2021年、日本のジェンダー問題がかつてないほど大きく取り沙汰された。東京オリンピック・パラリンピック大会組織委員会前会長・森喜朗氏が女性差別発言をきっかけに辞任。一連の騒動は沈静化したようにも見えるが、真に目指すべきゴールは「日本社会におけるジェンダーギャップの解消」であり「社会のアップデート」だ。そのためにはまず、私たち一人ひとりがジェンダーについて「知る」ことが全ての第一歩になるだろう。
女性のエンパワーメントを目指しジェンダー問題に向き合うクリエイティブディレクターの辻愛沙子さん、女性アスリートに寄り添いながらさまざまな問題に向き合ってきたスポーツドクターの辻秀一先生と共に、どうすればジェンダー平等を達成できるのかを考えていくこの企画。

前回は、なぜ日本社会とスポーツ界はジェンダーギャップが根深いのかを見てきた。今回は、日本の国内競技連盟で唯一、女性がトップを務めるバスケットボール界の改革を見ながら、具体的な解決の方法を考えていきたい。

(進行・構成=阿保幸菜[REAL SPORTS編集部]、サブ担当=野口学[REAL SPORTS副編集長])
(2021年1月15日収録)

ジェンダーギャップの目立つ日本スポーツで、なぜバスケ界は改革できたのか?

――前編(4月9日公開『日本の遅れたジェンダー不平等はどうすれば解決できる? 社会とスポーツに共通する根深き問題<辻愛沙子×辻秀一と『知る』今さら聞けないジェンダーのこと>』)で話してきたように、スポーツ界においても一般社会においても、下図における、①選手や社員といったプレーヤー層は、参画率という面ではすでにある程度の男女平等が達成されていますが、②指導的な立場にある中間層、③組織・団体を運営する運営層は、圧倒的に女性比率が低い状況です。


 スポーツ界では、IWG(国際女性スポーツワーキンググループ)が2014年の世界女性スポーツ会議で発表した「ブライトン・プラス・ヘルシンキ宣言」から意思決定に関わるポジションの女性の割合を2020年までに40%以上にすることを目標に掲げており、IOC(国際オリンピック委員会)は現在37.5%で未達ではあるもののかなり進んできています。一方で、JOC(日本オリンピック委員会)の女性役員は21.4%しかいません。

 このような現状において、オリンピック種目の国内競技連盟で唯一、トップに女性が就いているのが日本バスケットボール協会(JBA)で、2016年に三屋裕子さんが会長に就任しています。また役員の女性比率は33.3%で、ブライトン・プラス・ヘルシンキ宣言の40%には到達していませんが、国内競技連盟の中ではかなり高い水準となっています。

(※今年2月、恒久的ではなく時限的な組織ではあるが、東京オリンピック・パラリンピック大会組織委員会の会長に橋本聖子氏が就任した)

辻愛沙子(以下、愛沙子):日本の上場企業の女性役員(③)の割合は2020年で6.2%といまだに極めて低いのが現状です。そのうち、女性社長の比率はわずか1%。経営層・運営層に関しては、一般社会でもスポーツ界でも日本ではなかなかジェンダーギャップが埋まらない中で、なぜJBAでは女性が活躍できているのですか? スポーツ素人の立場から見ると、一般社会においても学びになるのではないかと感じます。

JBA会長に女性である三屋裕子さんが選ばれた、本質的な理由

辻秀一(以下、秀一):まず、バスケットボール界はもともとJBL(日本バスケットボールリーグ/後にNBL)とbjリーグ(日本プロバスケットボールリーグ)という2つのリーグが並立していたのですが、2008年にFIBA(国際バスケット連盟)から、「1国1リーグが理想。(JBLとbjリーグの)統合が望ましい」との要望を受けて、話し合いをずっと続けてきたもののそれぞれの思想がどうしても異なるため何年間も1つになれない状況が続いていました。再三にわたって統合を促しながら実現に至らず、しびれを切らしたFIBAはついに厳しい制裁を下しました。全ての国際試合の出場を無期限で禁じるというもので、このままではリオデジャネイロ五輪や開催国の東京五輪にも日本代表が出場できないという事態に陥ったのです。

 そこで、初代チェアマンとしてJリーグの創設に剛腕を発揮し、日本サッカー協会(JFA)の会長を務めた経歴も持つ川淵(三郎)さんが登場して、2つのリーグを1つにするのは困難だから、まったく新しいリーグを創るといって、2016年に現在のBリーグが誕生したんです。

 さらにリーグ運営にあたって、ガバナンスの効かない既得権益を排除するために、バスケットボール界にまったくしがらみのない川淵さんが初代Bリーグチェアマンとなり運営組織も一新されました。その後JBAの会長に就任し、翌年3月の臨時評議員会で次期会長に女性である三屋裕子さんが選出されたのです。男性・女性といった性別ではなく、今後もガバナンスの効いた「透明性のある組織」を運営するのに最も適したのは誰かという視点から三屋さんが選ばれたんですね。

バスケ界の外側から川淵氏を連れてきたのは誰だったのか?

