ボカロ楽曲はプロアマ問わず日夜多数の楽曲が投稿されており、特にソフトウェア『初音ミク』では、一説によるとこれまでに60万曲を超える楽曲が制作されていると言われます。 また楽曲タイトルにも、意外な言葉が使われているものもあります。 5月19日放送のCBCラジオ『RADIO MIKU』で紹介された楽曲も、ちょっと驚くようなタイトルです。 清水藍と斉藤初音アナウンサーがこの曲のタイトルについて語ります。

     

意味深なタイトル

この日のオープニング楽曲は、世界最大のボカロ楽曲レーベルKARENTより選曲した「畜生道」(メキメキ地蔵 feat. 鏡音リン&鏡音レン)。

斉藤「おしゃれで寂しげな音ですね。掠れているようなレン君の声と、ぽつぽつと歌うリンちゃんの声が切ないなと思います」

そして注目はタイトルの「畜生道」。斉藤はこの意味についても調べたそうです。

これは仏教用語で、悪行を働いた人が死後に堕ちる世界のこと。「畜生道」では、悪行を働いた人が動物に生まれ変わるそう。
動物だからこそ味わう苦しみの世界なんだとか。
ちなみによく聞く「地獄」は畜生道よりもさらに下、最下層は「地獄道」と呼ばれるそうです。

目先の利益や欲を優先して理性が働かず、いろいろなものが壊れていく苦しみを味わうとされています。

この歌詞にも「鋭い歯」「二人六脚で逝く畜生道」など、動物を連想させるような言葉が散りばめられていて、欲を優先したが故の地獄や、そこから抜け出せない苦しみが表現されているのではとのこと。

絶望的な歌詞とリンレンの対比

清水も、サウンドの奥からにじみ出る絶望や無力感・敗北感、そしてリン・レンの高音と低音の対比がいいと話します。

清水「『鏡映し』とか歌詞の仕掛けもあって、『二人六脚』のところも、この二人が助け合ったりしているのかな、とか想像することができますよね」

罠や棘が多い世界から心を守るためにあえて自己否定をして、自分を守る壁がいつしか牢獄になったとしても、その中で自分の心がバラバラになったら、欠片を集めて新しい自分を形作ればいいのでは、とも感じたと語る清水。

仏教用語だけでなく、リン・レンが歌っていることや、歌詞の言葉ひとつひとつから深い意味が読み取れる、意味深な楽曲です。

楽曲について普段と違って真面目に語り合う様子は、珍しく教養番組のようです。

供養の意味を取り違え?

エンディングで紹介されたのは、「冷たいトレモロ」(tilt-six feat. 初音ミク)。
この楽曲がリクエストされた背景にはこんなエピソードがあったようです。

昨年末、友人にボカロ好きの彼女ができたというAさんですが、やがてその友人からのろけ話ばかり聞かされるうちに苦しくなり、一方的に縁を切ってしまったとのこと。

「前の放送で、あい先輩(清水)が『立ち直るために、あえて一度病む』という趣旨のことを仰っていたのを思い出したので、やり場のない気持ちとも決別して、またひとりで歩いていけるようなこの曲をリクエストしました。

その友達は『らじみく』(この番組)を聴いていないと思うので、誰にも言えなかったこの気持ちを、リクエスト曲と一緒に番組で供養してくれたらと思います」(Aさん)

ここでも期せずして「供養」という仏教用語が書かれています。

清水「なるほど、『供養』という言葉は、確かにこういう使い方が一番正しいんだなと学びましたね」

斉藤「我々は『らじみく通信』(ネット配信番組)で、番組内で紹介できなかったメールを紹介することを『供養』と言っておりました」

実際の配信では「供養」の他、ラジオ放送で読まれないボツ投稿だから「死刑宣告」とも呼んでいるそうです。
(葉月智世)
 

RADIO MIKU
2023年05月20日00時00分〜抜粋(Radikoタイムフリー)