熱戦の続くFIFAワールドカップ。日本代表は初戦で優勝経験のある強豪ドイツを相手に2対1の歴史的な逆転勝利を収めた。グループステージ突破に向けて大きく前進した日本代表だが、決勝トーナメントに進出できるかどうかで、大会の賞金や選手がもらえるボーナスは雲泥の差となって表れる。過去最高の賞金総額4億4000万ドル(約616億円)が計上されている今大会。“お金”の側面からワールドカップを見てみたい。

(文=池田敏明、写真=Getty Images)

賞金総額は前回から4000万ドルアップで、日本円にして616億の巨額マネー!

オリンピックやFIFAワールドカップ(W杯)のようなスポーツの一大イベントが開催されると、あらゆる側面で巨大なカネが動く。開催する側はスタジアムをはじめとする環境整備をし、企業は巨額のスポンサー契約を結んで広告・宣伝活動を行う。放映権料の高騰も毎回問題になるし、観戦者が支払うチケット代・渡航費・滞在費なども大きなものになる。

そして、大会に参加する32カ国にも順位に応じてFIFAから支払われる賞金が用意されている。その金額は大会を重ねるごとに増額されており、カタール大会の賞金額も、前回の2018年ロシア大会からアップしている。

国際サッカー連盟(FIFA)はすでに、今大会における賞金の総額が4億4000万ドル(約616億円/以下、特に表記の無い限り1ドル=140円で計算)であることを公表している。2018年大会の時は4億ドルだったので、4000万ドルが上積みされたことになる。

また、出場32カ国には準備金として一律150万ドル(約2億1000万円)が支払われる。この金額については前回大会と同額だ。

優勝チームの賞金額は4200万ドル(約58億8000万円)で、ロシア大会の3800万ドルに比べて400万ドル多い。準優勝は3000万ドル(約42億0000万円)。前回からは200万ドルアップで、優勝国との賞金額の差は1200万ドルの開きがある。

一方で、3位は2700万ドル(約37億8000万円)、4位は2500万ドル(約35億0000万円)となっており、2位から4位までに大きな差はない。そして、上位4チームに準々決勝で敗れたベスト8の国々には、それぞれ1700万ドル(約23億8000万円)が支払われる。4位との差は800万ドルもあり、このあたりにもW杯においてベスト4がいかに大きな成功なのかがうかがえる。

また、ラウンド16で敗退したチームへの賞金額は1300万ドル(約18億2000万円)、グループステージで敗退したチームへは900万ドル(約12億6000万円)が支払われる。いずれの金額も前回大会に比べて100万〜300万ドルの増額となっている。これらの賞金はFIFAから各国のサッカー連盟、サッカー協会に支払われるもの。W杯に出場し続けることが各国のサッカー界にとっていかに大きな意味を持つのかは、この金額を見ても明らかだろう。




歴史的な円安が生んだ奇妙な現象。仮にグループステージで敗退しても…

日本代表は前回大会、ラウンド16で敗退となったので、1200万ドルを手にした。ここで注目したいのは、賞金がドル建てということである。2018年当時、ドル/円の為替レートは1ドルあたり約110円だった。従って、1200万ドルを当時のレートで換算すると約13億2000万円となる。

しかし、現在は少し落ち着いたとはいえ、それでも歴史的な円安傾向にあり、本稿では1ドルあたり140円で計算している。そう考えると、今回、日本がグループステージで敗退したとしても、得られる賞金額は900万ドル(=12億600万円)となり、日本円に換算すると前回とほぼ同額となるのだ。大会直前の電撃的な指揮官交代やグループステージ第3節ポーランド戦であえて0対1での敗戦を選んだ采配など、さまざまな場面で物議を醸しながらもグループステージを突破し、ラウンド16で強豪ベルギーをあと一歩まで追い詰めながらも逆転負けを喫した“ロストフの悲劇”を経て手にした1200万ドルが、たとえ今大会で全敗を喫していたとしても得られる900万ドルとほぼ同価値というのは、何ともやりきれない。

だからこそ、というわけでもないが、目標に掲げているベスト8入りは何としても実現させてほしいものである。8強入りした場合の賞金額は1700万ドル=約23億8000万円で、ロシア大会時に得た金額の2倍近くになる。たとえラウンド16で敗れたとしても1300万ドル=約18億2000万円となり、前回から100万ドルアップながら5億円の増額になるのだから、少なくともグループステージは突破してほしい。

