはこう冷然と言い放ちます。

「もしバレたら切ればいい。彼はただのスパイだから」

ロシア、ウクライナ、中国が合作

戦後、ニキータ・フルシチョフがスターリンの独裁と恐怖政治を暴露して最高指導者に就きました。
1961年には日仏合作の映画『スパイ・ゾルゲ 真珠湾前夜』が公開されました。
この映画をきっかけに、ゾルゲは評価され、ソ連邦英雄の称号が与えられました。

2010年には、プーチン大統領はタス通信とのインタビューで「高校生の頃、ゾルゲのようなスパイになりたかった」とまで語っています。

小堀「今回は違った視点のゾルゲ映画になっています。というのも、ロシア、中国、ウクライナの合作。つい最近までロシアとウクライナは一緒に映画を作っていたんですね」

この作品は2019年に制作された12話の連続テレビドラマです。
2話分が一本の映画としてまとめられ、計6本がマラソン上映されています。
現在のところ東京での上映は終わりましたが、名古屋ではこれからです。

映画『スパイを愛した女たち リヒャルト・ゾルゲ』はDVDでも発売されています。
日本でその生命を散らしたスパイの半生、気になった方はこの機会にぜひご覧ください。
(尾関)
 

小堀勝啓の新栄トークジャンボリー
2023年05月28日11時02分〜抜粋(Radikoタイムフリー)