今回は、2019年の全日本ジュニア王者である出澤杏佳を紹介します。プロフィール、使用用具、プレースタイルなどの基本的な情報から、国際大会での戦績についても触れていきます。

出澤杏佳とは?

出澤杏佳は、2年連続で全日本選手権一般の部ベスト16入りを果たすほか、2019年の同大会ジュニア女子シングルスで初優勝を飾るなど、最も勢いのある若手選手の一人です。国際大会やTリーグにも参戦し始め、さらに実力に磨きをかけています。

フォア面に表ソフト、バック面に粒高ラバーという珍しい組み合わせで幼いころから全国大会で活躍するなど、その類まれな才能やセンスを評価されてきた選手です。その戦い方は格上相手をも困惑させます。

出澤杏佳のプロフィール

出澤杏佳(いでさわきょうか)は2002年6月28日生まれの21歳(2024年4月時点)で、茨城県水戸市出身です。父と兄の影響で小学1年生からスポーツ少年団で卓球を始めました。卓球を始めた当初はシェーク裏裏のオーソドックスなスタイルでしたが、小学1年の冬に「日立大沼卓球」に加入し、小貫美穂子コーチの勧めで現在のフォア表ソフト、バック粒高ラバーのスタイルへ転向します。

表粒のスタイルに転校してから3か月ほどで全日本選手権バンビの部茨城県予選で優勝を果たすと、小学4年時には全日本選手権カブの部で準優勝に輝き、注目を集めます。

小学校卒業後は親元を離れ、全国屈指の名門・四天王寺中学に進学します。しかし、ハイレベルな練習環境への適応に苦しみ、一時期はカットマンへの転向を試みますが、最終的には中学2年時に退学。地元・茨城へ戻り、再び小貫コーチの下で指導を受けるようになりました。

このように中学時代に大きな挫折を味わった出澤ですが、2019年の全日本選手権で飛躍を遂げます。ジュニア女子シングルス4回戦で小塩遥菜に勝利すると、準決勝で長﨑美柚、決勝では大藤沙月を下し、ジュニアの部で初優勝を果たします。さらに、一般女子シングルスでも平野美宇を倒してランク入り(ベスト16)を果たし、大きな話題となりました。

出澤杏佳
写真:出澤杏佳/撮影:ラリーズ編集部

その活躍が認められ、高校3年時には長﨑らとともに世界ジュニア選手権日本代表に選出され、女子団体銀メダル獲得に貢献しました。

出澤杏佳
写真:出澤杏佳/撮影:ラリーズ編集部

また、2019-2020シーズンからTリーグにも参戦し、2019-2020シーズンと2020-2021シーズンはトップおとめピンポンズ名古屋に、2021-2022シーズンからは九州アスティーダに所属しています。

木村香純/出澤杏佳(専修大)
写真:木村香純と出澤杏佳/撮影:ラリーズ編集部

高校卒業後は関東の名門・専修大学に進学し、1年時には関東学生選手権女子シングルス優勝、全日学女子ダブルス準優勝の成績を残しました。そして、3年生となった2023年には、FISUワールドユニバーシティゲームズ(旧ユニバーシアード)に出場し、女子シングルスで銀メダル、混合ダブルスで銅メダル、女子団体で銀メダルを獲得しました。特に、女子団体決勝の中国戦では現役の中国代表の銭天一(チェンティエンイ)と何卓佳(フーズオジャー)を撃破し、強烈なインパクトを残しました。

また、同年の全日学ではシングルスで初の優勝、全日学選抜でも優勝を飾り、充実のシーズンを過ごしました。

そして、2024年の全日本選手権ではランク決定戦(ベスト16決定戦)で、パリ五輪選考レースが佳境を迎えていた伊藤美誠(スターツ)に敗れたもの、フルゲームまで追い詰める健闘を見せました。

出澤杏佳のプレースタイル

出澤杏佳の戦型は右シェーク表粒の異質攻守型で、バックハンドでの変化を活かしたブロックとプッシュ、フォアハンドでの隙を狙ったスマッシュが特徴です。

両面に異質ラバーを貼る選手は世界の中でも希少で、なかなか見かけることはありません。その希少性から対策の取りづらい選手と言えます。バック面に粒高を使用するトップ選手もカットマン以外の戦型の選手の中ではとても珍しく、国際大会に出場すると球質が合わないため予想外の展開が生まれやすくなります。

2020年の全日本選手権では、東京五輪代表候補の平野美宇に4-1で勝利して2年連続のベスト16入りを果たすなど、番狂わせを起こすことができる選手と言えます。

また、出澤はラケットを回転させて瞬時にフォア面とバック面を入れ替えることがあります。バックハンドでは粒高の変化を用いたブロックやプッシュを多用しますが、ラリーの中でさらに変化をつけるためラケットを回転させて、表ソフトで打球し相手のミスを誘っています。

出澤杏佳の使用用具

出澤杏佳はVICTASの契約選手で、ラケットは不明、ラバーはフォア面にVICTASの『VO>102』、バック面にVICTASの『CURL P5V(カール P5V)』を使用しているそうです。

出澤杏佳の世界ランキング

出澤杏佳は2023年6月現在で世界ランキングを持っていません。過去には国際大会に出場していたこともあり、最高ランキングは294位(2020年2月)です。

出澤杏佳の国内大会での主な成績

2012年全日本選手権(カブの部)女子シングルス:準優勝
2015年全日本選手権(カデットの部)13歳以下女子シングルス:ベスト4、女子ダブルス:ベスト4
2016年全中女子シングルス:ベスト32、女子団体:ベスト4
2019年全日本選手権女子シングルス:ベスト16、ジュニア女子シングルス:優勝
インターハイ女子シングルス:ベスト8、女子ダブルス:ベスト8(ペア:小林莉歩)
2020年全日本選手権女子シングルス:ベスト16
2021年関東学生選手権女子シングルス:優勝
全日学女子ダブルス:準優勝(ペア:木村香純)
2022年全日学女子シングルス:準優勝
2023年東京選手権女子シングルス:3位
全日学女子シングルス:優勝
全日学選抜女子シングルス:優勝
2024年東京選手権女子シングルス:準優勝

出澤杏佳の国際大会での主な成績

2015年東アジアホープス選手権女子シングルス:ベスト4
2019年アジアジュニア&カデット選手権ジュニア女子シングルス:準優勝、女子ダブルス:ベスト4、女子団体:ベスト4
世界ジュニア選手権女子団体:銀メダル
クロアチアオープンU21女子シングルス:ベスト4
2023年FISUワールドユニバーシティゲームズ女子シングルス:銀メダル、混合ダブルス:銅メダル(ペア:宮川昌大)、女子団体:銀メダル

まとめ

異色の組み合わせで自らのプレーを創作する期待の若手が、国内そして国際大会でどのようなプレーを見せてくれるのか。今後の彼女の活躍に目が離せません。

文:ラリーズ編集部