日本代表の選手に支払われるボーナスは? 目標のベスト8達成でなんと…

さて、FIFAから各国に支払われる賞金額は分かったが、選手たちは大会に参加することでどれだけの収入を得ることになるのだろうか。

日本サッカー協会(JFA)は2011年2月にリリースした「日本代表選手ペイメント問題に対する当協会の考え」の中で日本代表選手ペイメント規定を公表し、代表チームでの活動に従事する日本代表選手への日当が「1日1万円」であることを明らかにしている。

これは代表チームに合流した日から解散日までの全日程において発生するもので、通常のW杯であれば事前に行われるトーレニングキャンプから大会本番に至るまでの期間が対象になる。前回のロシア大会では2018年5月21日に代表候補メンバーを集めた国内合宿で活動がスタートし、5月31日に最終メンバー23人を発表、6月2日にオーストリアで事前合宿を行い、6月13日にロシア入りして大会に臨んだ。7月2日にベルギー戦で敗れ、帰国後にチームが解散したのは7月5日なので、すべてに参加した選手は合計46日間、日本代表としての活動を行ったことになり、日当1万円×46日で46万円となった。

今大会は開催国カタールの気候などを考慮して夏から冬に開催時期が変更となり、欧州各国リーグのシーズンを中断させる形で実施される。開幕前に十分な準備期間を取ることができず、欧州組の選手たちは各国リーグの試合が終了した11月13日(現地時間、以下同)以降に順次、代表チームに合流することになった。日本のグループステージ最終節が行われるのは12月1日で、そこまでわずか19日間。目標であるベスト8(準々決勝は12月9日・10日に開催)まで勝ち進んだとしても27〜28日間となるため、代表の活動期間は正味30日前後で、その場合の日当は30万円前後だ。

また、日本代表の試合には勝利ボーナスが設定されている。大会の規模や対戦相手のレベルに応じて最上位のSからA、B、C、Dまで5つのランクに分かれており、W杯は当然Sランク。金額は200万円で、選手全員に一律で支給される。引き分けの場合は半額の100万円だ。


加えて大会の成績に応じたボーナスもあり、W杯の場合は優勝で5000万円、準優勝3000万円、3位2000万円、ベスト4で1000万円、ベスト8で800万円、ベスト16で600万円が選手全員に支給される。


ロシアW杯での通算成績は4試合を戦って1勝1分2敗、ベスト16だったため、[1勝(200万円)+1分(100万円)+ベスト16(600万円)]の合計900万円が勝利ボーナス、大会ボーナスとなる。


今大会で日本代表が2勝1分の成績でグループステージを突破し、ラウンド16でも勝利を収めて準々決勝へと進んでベスト8進出の目標を達成したと仮定しよう。その場合の勝利ボーナス、大会ボーナスは[3勝(600万円)+1分(100万円)+ベスト8(800万円)]で、合計1500万円となる。ちなみに、招集された26人で最も年俸額が低いとされる選手は、負傷した中山雄太の代わりに追加招集された町野修斗(湘南ベルマーレ)の推定1500万円。選手たちはボーナスのために代表の試合に出ているわけではないと思うが、モチベーションアップの一因にはなるだろう。

海外ではボーナスの額を巡って揉めるケースも…

他国に目を転じると、今年6月にはカナダ代表の選手たちが待遇改善を求めて同国サッカー協会と交渉するも決裂し、親善試合パナマ戦への出場をボイコットして中止になるという事態が発生した。

男女代表チームの試合出場給の均一化などとともに選手側が求めたのは、今大会の賞金の40%を選手に分配すること。グループステージ敗退となったとしても、900万ドルの40%に当たる360万ドル(約5億400万円)を選手に分配してほしいという要求だ。1人当たりおよそ13万8460ドル(約1938万円)は、日本代表の報酬を考えると確かに高額であり、交渉がまとまらなかったのも納得だ。

こういった新興国やアフリカの国はボーナスを巡って一悶着を起こすことが多い。次回大会からは参加国が増加して48チーム制となり、新興国が数多く出場することが予想されるが、そのようなトラブルが起こらないよう願いたいものである。

<了>