転職サービス「doda」などを提供するパーソルキャリアが、プロフェッショナル人材の総合活用支援サービス「HiPro」において、企業間の副業を推進する『相互副業プロジェクト』を2024年5月22日から行うと発表。業界初となる「相互副業マッチングプラットフォーム」も今夏にリリース予定ということで、都内で事業戦略発表会が行われました。発表会では、プロ人材市場の現状や課題、そして2022年から行われてきた「企業間での相互副業実証実験」の結果が示されました。また実証実験に参画した企業の方を迎えてトークセッションも行われ、具体的な事例や感想なども語られました。

プロ人材市場の現状と課題

パーソルキャリア㈱執行役員「HiPro」編集長 兼「HiPro」事業責任者 鏑木 陽二朗さん

「HiPro」は、サービス開始から現在まで2万件を超える企業とプロ人材のマッチングに携わり、鏑木さんは「企業が抱える複雑で高度な経営課題を、経験やスキルを持つ人材の活用を通して課題解決を支援してきた」とのこと。

また、2023年から開始した地域企業、および経済の発展への寄与を目指す「スキルリターン」を通じ、人材不足という経営課題に直面する地域企業と、都会ではたらく副業人材がタッグを組んだ多くのプロジェクトを誕生させました。こうした活動を通じて、副業は人材不足、そして、それに伴い生じるさまざまな課題を解決に導く手段になりうると、確かな手応えを感じているそうです。

一方で、日本の副業市場をみると、2022年に政府が「副業や兼業に関するガイドライン」を改定し、後押ししたこともあり、2022年時点の企業の副業解禁率は50%を超え、自社社員の副業を容認する動きは強まったものの、企業の副業受け入れ容認は16.4%、さらに会社員の副業実施率は7%に留まり、副業人材を受け入れる企業は一部に限定されているのが実情だそうです。この背景には「情報セキュリティ面での不安」や「受入れのための仕組み(制度)が整っていないことによる不安」など、活用経験がないことから生じる不安の壁が存在しているのだとか。そこで、企業が抱える不安を取り除き、安心して副業人材を活用できる環境を用意することで、多くの企業にとって副業人材活用が当たり前になることを目指して、企業間での副業を推進する「相互副業プロジェクト」を新たに発足させたそうです。

「企業間での相互副業実証実験」の実施

「相互副業プロジェクト」開始を前に、2022年、パーソルキャリアを含む計23社で「キャリアオーナーシップとはたらく未来コンソーシアム」を発足。コンソーシアムの取り組みの一つとして「企業間での相互副業実証実験」を実施し、これまでに計28社114案件128名のマッチングが実現。

この実証実験の結果について鏑木さんによると、「受け入れた副業者に対する満足度が非常に高い。多くの企業が満足していて、また使いたいと思っている。つまり最初の1歩を踏み出すことができれば、企業にとって、副業者をはじめとした外部人材活用というものが比較的有益な選択肢になる可能性を秘めているとわかった」と述べました。

また、相互副業は企業間同士の公式な副業であることから、「情報管理」「副業実践者・受け入れ企業の心理的安全性」が担保されるとともに、副業人材の受け入れにより多様な人材の確保が実現することや、副業実施社員の成長(リスキリング)により、送り出し企業の成長にもつながるという。こうした効果は両社のイノベーション創発、さらには、人的資本経営の実現につながると捉えているのだとか。そこで、相互副業をより多くの企業に活用してもらい、副業の裾野を広げることを目的に「相互副業プロジェクト」では、「相互副業」で誕生した先導的事例を①イノベーション創発 ②人的資本経営 ③社員のリスキリングの観点から、特設サイト等を通じて情報発信するとともに、業界初となる「相互副業マッチングプラットフォーム」をリリース。企業、そして企業に属する個人双方が、安心して一歩踏み出す機会を提供し、副業がもつ効果を多くの企業に広めていくそう。

