6月21日、岸田首相は記者会見で「生活への支援対策」を発表しました。我々の生活に直結する「物価高対策」を、2段構えで行うそうです。 第1弾は電気代・ガス代の補助やガソリン補助金の継続、第2弾は物価高の中で食費の高騰などに苦しむ年金世帯や低所得世帯への給付金です。 6月24日放送の『CBCラジオ #プラス!』では、CBC論説室の石塚元章特別解説委員がこの政策の裏側にある目論見について解説しました。

     

8月から3ヶ月間の補助金再開

5月で打ち切るはずだった電気・ガス料金の補助を、8月から3ヶ月間の期間限定で再開するという発表がありました。

この補助金は、ロシアによるウクライナの侵攻で燃料の価格が高騰した影響で、2023年の1月使用分からスタートしたもの。

平均的な家庭でみると、電気代・ガス代ともに月平均で約2,000円の削減につながりました。政府はこれまで、4兆円近くのお金を投入してきた試算ということです。

補助額はこれまで段階的に縮小されており、今年の3月には液化天然ガス(LNG)と石炭の価格が、ロシアによるウクライナ侵攻前までの価格に下がったため、5月使用分での終了を決めていました。

改めて今回、8月から3ヶ月間の補助を行うことになり、6,000億円前後の財源が必要になる見込みという話です。

国民が理解すべきこと

燃料の価格が上がったことで政府は補助金を投入してきましたが、それが元々の水準に戻ったため、補助金の打ち切りを決定。

もっと上がるはずだったものを国の補助金で抑えていただけのことで、それが元に戻っただけ。「値上がり」と感じる必要はないはずです。

それではなぜ総理は、再び補助金の投入を決定したのでしょうか。

石塚「やっぱり、自分はもうちょっと総理をやってたいなっていう」

自民党総裁の任期は今年の秋まで。9月には総裁選があります。

石塚「もうちょっとやりたい。いま支持率も低い。国民に『えー?何か料金上がるじゃない!』って言われたくない」

国民に値上げの事情を説明するよりも、わかりやすく「補助金を出す」方が、国民の賛同を得られるという思惑があるようです。

石塚「国民としては料金が下がるので嬉しいんだけど、そういう構造になっているという理解が必要です」

表の理由、裏の理由

補助金を出すときは決めやすいものの、問題は「良くなってきたから止めましょう」という場合。

「元に戻ったから」という理屈は通っているはずなのに、国民側からすると「補助金が終わる」という事実ばかりに目が行ってしまうものです。

財務省の幹部からも「再開するなら、5月に辞めたことが間違いとなってしまう」とコメントが出ています。

石塚「唯一説明が付くのは、ちょっと無理筋で『だって今年は猛暑・酷暑になりそうだから。エアコンとか使うでしょ皆さん』。っていうのを理由にしてますけど、多分それは表向きで、大きい理由は『支持率下がってるもんな〜』っていうところじゃないかなと思いますね」

注目を集める総裁選

国会が閉会して報道がより活発になってきているのは、やはり総裁選の動きです。

総裁選まであと3か月ですが、「ここで何が起きるかわからない」と石塚。

岸田首相は経済対策の第2弾として、年金受給者らに給付金を配ると発言しています。

石塚「それを先週末の会見でおっしゃったということは、総裁選に出るとは言ってないけど
、『まだまだやる気あるよ』というのをさりげなく言ってるということ」

自民党総裁、つまり日本の総理大臣を決める選挙に、大きな注目が集まっています。

石塚「茂木(敏充)さんは昔からやりたい」

光山雄一朗アナウンサー「岸田さんは、その茂木さんに少し警戒感を示しているとか」

石塚「麻生(太郎)さんは、岸田さんをずっと推してきたんだけど、この間いろいろ問題を起こしちゃったんで、『岸田さんと麻生さんは仲悪いよ』って言われてる。けど、私はあの仲悪いのはひょっとするとポーズかなと思ったりもする」

世論調査との違い

岸田首相に対して本当に怒ってはいるものの、キングメーカー麻生氏としては、世論調査で人気がある石破(茂)さんを首相にならせるわけにはいかないという事情があるようです。

石塚「そうすると麻生さんは誰かっていうと、岸田さんでうまくいけば岸田さんで推してやろうかと思うところもあるし。でも最近だと、菅(義偉)さんという人も出てきてる」

菅さんは、小泉(進次郎)さん、石破さん、河野(太郎)さんの「小石河連合」を推しています。

石塚「世論調査で『石破さん』という人が多いのは確かなんだけど、自民党の総裁なので、自民党の議員と自民党の支持者が選ぶんですよ。だからちょっと全体の世論とはまた違うところがあって」

総裁選への実績作りかといわれている、8月からの電気・ガスの補助金についての話題でした。
(minto)