――指導者(②)に関しては、多くがその競技を経験した人がなるという構造がありますが、運営層(③)に関していえば、その競技を経験したことがあるかどうかではなく、組織運営に必要な能力・資質を持っているかどうかで選ぶことが可能だということですよね。実際川淵さんはサッカー、三屋さんはバレーボール出身ですし、理事の中には競技経験のないビジネス界の人も多く選ばれています。

愛沙子:川淵さんがBリーグを立ち上げた際のことを一般企業に例えると、「次期取締役社長を派閥争いをしていた社内の人ではなく社外から連れてきました」というようなことですよね。その判断って、一般企業の場合だと前取締役社長だったり取締役会で決めるじゃないですか。川淵さんに関しては、誰のどういう判断で決めたんですか?

秀一:FIBAですね。NBLとbjリーグのトップが散々話し合ってきたけどいつまでたってもらちが明かないと。それでFIBAがタスクフォースを立ち上げて、そのトップに川淵さんを指名したんです。

 余談なんですが、川淵さんがJリーグのチェアマンをされていた頃にお会いしたことがあって、「この世の中にはサッカーより面白いスポーツが存在するんですよ。それがバスケットボールです」と言って、チェアマン室にバスケットボールを置いていったんですよ。その時のことが川淵さんの潜在心理に働いて、バスケットボール界の改革に乗り出したのかもしれないと思うと、実は僕が陰の功労者なんじゃないかと思っています(笑)。

愛沙子:そう考えると、やっぱり組織を大きく改革するにはスクラップ・アンド・ビルドしかないのかなと感じますね。2つのリーグを融合するのではなく、ゼロイチで新しくリーグを創るしかなかったという話もそうですし。

秀一:そう思います。経営(③)に関してはそれが可能ですし、各競技連盟もそこに気付き始めているように思います。だからジェンダーギャップの解消もある程度進めやすいレイヤーだとは思うんですが、やっぱり指導者(②)に関してはなかなか根深くて難しいように感じてしまいます。

女性指導者が増えない根深い理由

愛沙子:一般企業で考えると、マネジメント層(②)の人事を決めるのは役員などの経営層(③)ですよね。ということは、経営層にジェンダーバイアスがある状態だと、マネジメント層のジェンダーギャップが解消されない。組織を変えていくためにはやっぱり経営層が変わるしかないんじゃないかなという気がしているんですけど、スポーツ界では監督やコーチといった指導者(②)の人事を決めるのはどのポジションの人になるんですか?

秀一:GM(ゼネラルマネージャー)ですね。成績が悪いときに監督を解任するかどうかの判断をするのもGMの役割です。

愛沙子:GMというのは経営側の役職(③)ですよね? では、なぜGMの人は女性指導者(②)を選ばないのでしょうか?

秀一:やっぱり女性アスリートが、現役時代から自分のキャリアの先に監督・コーチがあると教育されていませんし、結婚や出産によって競技から離れざるを得ないという現状もあって指導者としてのキャリアを積む機会が圧倒的に少ないわけです。やはり特に監督は成績という目に見える結果が求められるポジションで、指導者としてのキャリアを積んでいないと難しい。

 例えば愛沙子さんがJリーグやBリーグのチームの社長(③)をやったら面白いと思いますし、実際できると思うんですよ。でも監督(②)になれって言われてもたぶん難しいですよね。

愛沙子:はい。ルールもちゃんと分かっていない気がします……(笑)。

秀一:そうですよね。運営層(③)は外部から連れてくることが可能なことは川淵さんや三屋さんの例を見ても確かなんですけど、指導者(②)はそれが難しい。さらにはずっとプレーヤーとして競技をやってきた人でも、じゃあ指導者としてすぐチームを勝たせることができるかというと、また違うスキルや知識、経験が必要になってくるのですが、現状では女性が指導者としてのキャリアを積む機会が圧倒的に少ないというのが要因だと思います。

「女性指導者の育成」よりも「女性アスリートが指導者の道を選ぶ」発想を持てるように

愛沙子:監督やコーチになるプロセスとして、指導者ライセンスの受講が必要なんですよね? 気になったのは、その講習を受けに来る時点ですでに男女比率に差があるのか、それともその時点では男女比率に差がなく、受講した結果、男性の方がライセンスを取得しやすいということなのでしょうか?

