身近な疑問・質問・お悩みを解決する『北野誠のズバリ』(CBCラジオ)の「ズバリ法律相談室」のコーナー。 5月15日の放送に寄せられたのは、「遠方に就職した娘が年上の女性からセクハラを受けた」というお悩みです。「どう対応すればいいのか」とお悩みのAさんに、オリンピア法律事務所の原武之弁護士がアドバイスを送りました。

     

既婚女性からいきなりキス

新人研修で35歳の女性の先輩に親切に指導してもらったというAさんの娘さん。

休みの日に実家の田植えを体験させてもらったり、遊びに連れて行ってもらったりして、Aさんの娘さんはそんな先輩を尊敬していたそうです。

「それが、ある日遊びに行った帰りにいきなりキスをされたそうです。その先輩は『一か八かやってみた。結婚はしているけど女性が好き』と言ってきたそうです。娘はただただ驚き、抵抗できなかったためか、相手は受け入れられたと思っているようです」(Aさん)

職場は同じ県内ではないので、顔を合わせる機会は少ないそうですが、「どうしたらいいか、どうやって断ったらいいかわからない」と困っているといいます。

「この女性の先輩に対し、どう対応したらいいと思いますか?」(Aさん)

ハラスメントの相談が増えた理由

原弁護士によると、セクハラやパワハラの相談は年々増えつつあるとのこと。

最近はマスコミに取り上げられることも多くなったため、かなり増えたという実感があるそうです。

北野「ニュースを見て、『うちもやっぱりこういうのを言った方がいいよね』っていう風になってきたんでしょうね」

今までは抑圧されていた人、言っても仕方がないと諦めていた人が、自分と同じ似たような境遇の人の話を見聞きして、声を上げることが増えたと考えられます。

強制わいせつにも

職場でのセクハラは、いくつかの概念に分けることができます。

相手が望まない性的な言動をして不快な思いをさせる「環境型セクハラ」、不快な態度を取ったことで、その後の仕事に不利益を生じさせる「対価型セクハラ」など、さまざまな類型があるそうです。

今回のAさんの娘さんの場合は、性的なことを求めてきたことから「環境型セクハラ」に当たります。

原弁護士「いきなりキスしたりということになると、強制わいせつとも言えると思いますね」

「そういう性的指向はない」

今回は女性同士ですが、ハラスメントに性別は関係ありません。

北野「言葉だけでなく行動にも表してるから、間違いなくセクハラの認定を受けますよね」

原弁護士「この件はそうですよね。でも難しいのは、相手が近い存在の尊敬している先輩だっていうことが、なかなか言いにくいんだろうなと思います」

それではAさんの娘さんはどう対処していけばよいのでしょうか。

原弁護士「本人に直接『私はそういう性的指向はない』『性的なことは考えていない』とはっきり言うのが大切ですよね」

北野「それでも迫ってきたりすると、これはもう社内の相談窓口ですかね」

職場にはこういった相談窓口を設け、対応する決まりがあります。

原弁護士「上司とか相談窓口に相談するのが一番ですね」

まずは相談窓口へ

北野「事業主もそういう対応を取らなければいけないんでしょ?」

原弁護士「放置したら、それだけで社長が解任されてもおかしくないということです」

一般的な企業にはセクハラの相談窓口を設置することが義務付けられていますが、中小企業など設置されていない場合に備えて、労働局にも相談窓口があるそうです。

北野「いきなり訴訟はちょっと難しいですからね。とりあえずはそちらからと」

原弁護士「いきなり訴訟はやっぱり身近なので、ちょっとハレーションが大きすぎるかなと思うんですよね」

これ以上しつこくされるようであれば、まずは職場の相談窓口に相談すべき、ということでした。
(minto)