相互副業マッチングプラットフォーム

2024年7月には相互副業マッチングプラットフォームをプレリリース。自社の副業希望者の受付、他社からの副業受け入れの募集、相互副業実践企業同士のクローズ環境でのマッチング、副業の活動管理、副業人材の送り出し・受け入れを通したスキルの可視化までを一貫して実現するそう。鏑木さんは「特定企業間での人材のシェアリングというものをシステム上で実現するツール。発注元、送り出し元、相互の環境の中でそれぞれの社員のシェアリングがプラットフォーム上で進めることができる環境を整えることで、企業間の人材シェアリングというものを力強く進めていく、その手助けにしていきたい」と話しました。

発表会では、「キャリアオーナーシップとはたらく未来コンソーシアム」で相互副業を実施した明治ホールディングス㈱グループ人事戦略部 人事戦略グループ グループ長 大河内 淳さんと、兼松㈱人事部 人材開発課 課長 塚本 達雄さんを迎えてトークセッションも行われました。

実際の案件内容や、体験したからこその率直な感想などが語られました。

明治ホールディングス㈱グループ人事戦略部 人事戦略グループ グループ長 大河内 淳さん

「人的資本投資と言われている中で、人材戦略として多様性などを掲げて副業含めて色々な取り組みをしていこうということで参画した。トライアルということでハードルが低く、大企業が多く安心感があった。副業を体験した社員は、自身の外部競争力を体感することで自信をつけ、次なるチャレンジに踏み出せる。一方、受入れ側としては、生きた情報をピンポイントでもらえるというのがとても良かった。受け入れ、送りだし含めて、社内で広く展開していきたい。外に出て、自分の立場もしくは会社の立場を外から見るっていうのはかなり大事なこと。副業を含めた越境体験っていうところを社員に経験してもらって、その経験を会社の工業に活かしていくようなスキームを作ることができたらいい」と参画した経緯や、実施した感想を話しました。

兼松㈱人事部 人材開発課 課長 塚本 達雄さん

「企業としての成果と個人としての成果がある。副業を体験した社員が言っていたのは、自社の取り組み自体が当たり前だと思っていたけれども、これって意外とすごいことだなと気付いた。気付いたことで、組織としても帰属意識を高めてもらった。客観的に市場から見た自分のスキル、能力がどういう位置付けにあるのかというのを本人も意識したことで、スキルアップに繋がるなど、個人としても成果があったのかなと思う。自分のやっている仕事が市場から見た時にどのぐらいのレベルなのか知る、体感できる機会としても有効だった。受け入れ側としては、悩み事、失敗事例みたいなところを、他社さんのご経験をいただくというところは、すごく会社にとってメリットがあった」とし、今後も取り組みを進めていきたいとコメントしました。

「労働人口の減少」「GDP4位に後退」など、日本経済は低迷が続き、各国との競争力に課題を抱えている状況下では、日本経済をけん引する企業の活性化が必要だそうです。そのためには、多様な人材の確保、社員の成長(リスキリング)の必要で、副業やフリーランスのプロ人材活用が認知されるようになった今だからこそ、自社社員に限らず、幅広い人材が戦力となり、会社を成長させてくれる、新しい時代をつくっていく必要があると鏑木さんは話していました。実際に相互副業を実施した感想を聞いてみても、思い切ってやってみたことで、個人としてのスキルの向上、それぞれの会社の課題の解決など、良い点が多くあり、一人ひとりのスキルや能力が、このプロジェクトを通して、広く社会や日本経済の戦力になっていくのだと感じました。

プロフェッショナル人材の総合活用支援サービス「HiPro」とは

コロナ禍でリモートワークが普及・浸透したことなどにより、はたらき方や雇用のあり方が大きく変わってきています。企業を取り巻く環境も劇的に変化し、産業構造も変わりつつある中、複雑なビジネス課題を解決するためには、企業と従業員の雇用契約だけでは対応しきれない状況も生まれています。こうした現状を変え、新しい人材活用(タレントシェアリング)を当たり前にするために誕生したのが、「HiPro(ハイプロ)」。「HiPro」は「スキルを解放し、社会を多様にする。」をパーパスに、企業は課題解決に必要な人材と出会うことができ、個人は自分のスキルにあったプロジェクトを探すことができる、業界初のプロフェッショナル人材の総合活用支援サービスです。

< https://hipro-job.jp/ >