秀一:受けに来る時点で圧倒的な差がありますね。

愛沙子:それってきっと、女性が「自分も指導者になれる」「指導者になって当たり前」という自信を持てるような経験を積んでこられなかったり、ロールモデルとなる人がいなかったから、そもそも「指導者になりたい」という発想になっていないということも原因の一つなのかなと思いました。

 なぜそうなってしまうんだろうと考えてみると、フィジカル面ではどうしても男女差はあるので、スコアや数値だけを見た時に、身体の違いとして値が高くなる男性は男女とも教えられるけれど、女性指導者は男性選手から「いや俺のほうがスコア上だし」となってしまうかもしれない。その身体的違いからくる心理的負担によって、結果的に女性が指導者として働ける場が半分に減ってしまう。さらに女性競技は男性競技と比べてチーム運営予算や集客数が少ない。

 そうすると、自分のキャリアを考えた時に、ただでさえ働く場の母数も少ない上に収入面も含めて希望が持ちにくいために、そのキャリアを選ぶという選択肢がなくなるのかなと思ったんですけど。

秀一:勝つための戦術を考えたり技術を教えることは、女性だったらできないということは基本的にないんですよね。監督だから一緒に走らなきゃいけないとか、スリーポイントがうまくないといけないわけではありませんから。女性だからといって、そこにハンディはないはずなんですよ、本来は。

――例えばコミュニケーションの取りやすさであったり、体の悩みなども相談しやすい距離感なども含めて、女性のアスリートは女性指導者に教わった方が利点も多いのではと思います。

秀一:だからこそ、まずは女性アスリートたちがセカンドキャリアとして「私たちが指導者になっていく」という発想を持てるような環境を整えていくことや、啓蒙をしていくべきなんですよね。

女性指導者を増やすヒントは、青山学院大学の原晋監督にあり?

愛沙子:監督としての適性とは何か……という要素も大事になりそうですね。

秀一:例えば、青山学院大学陸上競技部長距離ブロックの原(晋)監督は、現役時代は決してトップアスリートというわけではなかったけれど、引退後はビジネス界でマネジメントを学んでからスポーツの世界に戻ってきたので、この7年間で箱根駅伝5度の優勝と、あんなに強いチームをつくることができましたし。

愛沙子:もしかしたら、現状として女性アスリートは企業に属しながら競技を続けている人が多いので、現役引退後に企業の中でマネジメントを学びながら、常に競技のことを目の端に入れつつ、そこで吸収したものを最終的に競技へ生かすぞというモチベーションの女性たちが増えていくといいのかもしれないですね。スポーツ界の中だけで変えていくのって、やっぱりすごく難しい気がします。

もしも『SLAM DUNK』の監督が女性だったら…

愛沙子:今の社会構造をつくっているのは、やっぱり最終的に個々の意識の集約なわけですよね。その意識を変えられる力を持っているのって、意外とエンターテインメントだと思っていて。

 例えば、脚本家の野木亜紀子さんが大好きなので、野木さんが脚本を担当した『アンナチュラル』の話をすると、主演を石原さとみさんが務めている法医学のドラマなんですよね。『アンナチュラル』を見るまで法医学という存在すら恥ずかしながら知りませんでしたが、あのドラマを見たことで、法医学という世界があることを認識しました。ドラマの中で女性の法医学者が生き生きと活躍している姿を見ていたことで、もし私が医学の道を志す学生だったとしたら、将来の選択肢の一つに入っていたかもしれない。無意識のうちに”男性的な仕事”と捉えてしまい、自分の夢の選択肢に入っていないものも、こういったエンターテインメントで意識から変えていくことってできるんじゃないかと思うんです。

『アンナチュラル』大好きっ子なのでさらに話すと(笑)、法医学の世界だけでなくジェンダーの問題についても触れている素晴らしいドラマなんです。

――『アンナチュラル』と昨年放送された『MIU404』は、脚本を野木さん、プロデューサーを新井順子さん、監督を塚原あゆ子さんと、女性の作り手が結集したドラマとしても話題になりましたね。あのドラマの中で描かれていた女性が社会の中で抱える葛藤や苦しさは、女性の目線だからこそ可能だったように感じました。

愛沙子:ディズニーの実写版『アラジン』も同様で、アニメ版では女性は一国のあるじになれないので、王女であるジャスミンは王子と結婚して婿を迎えなければならないのですが、実写版では王がその法律を変えると宣言したことで、ジャスミンが国王の権利を得て国を統一するというストーリーになりました。

 もしかしたら、この映画を見た女の子が当たり前のようにリーダーを目指すようになるかもしれないし、自分の国の首相が女性でも違和感を持たない子どもたちが増えていくかもしれない。そういうところから個々の意識が醸成されていく気がするので、エンタメって生活のプラスアルファぐらいの位置づけになっていますが、意外と意識改革や将来のビジョンづくりにすごく寄与していると思います。

秀一:例えば『SLAM DUNK』(井上雄彦)の女性版があったらいいですよね。

愛沙子:プレーヤーは桜木花道たちだけど、女性がコーチや監督を務めているというバージョンのヒット作が出ると、また一気に変わったりするんだろうなと思いますよね。スポーツとは違った業界のエンタメやメディアからアプローチしていくということが、実はすごく大事なことかもしれません。

秀一:女性アスリートがセカンドキャリアで指導者になって、男子チームをオリンピックで勝たせるとか、そういうロールモデルをエンタメを通して提示することができたら、大きな影響をもたらす可能性がありますよね。

そもそも、なぜジェンダーに取り組む必要があるのか? メリットと意義 

――最後に、そもそもなぜジェンダー平等が必要なのか、トップ層にもミドル層にも女性リーダーが増えていくことは、スポーツ界のみならず社会にとってどんな意義があるのでしょうか?

愛沙子:まず一つ、ジェンダーなどのダイバーシティ(多様性)に取り組まないことで最もクリティカルなのが「お金が集まらなくなる」という点だと思うんですよね。昨年末、アメリカの証券取引所ナスダックが、ダイバーシティの促進のために、女性と人種的マイノリティーもしくはLGBTQから少なくとも1人ずつ取締役に選任しないと上場できないというルールを発表しましたが、今後遅れて日本にもそういう流れが来るはずです。今、上場手前の大きなベンチャー企業は社外取締役に選任する女性を一生懸命探しているフェーズだったりするので、その流れは確実にきていて。

 昨今はESG投資が一つのトレンドになっているように、投資家の意識が変わってきているのが大きくて、ダイバーシティにしっかり取り組んでいる企業の方が価値が高いと評価されます。なので、必然的に資金が集まってくるという、めちゃくちゃ分かりやすいメリットがあるわけです。

 また、ダイバーシティに取り組むことは、商品・サービスの開発にも生きてきます。市場には女性はもちろん、さまざまな属性を持つ人たちがいます。そう考えると、ダイバーシティがある社会の中に商品・サービスを投下していくにあたって、その機能性を高めていくためには、偏った属性の人たちの目線だけではなく複数の視点が必要だという点もあると思います。

 それをスポーツに置き換えると、やっぱり運営層(③)や、監督やコーチといった指導者(②)に男性の方が多く、ダイバーシティの推進に遅れがあるところには、どうしても課題があるなと感じます。

――どうすれば解決できる可能性があるでしょうか?

愛沙子:私がメインの活動の場としている広告業界でも、社会課題にアプローチしたりジェンダーバイアスに配慮した広告は数としては増えてきているものの、やっぱり企業は炎上への懸念と常に隣り合わせという状況です。企業側にもクリエイター側にもジェンダーや対象の課題についての知見がないがゆえに間違った文脈での制作をしてしまい”炎上”、というケースもありますし、課題提起のリアクションとして生まれた議論を炎上と捉えてしまう傾向も少なくないように思います。消費者がダイバーシティに対する取り組みをしている企業に対して「いいよね」という声を届けて、その商品やサービスがめちゃくちゃ売れたり支持が集まるという体験が、前例を増やしていくことにつながっていたりします。

 そう考えると、スポーツ界においても、スポーツへの興味がそこまで強くない人たち、でも例えば私みたいにジェンダーギャップのことを学んでいる人が、ジェンダーギャップに対して先進的な取り組みをしているチームを支持するようになるという可能性もあると思います。それで、試合を見に行ってみたり、SNSで発信したりする人が増えれば、「なんで最近あのチームがすごく支持されてるの?」と話題になったり。試合の面白さだけではない側面からのアプローチで注目度が高まったり、お金が集まったり、ファンが増えるという改革からやってみるのも一つの手かなと思います。

――ありがとうございます。辻先生はジェンダー平等の意義についてどうお考えですか?

秀一:私は、その方が “自然だから”だと、シンプルに思っています。基本的には自然な状態である方が強く生き残ることができるから、社会構造も自然である方がいい。

 そして、一般社会においてもスポーツにおいても、チームや組織のパフォーマンスを向上させるためのマネジメント能力は、もしかしたら男性よりも女性の方が高いんじゃないか、女性リーダーの方が強いチームや組織をつくることができるんじゃないかという可能性を、僕は信じています。それをまだ誰も証明していないだけの話であって、事例ができれば社会はもっと変わるし、一気に状況が転がる気がします。

――「ジェンダー」「ジェンダーギャップ」について考えていくにあたって、女性の権利を主張するということだったり、男性と女性間での戦いというものではなく、自然ではない現状への違和感に気付いていくところがスタートなのですね。今回は貴重なお話、ありがとうございました。

森喜朗氏の女性差別発言に端を発して、日本中が注目したジェンダーギャップの問題。多くの人たちがメディアやSNSを通じて森氏に対する批判の声を挙げた。だがここまで見てきたように、これは決して個人の資質に矮小(わいしょう)化する問題ではない。ジェンダーギャップ指数120位という結果からも分かるように、日本社会全体がジェンダーに対する意識が低く、その取り組みに遅れているのが現実だ。「自分は大丈夫」ではなく、誰もがこの問題に取り組むべき当事者だということを忘れてはいけない。

そんな中で、スポーツ界はまず自分たちのジェンダーギャップを解消していくことに努めていくべきだ。スポーツ界には、無自覚に、当たり前のように内在化しているジェンダーバイアスが数多くある。そのことに気付き、改善していくことは決して簡単なことではないだろう。

だがそれでも、私たちはスポーツの力を信じている。アスリートやチームが発信するメッセージは、時に社会を動かすことだってできる。ジェンダー平等が遅々として進まない日本社会の中で、スポーツ界が率先的に取り組み、メッセージを発信し続けることが、日本のジェンダーギャップを一気に変えていく起因となることだってできるはずだ。

スポーツ界から日本のジェンダー平等を成し遂げるために何ができるのか、何をしていくべきなのか、私たちREAL SPORTSはこれからも、スポーツを愛し、スポーツの力を信じるファン、読者の方たちと一緒に考えていきたい。


<了>





PROFILE
辻秀一(つじ・しゅういち)
1961年生まれ、東京都出身。スポーツドクター。北海道大学医学部卒後、慶應義塾大学で内科研修を積む。“人生の質(QOL)”のサポートを志し、慶大スポーツ医学研究センターを経て株式会社エミネクロスを設立。応用スポーツ心理学とFlow理論をベースとして講演会や産業医、メンタルトレーニングやスポーツコンセプター、スポーツコンサルタント、執筆やメディア出演など多岐にわたり活動している。アスリートのクライアントは競技を超えて幅広くサポート。スポーツ医学はFemale Athlete Triadとライフスタイルマネジメントを専門とする。志は『スポーツは文化だと言える日本づくり』と『JAPANご機嫌プロジェクト』。2019年に「一般社団法人Di-Sports研究所」を設立。37万部突破の『スラムダンク勝利学』(集英社インターナショナル)、『PLAY LIFE PLAY SPORTS スポーツが教えてくれる人生という試合の歩み方』(内外出版)をはじめ著書多数。

辻愛沙子(つじ・あさこ)

株式会社arca CEO / クリエイティブディレクター。社会派クリエイティブを掲げ、「思想と社会性のある事業作り」と「世界観に拘る作品作り」の2つを軸として広告から商品プロデュースまで領域を問わず手がける越境クリエイター。リアルイベント、商品企画、ブランドプロデュースまで、幅広いジャンルでクリエイティブディレクションを手がける。2019年春、女性のエンパワーメントやヘルスケアをテーマとした「Ladyknows」プロジェクトを発足。2019年秋より報道番組 news zero にて水曜パートナーとしてレギュラー出演し、作り手と発信者の両軸で社会課題へのアプローチに挑戦している。